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第二章
世界樹
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翌日ゲッター、ガプロ、アイナの3人が村の外れに行くとそれを待っていたかのようにドライアドのエリーが現れた。
彼女の美しさにアイナは「うわぁ」と感嘆の声を上げたが、ゲッターはその美しさの裏に潜む何かを感じていた。
エリーが「ごきげんよう皆様」と柔らかい声で挨拶をするのでゲッターは「おはよう」と挨拶を返し、アイナをエリーに紹介した。
エリーとアイナはお互いに礼儀正しく挨拶を交わし、早速世界樹を目指して出発した。
世界樹はこの森の中心にあるらしい。
ガプロによるとこの方向にこのまま進むとオークの村の近くを通るとのことだ。
エリーは「オークの村のさらに先になります。このペースで進めば3日くらいで着くと思います」と言った。
せっかくの機会なので、ゲッターはガプロにオークの村について質問してみた。
「オークの村は私たちの村から1日半くらいの距離でしょうか。互いの狩場が隣接するため時々出会うことがありますが基本的にはお互い干渉はしません」とガプロは説明した。
「でも過去に争いになったこともあるのだろう?」とゲッターは以前ガプロから聞いた話を思い出し尋ねた。
「オークは悪食でなんでも食べます。だから飢えるとゴブリンも捕まえて食べることがあるんです。オークによるとゴブリンは痩せていて筋ばかりだから美味しくないそうですよ。あの時は森の木の実が不作で、オークも食糧が少なく飢えていたのでしょう」とガプロは過去の出来事を振り返って言った。
「オークは短絡的で欲望に忠実な傾向があります。何事も深く考えずに目先の利益に飛びつきがちです。世界樹の近くに住んでいますが私としてはあまりお近づきになりたくない相手ですね」とエリーはオークに厳しい言葉を口にした。
ガプロも「うん、うん」と頷いてる。
ゲッターは「オークはどれくらい強いんだ?」とガプロに尋ねた。
ガプロは固い表情で「オークは身体が大きくその分力が強いです。動きは直線的ですが一撃一撃が重いので受けに回るとほとんどのゴブリンは勝てません」と答えた。
「オークと交渉はできるかな?」とゲッターが聞くとガプロはびっくりした後考えながら言った。
「オークはゴブリンを下に見ていて馬鹿にしてます。だから我々を対等な交渉相手とはなかなか見ないでしょう。ただ交渉の場に引き出せればエリー殿も言った通り、深く物を考えるのが苦手なのでこちらのペースに引き込みやすい相手と言えます」
「ゲッター様は何を考えているのですか?」とアイナが聞いた。
ゲッターは笑いながら「もし出来たらオークと一緒に今回の問題を解決できないかと思っているんだ」と答えた。
それを聞いたエリーが美しい顔を嫌そうに歪めて「オークは食べることしか頭にない種族です。世界樹の実を見てどう暴走するかわからないので賛成しかねます」と言った。
ゲッターは話を変えてエリーに「緑竜ヴェルデリオンとはどんなドラゴンですか?」と尋ねた。
エリーは表情を穏やかなものに戻して「優しくて面倒見の良いドラゴンです」と答えた。
そのドラゴンのイメージとはかけ離れた発言に、ゲッターたちは驚きを隠せなかった。
ゲッターたちの反応を見てエリーは笑いながら「長久の時を生きるエルダードラゴンは世界樹と同じく神秘的な存在です。その辺りにいるトカゲのようなドラゴンとは全く別の生物と考えてください」と説明した。
「相当強いのですよね」とアイナが尋ねるとエリーはゲッターたちが何を心配しているのか察して答えた。
「大丈夫ですよ。ヴェルデリオンは禁忌を侵さなければあなたたちを襲うことは絶対にありません。正直なところあなたたちのことを相手にしていませんから。」
「緑竜ヴェルデリオンに会うことは出来ますか?」とゲッターは真剣な顔でエリーに尋ねた。
エリーは不思議そうに「何が目的ですか?」と聞き返す。
ゲッターは「私たちが世界樹の実を取る協力を、ヴェルデリオンにお願いできないでしょうか?」とエリーに尋ねた。
するとエリーは少し考えた後「では私が紹介しましょうか?」と提案してきた。
「世界樹の実を遠くに運んだり食べたりするのは飽きたかもしれませんが、あなたたちと協力する話なら聞いてくれるかもしれません。長生きしすぎてヴェルデリオンは刺激に飢えていますからね」とエリーは言った。
それから少し難しい顔をして「会って話をするのは大丈夫ですが実際に協力してくれるかは正直わかりません。あなたたちの提案次第だと思います。もしつまらない話をしたら怒りはしないと思いますが二度と会ってくれなくなると思います」とエリーは続けた。
