RE:狂奔転生ブラッドヴラド

四五茶

文字の大きさ
上 下
24 / 47
炎獄より悪意を込めて

新たな拠点―②

しおりを挟む
 階段を下りると、ハーモニーがお辞儀をしながら俺を待っていた。
 相変わらず男装が良く似合う顔立ちであり、とても凛々しく思える。
 そんな彼女の案内を受けて、1階にある応接室までやってきた。
 そこには既に二人分のティーカップや焼き菓子が用意されており。
 俺と二人で話す場を設けてくれていたのだとすぐに分かった。

「さ、ご主人様。そちらへお座りください。紅茶を淹れますね♪」

 そっと俺のカップに紅茶を淹れるハーモニーであるのだが。
 仮にハーモニーがライのような平たい胸の民であればどれ程良かったものか。
 男の理性を軽く破壊できる二つの果実が今、こうして目の前にある。
 しかもご丁寧に胸元だけは素肌が完全に見える状態、コイツは俺を殺す気か?
 上機嫌に兎のような尻尾をふりふりしなくてもいいんですよ、お嬢さん?

「ささ、どうぞお飲みください。この紅茶の原料は影食いの森で採れたものを使用しております。城で飲むものよりも質は落ちますが、それでも気軽に飲む分には困らない程度の味であることはボクが保証しますよ?」
「……ほぉ? いや、中々上等なものだぞ、これは。にしてもだ、父上は5年前から既に動いていたのだな」
「はい。ですのでご主人様はこれからこちらで生活して頂き、後日ニーア姉様を含めて他の姉妹達も呼び寄せる手筈となっております。まぁニーア姉様は本日中にはこちらに参られる予定ではありますが」
「念のために聞くが、それは機械人形お前達に限った話か?」
「いえ、当然人造人間彼女達の人員も増やしていきます。どうかご安心を! ボクが責任を持ってご主人様のために尽くさせて頂きますので! 朝の食事から夜の食事まで! 何でもお世話します! ふひひひっ! もうボクに全てを捧げるつもりでお任せください!」

 な、何故お前はそんな赤面した表情をしながら興奮しているんだ!?
 ど、どうしてお前は口から涎をだらしなく垂らしているんだ!?
 は、発情期の雌犬のような感じで俺を見るんじゃない! この馬鹿が!
 ま、まさかとは思うが、こ、この紅茶が原因なのか!? 
 うっ……、り、理性を保っていたはずだというのに、お、俺の下半身が!
 お、落ち着け、落ち着くのだ! ボルの裸体でも思い浮かべろ、俺!
 ……よし、人間として大事な何かを失ったが、俺は至って冷静だ。

 だが、肝心のこの馬鹿はそうじゃないんだよなぁ……。
 おぅ、どうしてお前はさ、両眼がハートマークになってるんですかねぇ?
 えっと、この場には俺とハーモニーしかいない状況でさ?
 俺は凄く冷静であり、ハーモニーはもうなんかスイッチ入ってるし?
 よ、よし! とりあえず聞きたかった情報を聞き出すとするか。

「ご、ごほん! あー、ハーモニー? お、お前のことだ、この周辺の情報は当然仕入れてはいるんだろ?」
「無論でございます! ご主人様と素敵な場所で楽しめるようにと、それはもう余念なく隅々まで調べております! 何なら今からその……、ふひ、ふひひひっ! ちょ、ちょうどニーア姉様もおりませんし、絶好のタイミングですよね!? こ、これは、き、きっと、い、いだ、偉大なるそ、創造主様からのご褒美かと思われます! ご、ご主人様! こ、ここで、ボ、ボクと既成事実を作ろうではありませんかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ぬあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
 や、やっぱりあの紅茶にヤバいモノが混入していたんじゃないのか!?
 普段のハーモニーならばこんな凶行は絶対しない従順なメイドだ。
 そ、それが、い、今や! お、俺とこうやって力比べし!?
 う、うぐぐ……! こ、コイツ!? そんなか細い腕で俺を負かすだと!?
 ちょ、ソ、ソファーを倒そうとするんじゃない! この馬鹿!?

「ふひっ! ふひひひっ! ご、ご主人様! ボ、ボクのは、初めてをどうぞお受け取り――」

 ――ガチャ……。

「……ハーモニー、これはどういう状況ですか?」

 俺はその時心底安堵し、声がした方向を見たのだが。
 そこにいたニーアの表情は何とも形容しがたく。
 端的に表現するのであれば、竜の逆鱗より酷く恐ろしい形相というべきか。
 俺がすぐに視線をそらし、こうやって神々に救いを乞うているレベル!
 クソ! 俺は何も悪くない、悪くないんだよ! 畜生がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
 
「おぉ! ニーア姉様! 早いご到着ではありませんか!」
「質問の答えになっておりません。どうして貴方様を襲ったのですか?」
「確かにニーア姉様から見たらそう見えたかもしれませんね。申し訳ございません、ご主人様と最近会話をする機会がなかったものですから、つい甘えてたのです。反省しておりますので、何卒ご容赦ください」
「……今回は目を瞑りますが、貴方様に迷惑をかけない範囲でお願いします。私も同席しても宜しいでしょうか? 少々お腹が空いてしまったのですが……」
「これはこれは! ではすぐに焼き菓子の用意をしますので、少々お待ちください♪」

