RE:狂奔転生ブラッドヴラド

四五茶

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炎獄より悪意を込めて

憤怒の化身―①

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「い、一体何なんですの!? あ、あぁ……。そ、そんな……」

 業火が廃城を覆い尽くし。
 それはさながら地獄の劫火を彷彿させるかの如く。
 天にまで届かんとするその炎に誰もが言葉を失うであろう。
 この世にあってはならない暴力を目の当たりにしているのだから。
 が、俺にはその暴力は寧ろ大歓迎だ――寧ろ望んでいた展開ではないか?
 その暴力の主が目の前に着地し、激しく俺を睨みつけながら恫喝してきた。

「クソ、クソ、クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 我の、我の、我の、我のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 我の大事な食料達までも灰になってしまったではないか、このクソガキがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 
 まさに炎獄の暴君かのような異様な姿になったというべきか。
 石畳の地面をも溶かし、皮膚が蝋のように溶けるかのような熱気を放ち。
 さながらこの場は溶岩地帯の中心部かのような熱さそのもの。
 っち、俺だけならば問題ないが、このお嬢様は別だ。
 肺まで焼き尽くさんとする熱さですぐに悶え苦しみ絶命するであろう。
 早く避難させなければこのまま消し炭になってしまうのも時間の問題か。 
 
「おーい! 狂戦士バーサーカーくーん! こっち、こっち!」

 ア、アイツら……、生きていたのか。
 だが丁度いい、お嬢様をアイツらに預ければ自由に動ける。
 ハン、お嬢様よ? お前は神にでも愛されているのか、なぁ?

「おら! 受け取れ! レジーナ!」

 お嬢様を思いっきりレジーナの元へ放り投げた瞬間。
 咄嗟に俺は廃城を焼き尽くした暴力の主に向かって斬りかかった。
 そいつも最初から俺目当てだったのか、素直に応じる。
 俺如きすぐにでも殺せるという慢心からだろうが好機だ。
 これでレジーナ達も遠くへ逃げることは出来るな。
 
「ひゃははははは! クソガキが! ほらほらぁ! どうしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! じわりじわりと焼かれ苦しむ感想はよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ? ほれほれほれほれ! いひゃははははは! 皮膚がぷくぷくと爛れてるじゃねぇか! なぁ!? 人間如きがよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
「ハン! 冷えてたから丁度いい熱さじゃねぇか? クソガキ相手にイキっちゃってるその心の狭さに感服すら覚えるぜ? そんなに図体だけはデカいのに、なぁ?」
「クソガキがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! あまり調子に乗ってるんじゃねぇぞ、この雑魚がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 っち、不味いな流石に。
 先程よりも強烈な熱波のせいで、肺がもう限界になってきたか。
 不本意ではあるが距離を取るしかない――今だ!

「無駄無駄無駄無駄ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 我から距離を取ろうだなど百万年早いんだよ、この雑魚がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!――≪我を拒絶するのは我以外認めんユイガドクソン≫! ひゃははははは!」

 っ!? ば、馬鹿な! 
 俺は確かにコイツから一旦距離を取ったはずなのに!?
 き、気がつけばコイツの間合いの中だと!?
 だ、駄目だ、回避が間に合わな――。

「無駄無駄無駄無駄ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 我の、我の、我のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 激情と憤怒と激昂を乗せてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 最高に狂って、悶えて、灰と化せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! ひゃははははは! 死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 死んで死んで死にさらせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 ありとあらゆる角度から拳の連打を浴びせられる。
 一撃受けただけで意識が遠くなり、それを何度も何度も繰り返される。
 もしこれがボルの城であるならば、意識を失っても無事でいられるであろう。
 手厚い介抱を受け、そして再びローリィーと訓練に励むことも可能だ。
 が、ここは違う――ここはボルの城ではなく、外の世界だ。

 つまり意識を失えば、全てが無に帰してしまう!
 全くもって馬鹿げている、一体何のために努力してきたことか!
 こんな不細工如きに殺されるだけのためにか? 違うだろ!
 両腕が使い物にならなくても、腹部を貫かれても!
 まだ俺は死ねない、死んでたまるか! ふざけるんじゃねぇ!
 人間様を舐めるんじゃねぇぞ、この雑魚がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 
 
「っ!? ば、馬鹿な! あ、あ、あ、有り得ん!? 有り得んぞ、クソガキがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! お、お、お前は何なのだ!? どうしてまだ諦めない! 何故まだ我の前に立ちはだかる! 何故まだ立っていられる!? 何故まだ諦めない!?」
「ガハッ! ……お前などローリィーの足元にも及ばんからだよ、雑魚が! 俺がどれだけあの化け物と対峙したと思っている? 伝説の吸血鬼ヴァンパイアにどれだけ鍛えられたと思っている!」
「ロ、ローリィー、だと? な、何者なのだ、お、お前は!?」

 ――喰らいなさい、坊や

 その時、そこにはいないはずのローリィーの声が聞こえた。
 戦いながらずっと感じていたこの飢餓感、やはりそういうことか。
 そういうことなんだな、ローリィー!

「燃え盛る牛を喰らうのも悪くはない、そうだよな?」
「な、何を言って――いぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 随分と昔、ローリィーから教えてもらったことがある。
 自分を討伐しにやってきた者達と戦った際、激しい飢餓感に襲われ。
 それは最早好敵手ではなく、極上の獲物として認識し。
 それを食すことこそが、化け物にとって強くなる秘訣であると。

 だから俺はローリィーの教えを忠実に守った。
 血肉を口に入れ、それがやがて食道を通り、胃へと辿り着く。
 まるで莫大なエネルギーが体中に満たされたような気分だ。
 が、これではまだ足りない、まだまだ足りない、全然足りない。
 もっと食べなければ勿体ない、勿体ないではないか? なぁ!

「こ、この化け物がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 再び殴られようとも、再び絶命の一撃を受けようとも。
 いつの間にか両腕は修復され、その攻撃を防ぎ。

「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 両腕を引き千切り、そしてその両腕を貪る。
 足りない、足りない、まだまだ足りない!
 もっと喰らいたい、喰らい尽くしたい!
 あぁ……! お前の全てを俺に寄越せ! 寄越せ、化け物!

「ば、ば、ば、化け物がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 おいおい、強姦された処女のように泣き喚くんじゃねぇぞ?
 お前のような醜い化け物には涙は似合わないだろ、そうだろ?
 泣いていいのは女子供だけだって教わらなかったか?

「ククク……、そうかい? お前の方が化け物なんじゃないか? 人間様を舐めるんじゃありませんよ?」
「ふざ、ふざけ、ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! お前のような人間がいてたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! わ、我の両腕がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 では教育してやろう、人間様を怒らせたらどうなるかをな。
 そのお代としてお前の全てを捧げろ。
 さぁ、お仕置きの時間だよ? 坊や。
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