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炎獄より悪意を込めて
後始末―①
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聞き慣れた足音がこちらへと近づいてくる。
それはレジーナ達の者ではなく、俺とずっと生活していた者の足音だ。
首だけをゆっくりと足音の方向に向けると、面倒な女がそこにいた。
自分のことを何故か俺の幼馴染というポジションで接してくる女。
メビウス・ベータ――伊達メガネをかけた残念な機械人形のメイドだ。
「流石はヴラド君! 私の足音で反応してくれたんですね! 偉いでちゅねー♡ メビウスポイント50点加算してあげます!」
ずっと前から疑問に思っていたんだが、そのメビウスポイントって何だ?
聞いたらとてつもなく面倒なので敢えて聞いていなかったのだが……。
というか、わざわざ人の頭の近くでかがまなくていいんですよ!?
おう、頭のおかしい緑髪! お、お前さ、ぜ、絶対わざとだろ!?
黒の網タイツがマジでエロく感じるからさ! あと眼鏡くいくいしないで!
ちょっと股開いてもらえると下着見えるのでお願いします! クソが!
「ふふ~ん? ヴラド君、どうしてそんなに顔を赤くしてるんですか? ……メビウスポイント30点加算ですね♪ そういう素直なヴラド君は大好きですよ? やはりヴラド君は私に惹かれているんですね♡」
「あ、あのさ? 色々と聞きたいんだけどさ? お前、いつから俺を付けてきたの?」
「え~? そういう野暮なことを聞くとメビウスポイントが20点減算ですけど? それって私のことを大事にしていないってことですよね? え? どうしてですか? 私、ヴラド君の幼馴染じゃないですか? 一緒にベッドに入った仲じゃないですか? なんなら一緒にお風呂も入った仲じゃないですか? どうしてそんな酷いことを言うのかな、かな?」
コイツの残念なポイント――自分の思い通りにならないと病んでしまう。
確かライがメビウスのことをヤンデレビッチ、って言ってたよな?
一応このヤンデレビッチがニーアの次に偉いんだけどなぁ……。
にしてもだ、一つ言いたいことがある!
お前とは一緒に風呂に入ったことは一度たりともないぞ!?
それにベッドに入り込むのはローリィーの馬鹿ぐらいだけだ!
お前の脳内ではそういうシチュエーションかもしれない。
だけどそれを否定しちゃうと面倒になるよなぁ、畜生ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
「わ、分かった! お、落ち着け! ニ、ニーアが俺を心配してお前に声を掛けたんだろ? で、お前がコッソリと俺の動向を観察していた。そうなんだろ?」
「……えっと、そうです! その通りです! 流石はヴラド君! 相変わらず聡明で何よりです♪ いい子いい子でちゅねー♡」
違うのかよ、畜生がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
お、おま、お前! ニーアの許可なしで俺を尾行しちゃったわけ!?
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? お前さん何やらかしてるんですか!?
うっわ、俺もう知らね! あの毒舌メイドを怒らせたら本気でヤバイのに!?
そ、それよりも、だ!
俺のことよりお嬢様を預けたレジーナ達がどうなったかだな。
ようやく体も動けるようになったし、ちょっくら周りの状況でも――。
「うわぁ……」
「流石はヴラド君! 汚物は消毒ですよね! 殺菌完了みたいでメビウスポイント40点加算しますね!」
コイツ何言っちゃってるの?
この状況を見てさ? お前はなんで満面の笑み浮かべてるの?
古の高位魔法詠唱者が伝説の爆炎魔法をぶっ放した感じだぜ?
こ、これは酷い――あの技は封印しよう、そうしよう……。
騎士団達がこれを見た時どう反応するか――アタチ、もうちらない!
「あ、そう言えば、ヴラド君と同行していたお仲間さんはとっととこの場から逃げ出しましたよ? 賢明な判断ですね。……ヴラド君の劫火に巻き込まれて死ねばよかったのに」
うん、聞かなかったことにしておこう。
「それを聞けて安心し――いやいや、ちょっと待て? 俺はアイツらにガキを預けていたんだ、そのガキは?」
「それならローリィー様が保護しましたよ? 今頃送り届けているんじゃないでしょうか?」
いやいやいやいや!?
あの吸血鬼が素直に送り届けるわけないだろうが!
例えるならば道端に未開封のワインがちょこんと置いてあってさ?
それを開封して、味を楽しもうって感じでアイツは持って帰るでしょ!?
うわ、マジかよ……、ローリィーなんて最悪じゃねぇか……。
「え? どうして青褪めているんです? ヴラド君?」
「お、お前なぁ……。はぁ……、これは俺の責任だな。ローリィーを呼べ、今すぐに」
「えっとぉ~? ローリィー様を呼ぶのって無理ですよ? それはヴラド君にも使えないのと同じ意味ですよ? 魔法系統が違うと言えば分かりやすいでしょうか?」
「会話のやり取りが出来ないだけだろうが! 一方的に伝えることは可能なはず、そうだろ?」
「確かにその通りです。はぁ……、折角二人きりだったのに……。因みに場所はここでいいですか? それとも一度屋敷へ戻ります?」
この場所でやるべきことはもうない。
騎士団に見つかるのも面倒だしな、とっとと退散する方が吉か。
「屋敷へ戻るか。メビウス、屋敷まで頼んだぞ」
「はぁ~い! ヴラド君の幼馴染として頑張りますね♪ ――クソババアのせいで二人きりの時間終わったなんて最悪……。後で藁人形に釘ぶっ刺しておこう……」
俺は何も聞いてない、聞いてなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!
