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6.事後の処理
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先日、お兄様が負傷された崩落事故は、女王陛下を狙って仕組まれたものだった。
現場に残った痕跡や、当日の急な順路変更から、怪しい点が多々浮上。
悲しいかな、世間には、"女性が王などけしからん"などと考える、頭の固い人たちがいるのだ。
女王陛下はご即位後、たくさんの改革を進められ、古い体制に固執する貴族たちの抵抗にあった。
そういう人たちが、王の交代を望み、女王陛下の事故死を企てた。由々しき事態だ。
そこで犯人を探り出すため、お兄様は"ニセの情報"を「極秘事項」として流した。
お兄様が大怪我を負い、復帰不可能という話。
フェルディナン様が、王宮内部で聞いたという噂だ。
お兄様は、女王支持派の筆頭家門にして、陛下の剣と盾。
アルエン公爵が失墜すれば、女王陛下の基盤も大きく揺らぐ。
噂の反応は、顕著だったらしい。
そこから黒幕や関係者を割り出し、証拠を揃えていたのだと聞いた。
「では、部下の皆様が次々にお見舞いに訪れてらしたのは……」
「ああ。見舞いと称した、報告だった。ほら、俺が屋敷に引きこもってないと、噂の真実味がないだろう?」
(お兄様、やっぱりちっとも休暇じゃなかった……!!)
後日、お兄様の指揮のもと、王都では大捕り物があった。
女王陛下を害そうとした貴族一派が捕まり、彼らの陰謀とともに、アルエン公爵が健在だと知らしめられる。
そして極秘のはずの"噂"を知っていたフェルディナン様は。
とりあえず、事件とは無関係だった。
フェルディナン様が知ったのは、すでに噂が十分に浸透しきった後だったらしい。
けれどその話をフェルディナン様に伝えたのは、子爵令嬢コリンナ様だったというから驚きだ。
("王宮の確かな筋から聞いた"と言ってたくせに。実際はコリンナ様が、色仕掛けで王宮官吏から聞き出したネタだったなんて)
彼女は、"伯爵令息の婚約者"になりたいがために情報を掴み、フェルディナン様と共謀して、私を追い落とそうと画策したのだ。
ふたりは、"アルエン公爵家の威光"が消えれば、婚約も無意味になると考えた。
これら下賤な企みと、婚約破棄宣言についての責任を問うため、お兄様はバシュレー伯爵家を訪問。
伯爵は大層驚き、フェルディナン様を問い質した。
これまで伯爵は、息子と私の仲は良好だと受け取っていたらしい。
というのも、フェルディナン様がいつも巨額の予算を使い、"婚約者"に贈り物をしていたから。
私はバラの一本も貰ったことなかったので、当然その予算とは、別の女性たちに使われていたわけで。
私に対してはなおざり、どころか手紙すら完全無視していたことも、執事が証言して発覚。
伯爵は息子に対し、激怒した。
バシュレー伯爵は先代公爵に恩があり、彼の秘蔵(私のこと?)を大切に引き受けると約束していたらしい。それを差し引いたとしても。
不誠実さも虚偽の報告も、あげく勝手な婚約破棄も、すべてが許される限度を越えていた。
バシュレー伯爵は、アルエン公爵たる兄と私に深い謝意を示された後、家督は次男に譲ると決断。
長男フェルディナン様は、伯爵家からの除籍、追放となったのである。
頃合いを同じくして、コリンナ様も淫奔なご性分が災いし、ご実家から追い出された。
フェルディナン様とコリンナ様。その後おふたりがどうなったのか。
お兄様はご存知らしいけど、私は知らない。
でも、私の人生にはもう関係のない方たちだから、聞かなくてもいいと思った。
平民として、どこかで暮らしているのだと思う。たぶん。
現場に残った痕跡や、当日の急な順路変更から、怪しい点が多々浮上。
悲しいかな、世間には、"女性が王などけしからん"などと考える、頭の固い人たちがいるのだ。
女王陛下はご即位後、たくさんの改革を進められ、古い体制に固執する貴族たちの抵抗にあった。
そういう人たちが、王の交代を望み、女王陛下の事故死を企てた。由々しき事態だ。
そこで犯人を探り出すため、お兄様は"ニセの情報"を「極秘事項」として流した。
お兄様が大怪我を負い、復帰不可能という話。
フェルディナン様が、王宮内部で聞いたという噂だ。
お兄様は、女王支持派の筆頭家門にして、陛下の剣と盾。
アルエン公爵が失墜すれば、女王陛下の基盤も大きく揺らぐ。
噂の反応は、顕著だったらしい。
そこから黒幕や関係者を割り出し、証拠を揃えていたのだと聞いた。
「では、部下の皆様が次々にお見舞いに訪れてらしたのは……」
「ああ。見舞いと称した、報告だった。ほら、俺が屋敷に引きこもってないと、噂の真実味がないだろう?」
(お兄様、やっぱりちっとも休暇じゃなかった……!!)
後日、お兄様の指揮のもと、王都では大捕り物があった。
女王陛下を害そうとした貴族一派が捕まり、彼らの陰謀とともに、アルエン公爵が健在だと知らしめられる。
そして極秘のはずの"噂"を知っていたフェルディナン様は。
とりあえず、事件とは無関係だった。
フェルディナン様が知ったのは、すでに噂が十分に浸透しきった後だったらしい。
けれどその話をフェルディナン様に伝えたのは、子爵令嬢コリンナ様だったというから驚きだ。
("王宮の確かな筋から聞いた"と言ってたくせに。実際はコリンナ様が、色仕掛けで王宮官吏から聞き出したネタだったなんて)
彼女は、"伯爵令息の婚約者"になりたいがために情報を掴み、フェルディナン様と共謀して、私を追い落とそうと画策したのだ。
ふたりは、"アルエン公爵家の威光"が消えれば、婚約も無意味になると考えた。
これら下賤な企みと、婚約破棄宣言についての責任を問うため、お兄様はバシュレー伯爵家を訪問。
伯爵は大層驚き、フェルディナン様を問い質した。
これまで伯爵は、息子と私の仲は良好だと受け取っていたらしい。
というのも、フェルディナン様がいつも巨額の予算を使い、"婚約者"に贈り物をしていたから。
私はバラの一本も貰ったことなかったので、当然その予算とは、別の女性たちに使われていたわけで。
私に対してはなおざり、どころか手紙すら完全無視していたことも、執事が証言して発覚。
伯爵は息子に対し、激怒した。
バシュレー伯爵は先代公爵に恩があり、彼の秘蔵(私のこと?)を大切に引き受けると約束していたらしい。それを差し引いたとしても。
不誠実さも虚偽の報告も、あげく勝手な婚約破棄も、すべてが許される限度を越えていた。
バシュレー伯爵は、アルエン公爵たる兄と私に深い謝意を示された後、家督は次男に譲ると決断。
長男フェルディナン様は、伯爵家からの除籍、追放となったのである。
頃合いを同じくして、コリンナ様も淫奔なご性分が災いし、ご実家から追い出された。
フェルディナン様とコリンナ様。その後おふたりがどうなったのか。
お兄様はご存知らしいけど、私は知らない。
でも、私の人生にはもう関係のない方たちだから、聞かなくてもいいと思った。
平民として、どこかで暮らしているのだと思う。たぶん。
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