「ヴェルデリオンの禁忌とは何ですか?参考までに聞いておきたいのですが」とゲッターは尋ねた。
「1番してはいけないのは出された料理を残すことです。これだけは絶対にしてはいけません」とエリーは真剣な表情で言った。
「料理が出されるのですか?」とアイナはちょっと引き攣った笑顔で聞いた。
「ヴェルデリオンは多趣味で、その中で一番好きなことが料理で客をもてなすことです」とエリーは言った。
ゲッターはドラゴンが料理を作ることがイメージ出来ず、エリーに「料理お上手なんですよね?」と聞いた。
「私は食べたことがないのでわかりませんが、一度隣の大陸に住む氷竜グレイシアが来た時に、グレイシアが出された料理を残したことでヴェルデリオンと大喧嘩になりました。森に甚大な被害が出て、世界樹にも傷ができました。この森の世界樹が傷を負ったのは後にも先にもあの時だけです」とエリーは震えながら言った。
「グレイシアはどうして料理を残したのですか?」とアイナも怖そうに聞いた。
「料理の量が多かったのは確かなようです。ヴェルデリオンも後でそのことは反省していました。それ以外のことは喧嘩の直接的な原因も含めて聞けていません。私には怖くて聞けません」とエリーは言った。
話を聞いてもゲッターはドラゴンがどうやって料理するのか全く見当がつかなかったので話を進めた。
「他の禁忌はどういったものですか?」
エリーも気を取り直して続けた。
「先ほども言いましたがヴェルデリオンは多趣味で共通の趣味を持つ者とはすごく仲良しになります。そのかわり趣味のことを馬鹿にされるとすごく怒ります。あとヴェルデリオンの家に行った時コレクションを見せられるかもしれませんが、絶対に勝手に触ったり壊したりしないでください。土竜テラノクスがうっかり壊したことがあってすごく怒られていましたから。テラノクスが素直に謝ったのであの時は被害が出ませんでしたがヴェルデリオンの怒りは凄まじいものでした」
「ヴェルデリオンって人間みたいですね」とゲッターが言うとエリーは「逆です。あなたたちがヴェルデリオンに似てるのです」と言った。
「ヴェルデリオンたちエルダードラゴンは太古に生まれてこの世界を作る一役を担っています。ほとんど神と同じ存在です。そしてあなたたちも神の落とし子だから似ているのも当然です」とエリーは説明してくれたが難しくてゲッターたちにはよくわからなかった。
「どういうことですか?」とゲッターは理解することを諦めずに聞いた。
「世界樹やエルダードラゴンがこの世界の理を守る者。あなたたちはその理の中でこの世界に住む者です。理を守る者に似るのはそのためです」とエリーは言ったがやっぱりゲッターたちには難しくてよくわからなかった。
道中は特に問題なく進めた。
オークの村の近くを通った時もオークたちと出会うことはなかった。
アイナが「エリーが魔法か何かを使っているかもしれない」と言っていたがそれほどまでに世界樹までの道のりは順調に進んだ。
エリーは森の中なら瞬間移動できるらしく野営の際は帰って休み、朝になると戻ってきた。
ゲッターが「素晴らしい能力ですね」と感嘆するとエリーは「私たちは世界樹の世話役なので世界樹から力が借りられるのです。なので森の中ではかなりの力が発揮できます。ですが森からでると世界樹の力が届かなくなるので消滅してしまいます。あくまでも世界樹の世話役が私たちの使命なのです」と言った。
出発してから3日目の午後になった。
エリーの言うとおりならそろそろ世界樹が見えてもよさそうだが全くそれらしきものは見当たらなかった。ゲッターは少し不安になり始めたが、エリーは落ち着いて前を進んでいる。
ふと、エリーは立ち止まり「着きました」と宣言した。
ゲッターたちが周囲をキョロキョロと探していると、エリーは両手に杖を掲げ呪文のようなものを唱え始めた。
エリーの身体から力の波動が溢れ出し周囲の木々を揺らした。
その様子をゲッターたちは身を寄せ合って見守っていた。
するとエリーから力の波動だけでなく強い光も溢れ出した。
ゲッターたちは目を閉じて堪える必要があった。少しすると力の波動の感触がなくなったので目を開けるとそこには天までそびえる巨大な樹が立っていた。
ゲッターは思わず上を見上げたが多くの枝と葉のためどれほどの高さがあるのか確認できなかった。
横を向いてもどこまでも幹が続いていてどれほどの太さがあるのか想像がつかなかった。
世界樹のあまりの存在感に3人はしばし圧倒されて動けなかった。
「皆様、こちらへ」と固まっていた3人にエリーが声をかけた。
ゲッターたちは圧倒されたままで黙ってエリーに付いていく。エリーも特に何も言わずに一行は静かに歩いて行った。
歩いても歩いても世界樹には到着せず、世界樹との距離感がわからなくなってしまった。
