呪われ伯爵の優雅な生活。〜契約結婚のはずなのに嫁が可愛すぎる件!

みこと。

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12.未来を一緒に①(代替わり)

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「トレモイユ伯には、奴隷を切り刻み、地下室で禁じられた黒魔の儀式をしている疑いがある! 証拠隠滅をはからせないため、これより即座に屋敷地下を改める!!」

「────!?」

(ど、どういうこと???)

 確かにアーレことトレモイユ伯爵には黒い噂があった。
 ただ、噂は噂に過ぎず、いきなり騎士団が押しかけ、屋敷のあるじの許しも得ずにこんな強行をするなんて有り得ない。

 騎士たちは、彼らを押しとどめようとする使用人たちを払って、どかどかと厨房から地下への入り口へと踏み込んでいく。

 エマは、人の輪のもとへ急いだ。

「奥方様!」

 エマに気づいたひとりが言う。

「伯爵様へお知らせは?」
「門を破られた際、マルクが走っております。いまお伝えしているかと」

(門を破った?)

 その言葉にギョッとするが、アーレにはすぐ伝わる。

 頷いて、エマはどうすべきか迷った。

 見守る? やましいことなどない。地下に儀式跡がないと判明すれば、彼らも大人しく引くはず。

 そう両手を握りしめたエマの横で、誰かの囁きが聞こえた。

ニセの証拠を捏造する気じゃないだろうな」
「ああ、有無を言わさず、中に入ったものな」

(!!)

 公平であるべき聖教騎士団がそんなことをする? でもこの事態こそ異常だ。
 すでに力で止めようとしただろう使用人たちが幾人か怪我を負い、侍女たちも震えている。
 看過できない。

 エマは、自分の倍以上の体積を持つ、巨躯な騎士を見据えた。
 一段と立派な身なり、彼が指揮官に違いない。

「おやめください!! 何の許可もなく、突然無礼ではありませんか!」

「なんだ?」

 明らかに舐めきった視線を騎士が寄こした。エマの手にあるカゴとらえて言う。

「我らは聖教会の任を遂行している。下女風情が口を出すな」

「下女とは礼を欠いた発言! わたくしはトレモイユ伯爵の妻で、この家の女主人です! 然るべき礼儀を守ってください」

 エマはひるまずに声を張った。

 最近結婚したばかりの身で、"女主人"を名乗るのはおこがましいが、騎士の態度は目に余る。
 貴族の端くれとしても、アーレが来るまで自分が騎士たちを抑えなければ。
 
 エマの言葉に眉をひそめた騎士は、すぐに何か思い当たったらしい。口元を品なく歪めながら、言い放った。

「ああ、老伯爵が貧乏男爵から買い取ったという娘か。女主人を名乗れるのも今だけだ。伯爵家の罪は露呈して、すぐにその地位を失うことになるだろうから、夫と路頭に迷う準備でもしておくんだな」

 過ぎる言葉に、さすがにエマが憤りを感じた時だった。

「わああああああっ!!」
「バ、バケモノ──!!」

 厨房から、騎士たちが転がるように飛び出てきた。
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