それはレジーナ達の者ではなく、俺とずっと生活していた者の足音だ。
首だけをゆっくりと足音の方向に向けると、面倒な女がそこにいた。
自分のことを何故か俺の幼馴染というポジションで接してくる女。
メビウス・ベータ――伊達メガネをかけた残念な機械人形のメイドだ。
「流石はヴラド君! 私の足音で反応してくれたんですね! 偉いでちゅねー♡ メビウスポイント50点加算してあげます!」
ずっと前から疑問に思っていたんだが、そのメビウスポイントって何だ?
聞いたらとてつもなく面倒なので敢えて聞いていなかったのだが……。
というか、わざわざ人の頭の近くでかがまなくていいんですよ!?
おう、頭のおかしい緑髪! お、お前さ、ぜ、絶対わざとだろ!?
黒の網タイツがマジでエロく感じるからさ! あと眼鏡くいくいしないで!
ちょっと股開いてもらえると下着見えるのでお願いします! クソが!
「ふふ~ん? ヴラド君、どうしてそんなに顔を赤くしてるんですか? ……メビウスポイント30点加算ですね♪ そういう素直なヴラド君は大好きですよ? やはりヴラド君は私に惹かれているんですね♡」
「あ、あのさ? 色々と聞きたいんだけどさ? お前、いつから俺を付けてきたの?」
「え~? そういう野暮なことを聞くとメビウスポイントが20点減算ですけど? それって私のことを大事にしていないってことですよね? え? どうしてですか? 私、ヴラド君の幼馴染じゃないですか? 一緒にベッドに入った仲じゃないですか? なんなら一緒にお風呂も入った仲じゃないですか? どうしてそんな酷いことを言うのかな、かな?」
コイツの残念なポイント――自分の思い通りにならないと病んでしまう。
確かライがメビウスのことをヤンデレビッチ、って言ってたよな?
一応このヤンデレビッチがニーアの次に偉いんだけどなぁ……。
にしてもだ、一つ言いたいことがある!
お前とは一緒に風呂に入ったことは一度たりともないぞ!?
それにベッドに入り込むのはローリィーの馬鹿ぐらいだけだ!
お前の脳内ではそういうシチュエーションかもしれない。
だけどそれを否定しちゃうと面倒になるよなぁ、畜生ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
「わ、分かった! お、落ち着け! ニ、ニーアが俺を心配してお前に声を掛けたんだろ? で、お前がコッソリと俺の動向を観察していた。そうなんだろ?」
「……えっと、そうです! その通りです! 流石はヴラド君! 相変わらず聡明で何よりです♪ いい子いい子でちゅねー♡」
違うのかよ、畜生がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
お、おま、お前! ニーアの許可なしで俺を尾行しちゃったわけ!?
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? お前さん何やらかしてるんですか!?
うっわ、俺もう知らね! あの毒舌メイドを怒らせたら本気でヤバイのに!?
そ、それよりも、だ!
俺のことよりお嬢様を預けたレジーナ達がどうなったかだな。
ようやく体も動けるようになったし、ちょっくら周りの状況でも――。
「うわぁ……」
「流石はヴラド君! 汚物は消毒ですよね! 殺菌完了みたいでメビウスポイント40点加算しますね!」
コイツ何言っちゃってるの?
この状況を見てさ? お前はなんで満面の笑み浮かべてるの?
古の高位魔法詠唱者が伝説の爆炎魔法をぶっ放した感じだぜ?
こ、これは酷い――あの技は封印しよう、そうしよう……。
騎士団達がこれを見た時どう反応するか――アタチ、もうちらない!
「あ、そう言えば、ヴラド君と同行していたお仲間さんはとっととこの場から逃げ出しましたよ? 賢明な判断ですね。……ヴラド君の劫火に巻き込まれて死ねばよかったのに」
うん、聞かなかったことにしておこう。
「それを聞けて安心し――いやいや、ちょっと待て? 俺はアイツらにガキを預けていたんだ、そのガキは?」
「それならローリィー様が保護しましたよ? 今頃送り届けているんじゃないでしょうか?」
いやいやいやいや!?
あの吸血鬼が素直に送り届けるわけないだろうが!
例えるならば道端に未開封のワインがちょこんと置いてあってさ?
それを開封して、味を楽しもうって感じでアイツは持って帰るでしょ!?
うわ、マジかよ……、ローリィーなんて最悪じゃねぇか……。
「え? どうして青褪めているんです? ヴラド君?」
「お、お前なぁ……。はぁ……、これは俺の責任だな。ローリィーを呼べ、今すぐに」
「えっとぉ~? ローリィー様を呼ぶのって無理ですよ? それはヴラド君にも使えないのと同じ意味ですよ? 魔法系統が違うと言えば分かりやすいでしょうか?」
「会話のやり取りが出来ないだけだろうが! 一方的に伝えることは可能なはず、そうだろ?」
「確かにその通りです。はぁ……、折角二人きりだったのに……。因みに場所はここでいいですか? それとも一度屋敷へ戻ります?」
この場所でやるべきことはもうない。
騎士団に見つかるのも面倒だしな、とっとと退散する方が吉か。
「屋敷へ戻るか。メビウス、屋敷まで頼んだぞ」
「はぁ~い! ヴラド君の幼馴染として頑張りますね♪ ――クソババアのせいで二人きりの時間終わったなんて最悪……。後で藁人形に釘ぶっ刺しておこう……」
俺は何も聞いてない、聞いてなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!
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