入道雲の作り方

みこと。

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入道雲の作り方

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「僕 これがしたい」

 ゆう君が指さしたガシャポンを見て、ママは目を丸くしました。

「雲を作るガシャポン?」

「飛行機雲がいい」

 ガシャポンにあるいろんな雲の写真を見ながら、ゆう君が言います。

「どれが出るかわからないわよ」

 ママがお金を渡すと、ゆう君はガシャポンを回しました。

 コロン。

 軽い音がして出てきた青いカプセルを、ゆう君は急いでのぞき込みました。


 ところが。

「え~~、これ何? なんか種みたい」
「この種を育てると雲になるって」

 ママが説明書を読みながら、ゆう君に答えました。

「じゃあまだ何の雲かわからないの?」
「そうね。おうちに帰って育ててみましょう」

 ママと手をつないでおうちに帰ったゆう君は、早速、雲の種を育てる準備をします。

 必要な物。

 瓶(蓋つき)
 水

 作り方。

 空き瓶に水を入れ、雲の種を入れてかき混ぜます。
 蓋をして、あたたかい場所に置き、1時間ほど待って下さい。

 ※警告。瓶の蓋は決して開けないで下さい。出来た雲は触らないで下さい。

「……ですって。1時間もかかるのね」

「何雲かなぁ」

 


 あたたかな窓辺に来たゆう君は、待ち遠しくて瓶をじっと見つめていました。
 瓶の中は、気のせいか水が白く集まってきたように思います。

 ゆう君はもっとよく見たくて、瓶の蓋を取りました。

 その時、ママが誘いました。

「ゆう君、公園に遊びに行こう。帰ってきたら、雲もきっと出来てるわ」

「わあ! 行く 行く」

 ゆう君は瓶を置いて、ママの元へと駆け寄りました。



 ゆう君とママが出かけた後。

 モク

 モクモク

 瓶の中では、次第に白いモヤが寄り集まり……。

 モコモコモコ

 ソフトクリームのように盛り上がってきました。

 


 入道雲です。
 ゆう君のカプセルに入っていた雲の種は、入道雲でした。

 瓶の中で、雲はどんどん育ちます。
 そして蓋がない瓶から、雲は部屋へと膨らみ、どんどん大きくなっていきました。


 しばらくして。
 誰もいない部屋のガラス窓が、外側から、そ――っと開くと。

 怪しい男が様子を伺いながら、窓枠をまたいでゆう君のおうちに足を踏み入れました。
 泥棒です。


「うわぁぁっ」


 突然、男は悲鳴をあげました。
 窓際の雲にぶつかったのです。
 入道雲の中では、氷の粒と雨が荒れ狂っていたからたまりません。
 びっくりした男は慌てて逃げ出しました。
 開いた窓から、雲も空に流れ出ます。





「どうして窓がいてたのかしら」
「僕の雲は?」

 帰ってきたゆう君とママは首を傾げました。

 


 この雲のカプセルトイ、今はもう売ってないそうです。
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