RE:狂奔転生ブラッドヴラド

四五茶

文字の大きさ
上 下
1 / 47
絶望から這い上がる者へ

哀れな鶸の末路

しおりを挟む
 例えばだ、例えば自分自身が黄金の翼を生やした大鷲だと勘違いし。
 そんな勘違い野郎の目の前に世界を喰らう漆黒の大蛇が現れ。
 その時自分自身がそこらにいるただの鶸だと気づいた時には時既に遅し。
 気づけば地に伏され、自分自身の価値が無価値であると気づかされるのだ。

「お前を殺す! 殺してやる! 化け物が、クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 その身に不相応な声で叫んだとしても、大蛇はそんな鶸など眼中になく。
 身をつんざくような絶叫で殺意を向けても相手にすらしてもらえず。
 周囲を飛び回る他の鶸達の相手をしていた方が大蛇にとって遥かに有意義であろう。
 故に虚無に向かってただ叫ぶだけの道化以下の存在なのだ、貴様は。

「お、お前を……こ、殺して……。殺してや……る……」

 無価値だと気づかされ、更なる追い打ちをかけるように無視され。
 自分自身が蟲以下であるかのような感覚に陥った時、絶望の淵に立たされ。
 最早その先に光すらなく、ただ堕ちていくだけの身。
 心臓をじわりじわりと鷲掴みされるかのような感覚――死が迫るであろう。
 そうだ、貴様は死ぬのだ――哀れな雛よ、ただの贄でしかない存在よ。

「あ……。あぁ……」

 最早叫ぶことすら出来ぬか、愚かな鶸よ。
 何故その身で自分自身が世界の中心に周っていたと勘違いしていたのか?
 くだらない、あまりにもくだらない存在だ。
 分不相応の力が故なのか、或いはそれを許容する周囲が悪いのか?
 籠の中で育った鶸の分際で、何故大蛇に勝てる道理があるというのだ?

「クソ! クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! この化け物、化け物め! 話が違うじゃねぇか! 畜生! 楽な仕事じゃなかったのかよ!」
「この場から逃げるぞ! 急げ! 今の私達では奴には勝てん! いいな!?」
「じゃあむざむざアンタの命令のせいで突撃していったアイツらは見殺しかよ! それでも指揮官かよ、アンタは!?」
「いいじゃん、別に! アタシは逃げるし」
「……無理。……逃げれない」

 逃げ出す鶸、絶望する鶸、死を待つ鶸などなど――遅かれ早かれ結末は同じ。
 何故絶対強者を前にして逃げれると思うのか? 全く哀れな存在共よ。
 故に貴様らは救われぬ、烏滸おこがましいにも程がある。
 そんな存在に慈悲の手を差し伸べる神など存在しない、存在してはいけない。
 だからそのまま死ね、惨たらしく死ね。

「……生ま……れ……。……ったら……。こ……す……」

 だが一つ、これだけは確かなことがある。
 神の慈悲を一切乞わず、絶望の底へ堕ちて逝くという身で。
 純粋な殺意の炎を宿した時に、初めて闘争の本質が完成するのだ。
 その闘争こそが祈りそのもの――慈悲を受け入れるに値する存在。

 おめでとう、一羽の鶸よ。
 貴様だけは救ってやろう、救ってやろうではないか。
 大蛇の贄でしかない貴様を救ってやろうではないか、なぁ?
 
 私は慈悲深い。
 貴様の第二の人生に幸あれ、私の祝福を与えん。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。

▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ...... どうしようΣ( ̄□ ̄;) とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!! R指定は念のためです。 マイペースに更新していきます。

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

処理中です...