 た、助かったと思えばいいんだよな?
 ま、まさかハーモニーに力負けしてしまうだなんて予想外なんだが……。
 童貞を奪われるよりも遥かにショックが大きすぎるぞ、はぁ……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

めざせ魔獣博士!!~筆は剣より強し~

暇人太一
ファンタジー
転校のための学校見学中に集団転生に巻き込まれた林田壮真。 慈悲深い女神様が信徒に会う代わりに転生させてくれ、異世界で困らないようにステータスの設定もさせてくれることに。 その際、壮真は選択できる中で一番階級が低い中級職業である【魔獣学者】を選んだ。 理由は誰とも競合しそうにないということと、面白そうだからという二つ。 しかも、ユニークスキルが【魔獣図鑑】という収集モノ。 無能を演じ、七人の勇者たちを生贄にして図鑑をコンプリートするための旅を謳歌する。 そんな物語である。 魔獣ゲットだぜっ!!!

正義の剣は闘いを欲する

花邑 肴
ファンタジー
とある任務の失敗で子供化(10歳)&魔力減退の呪いに掛かってしまった、アルカサール王国・憲兵魔術師エフェルローン(26歳) 世界でも指折りの最弱魔術師と成り果てた彼を、ここぞとばかりに貶めたのは、正義を行使する責務に携わる職場の上官や、同僚たちであった。 それから数年後。 上司からのオーバーワークや同僚からの陰口などの嫌がらせに耐え続け、正義への信念を捨て去る代わりに、それなりの緩く平穏な生活を手に入れたエフェルローン。 しかし、その平穏な生活は、とある任務と正義感溢れる一人の新米女憲兵の教育を上官から託される事により徐々に崩壊していく。 事件と新米女憲兵との関わりの中、見せつけられるのは至る所に蔓延る正義の歪み。 正されるべきだと分かっていながらも、自分への無力感や正義に対する不信感から見て見ぬふりを決め込もうとするエフェルローン。 しかし、新米女憲兵や事件に無理やり巻き込んだ後輩たちの、正義を貫こうとする真っ直ぐで直向きな様子に。 自らの正義を殺したエフェルローンの心は揺れる。 そんな、正義と不義の狭間を漂う彼が、最後に選ぶ自らの正義の形とは――?

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

美少女エルフ隊長へ転生した俺は、無能な指揮官に愛想がついたので軍隊を抜けました ~可愛い部下たちとスキル【ダンジョン管理】で生きのびます~

二野宮伊織
ファンタジー
ブラック企業で働いていた俺は、なぜか30歳になった瞬間、異世界に転生してしまう。 しかも、転生先はカルロス帝国第7特殊魔法中隊という、エルフのみで編成された亜人部隊の十人隊隊長だった。 その名はアレー。前世の姿とは似ても似つかない19歳の巨乳で美しい女エルフだ。 最初はその容姿に喜んだ俺だったが、この世界の亜人の立場はかなり低く、無能な人間の指揮官に振り回される日々を過ごしていた。 そんなある日、俺たちは進軍の休憩中に敵の襲撃にあってしまう。その戦力十倍差という圧倒的不利な戦いにも関わらず、無謀な作戦を実行する指揮官。 それを見て俺たちは愛想をつかし、軍を脱走し敵兵から逃げる事にした。 必死に逃亡して逃げ込んだ洞窟で主人公は神様に出会い、【ダンジョン管理】というスキルを与えられる。これは、洞窟を自分の意のままに変えられるという能力だ。 主人公はこのスキルを使って、仲間たちと共にダンジョンで生き残ることを決意する。敵兵や帝国の追っ手に脅えながらも、俺は美少女エルフの仲間たちと共に異世界でサバイバルを始めたのだった。 ※誤字、脱字等がありましたら、感想欄等で報告していただければありがたいです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

Re:オークキング ~呪毒でオーク堕ちした第八王子、美少女を寝取るスキルだけで生き残ってやる!?”美少女わらしべ”復讐劇~

書記係K君
ファンタジー
  王位継承を争う”第一王子”に呪毒を盛られ、異世界最弱の【豚頭鬼-オーク-】になってしまった”第八王子”。 彼は復讐を誓うと、女を支配する能力だけを武器に――村娘を襲い、罠を仕掛け、村を奪い、エルフを騙し、 ゴブリンと戦争し……徐々に復讐を成し遂げていく。【ダークファンタジー”美少女わらしべ”復讐劇】  ◆◇◆ ※ご感想なども頂けると大変嬉しいです。”ぶひっ”の一言でも嬉しいです笑。  ※おかげ様で”HOTランキング”入りできました!  ※第1回「次世代ファンタジーカップ」最終順位38位にランクインできました!   皆さまに応援いただいたおかげです。本当にありがとうございます!  

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...