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11、終極
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そうして3年が経ち、浩二君が一か月の海外出張に行くことが決まった。
私は家に一人でいても寂しいだけなので、週末娘に会いに名古屋まで行くことにした。
娘とは夫のアパートで待ち合わせて三人で夕食を取ろうということにしていた。
その日は土曜日。夫も家にいるはずである。
昼前には名古屋に着いて夫の部屋に行く。
ドアホンを鳴らしてもなかなか夫は玄関に出てこない。
合鍵を使って部屋に入ると、寝室には女性と寝ている夫がいた。
やはり、夫が浮気しているのではないかという私の予感は当たっていた。
「パパ、おはよう。起きてくれる?」
声を掛けると、女性と夫は二人共驚いて起き上がる。
「とにかく隣で待っているから、服着て起きて来てくれない?」
襖を閉めて部屋の中を見回すと、部屋には夫と彼女の下着が干してあり、洗面所には彼女の歯ブラシや化粧品が置いてある。
屑籠には使い終わったコンドームが落ちている。
覚悟はしていたものの、この状況、私はどうすれば良いのだろう。
浩二君に会ってからというもの、私の中では私と主人の関係は終わっていた。
おそらく夫も私と同じ気持ちであったに違いない。
お湯を沸かしてお茶を入れているところに二人が起きて来た。
「こちらの方はどなた?いつからのお付き合いなのかしら?」
「彼女は、会社の同僚だ。私一人では不便なことも多いので、生活を助けてくれている。」
「なるほど、昼も夜も生活を助けてもらっているのね。そこのコンドームを見るとどういうお付き合いかは何となくわかるわ。二人はいつからのお付き合い?」
「9年前。名古屋出張が始まってからだ。」
「随分長いお付き合いになるのね。で、あなたは9年もこの生活を続けていて、私が気づかなければずっとこのままやり続ける気だったの?」
「先のことは考えたことはない。」
「そう。ですってよ、あなた。あなた何ていうお名前かは知りませんけど、よくこういう責任取る気もない昼行燈みたいな人と一緒に暮らしているわね。私なら、真っ平御免だわ。保奈美のこともあるからすぐには離婚しませんけど、保奈美が結婚したら、離婚してちょうだい。」
「わかった。」
「あと、東京の家のあなたの持ち分は娘の名義に変えて頂戴。それから、貯金は全て私名義に変えてちょうだい。慰謝料としていただくわ。よろしいわね。」
「わかった。」
「そうそう、後日離婚届を送るわ。あなたのサインをしてこちらに送って頂戴。保奈美が結婚したら私が役所に出すことにするわ。」
一気に話すと、夫の部屋を出た。
もともと冷え切った夫婦だ。夫の浮気が明確となってショックじゃないと言えば嘘になるが、今迄モヤモヤしたものがきれいに整理できたというある種のサッパリ感はある。
おそらく浩二君と出会う前の私だったら、自分の未来へのレールが一気に崩れ落ちて、自分の人生をどう再構築していくか途方に暮れていたかもしれない。でも、浩二君と会った後の今の自分は、これで自分の自由な人生が送れると、却って力が漲ってくるような予感がする。
それから5年。娘は結婚し、私たち夫婦の離婚が成立した。
夫はこのまま名古屋に住むという。
私は浩二君のマンションに移り、元夫と建てた家は空き家になっている。
娘がいずれここを引き継ぎ、建て替えして住んでくれれば良いと考えている。
もう私の中にはあの古い家への愛着はなく、むしろ浩二君との生活のほうが中心になっている。
浩二君が来月からアメリカに赴任することが決まった。
浩二君から、このまま一生一緒に暮らさないかと言われた。
外国暮らしには不安はあるけれど、古い柵は捨てて新生活を始めるならそれも良いかなと思えた。
私たちはそのまま籍を入れ、アメリカに移住した。
私は家に一人でいても寂しいだけなので、週末娘に会いに名古屋まで行くことにした。
娘とは夫のアパートで待ち合わせて三人で夕食を取ろうということにしていた。
その日は土曜日。夫も家にいるはずである。
昼前には名古屋に着いて夫の部屋に行く。
ドアホンを鳴らしてもなかなか夫は玄関に出てこない。
合鍵を使って部屋に入ると、寝室には女性と寝ている夫がいた。
やはり、夫が浮気しているのではないかという私の予感は当たっていた。
「パパ、おはよう。起きてくれる?」
声を掛けると、女性と夫は二人共驚いて起き上がる。
「とにかく隣で待っているから、服着て起きて来てくれない?」
襖を閉めて部屋の中を見回すと、部屋には夫と彼女の下着が干してあり、洗面所には彼女の歯ブラシや化粧品が置いてある。
屑籠には使い終わったコンドームが落ちている。
覚悟はしていたものの、この状況、私はどうすれば良いのだろう。
浩二君に会ってからというもの、私の中では私と主人の関係は終わっていた。
おそらく夫も私と同じ気持ちであったに違いない。
お湯を沸かしてお茶を入れているところに二人が起きて来た。
「こちらの方はどなた?いつからのお付き合いなのかしら?」
「彼女は、会社の同僚だ。私一人では不便なことも多いので、生活を助けてくれている。」
「なるほど、昼も夜も生活を助けてもらっているのね。そこのコンドームを見るとどういうお付き合いかは何となくわかるわ。二人はいつからのお付き合い?」
「9年前。名古屋出張が始まってからだ。」
「随分長いお付き合いになるのね。で、あなたは9年もこの生活を続けていて、私が気づかなければずっとこのままやり続ける気だったの?」
「先のことは考えたことはない。」
「そう。ですってよ、あなた。あなた何ていうお名前かは知りませんけど、よくこういう責任取る気もない昼行燈みたいな人と一緒に暮らしているわね。私なら、真っ平御免だわ。保奈美のこともあるからすぐには離婚しませんけど、保奈美が結婚したら、離婚してちょうだい。」
「わかった。」
「あと、東京の家のあなたの持ち分は娘の名義に変えて頂戴。それから、貯金は全て私名義に変えてちょうだい。慰謝料としていただくわ。よろしいわね。」
「わかった。」
「そうそう、後日離婚届を送るわ。あなたのサインをしてこちらに送って頂戴。保奈美が結婚したら私が役所に出すことにするわ。」
一気に話すと、夫の部屋を出た。
もともと冷え切った夫婦だ。夫の浮気が明確となってショックじゃないと言えば嘘になるが、今迄モヤモヤしたものがきれいに整理できたというある種のサッパリ感はある。
おそらく浩二君と出会う前の私だったら、自分の未来へのレールが一気に崩れ落ちて、自分の人生をどう再構築していくか途方に暮れていたかもしれない。でも、浩二君と会った後の今の自分は、これで自分の自由な人生が送れると、却って力が漲ってくるような予感がする。
それから5年。娘は結婚し、私たち夫婦の離婚が成立した。
夫はこのまま名古屋に住むという。
私は浩二君のマンションに移り、元夫と建てた家は空き家になっている。
娘がいずれここを引き継ぎ、建て替えして住んでくれれば良いと考えている。
もう私の中にはあの古い家への愛着はなく、むしろ浩二君との生活のほうが中心になっている。
浩二君が来月からアメリカに赴任することが決まった。
浩二君から、このまま一生一緒に暮らさないかと言われた。
外国暮らしには不安はあるけれど、古い柵は捨てて新生活を始めるならそれも良いかなと思えた。
私たちはそのまま籍を入れ、アメリカに移住した。
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