そのうちに、前方から丸太小屋が近づいてきた。
世界樹の存在感に圧倒されていたゲッターたちは、丸太小屋に到着できたことでとても安心した。
エリーの案内で丸太小屋に入ると3人はリビングのテーブルに思わず突っ伏してしまった。
ゲッターは突っ伏したまま「はぁ~」と長く息を吐き、身体を起こし天井を見上げた。
ゲッターは天井があることを確認すると何故か安心感が湧いた。
安心したことでやっと言葉を発することができるようになった。
「世界樹とは聞いていたけどなんて大きな樹なんだ。迫力がすごくて圧倒されてしまった」とゲッターは頭を抱えるような仕草をしながら言った。
ガプロも未だ興奮醒めやらぬ様子で「まさしく神の宿る樹ですな。こんな樹が森にあることに今まで気がついていなかったなんて、とても信じられません」と言った。
アイナも火照ったような顔で「近くに多くの動物たちの気配がするのだけど、世界樹の存在感のせいで上手く感知できないわ。こんなことは初めて」と言った。
エリーは改めてといった感じで「皆様ようこそ世界樹へおいでくださいました。しばらくはこの丸太小屋を皆様の拠点にお使いください」と歓迎の意を示した。
ゲッターはすぐには行動する気になれず「今日はもう休んで疲れを癒そう」と提案するとガプロとアイナも同意した。
これがゲッターと世界樹の邂逅であった。
彼らはそれぞれの思いを胸に秘め、静かな丸太小屋で明日への準備を整えることにした。
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エリーが「ごきげんよう皆様」と柔らかい声で挨拶をするのでゲッターは「おはよう」と挨拶を返し、アイナをエリーに紹介した。
エリーとアイナはお互いに礼儀正しく挨拶を交わし、早速世界樹を目指して出発した。
世界樹はこの森の中心にあるらしい。
ガプロによるとこの方向にこのまま進むとオークの村の近くを通るとのことだ。
エリーは「オークの村のさらに先になります。このペースで進めば3日くらいで着くと思います」と言った。
せっかくの機会なので、ゲッターはガプロにオークの村について質問してみた。
「オークの村は私たちの村から1日半くらいの距離でしょうか。互いの狩場が隣接するため時々出会うことがありますが基本的にはお互い干渉はしません」とガプロは説明した。
「でも過去に争いになったこともあるのだろう?」とゲッターは以前ガプロから聞いた話を思い出し尋ねた。
「オークは悪食でなんでも食べます。だから飢えるとゴブリンも捕まえて食べることがあるんです。オークによるとゴブリンは痩せていて筋ばかりだから美味しくないそうですよ。あの時は森の木の実が不作で、オークも食糧が少なく飢えていたのでしょう」とガプロは過去の出来事を振り返って言った。
「オークは短絡的で欲望に忠実な傾向があります。何事も深く考えずに目先の利益に飛びつきがちです。世界樹の近くに住んでいますが私としてはあまりお近づきになりたくない相手ですね」とエリーはオークに厳しい言葉を口にした。
ガプロも「うん、うん」と頷いてる。
ゲッターは「オークはどれくらい強いんだ?」とガプロに尋ねた。
ガプロは固い表情で「オークは身体が大きくその分力が強いです。動きは直線的ですが一撃一撃が重いので受けに回るとほとんどのゴブリンは勝てません」と答えた。
「オークと交渉はできるかな?」とゲッターが聞くとガプロはびっくりした後考えながら言った。
「オークはゴブリンを下に見ていて馬鹿にしてます。だから我々を対等な交渉相手とはなかなか見ないでしょう。ただ交渉の場に引き出せればエリー殿も言った通り、深く物を考えるのが苦手なのでこちらのペースに引き込みやすい相手と言えます」
「ゲッター様は何を考えているのですか?」とアイナが聞いた。
ゲッターは笑いながら「もし出来たらオークと一緒に今回の問題を解決できないかと思っているんだ」と答えた。
それを聞いたエリーが美しい顔を嫌そうに歪めて「オークは食べることしか頭にない種族です。世界樹の実を見てどう暴走するかわからないので賛成しかねます」と言った。
ゲッターは話を変えてエリーに「緑竜ヴェルデリオンとはどんなドラゴンですか?」と尋ねた。
エリーは表情を穏やかなものに戻して「優しくて面倒見の良いドラゴンです」と答えた。
そのドラゴンのイメージとはかけ離れた発言に、ゲッターたちは驚きを隠せなかった。
ゲッターたちの反応を見てエリーは笑いながら「長久の時を生きるエルダードラゴンは世界樹と同じく神秘的な存在です。その辺りにいるトカゲのようなドラゴンとは全く別の生物と考えてください」と説明した。
「相当強いのですよね」とアイナが尋ねるとエリーはゲッターたちが何を心配しているのか察して答えた。
「大丈夫ですよ。ヴェルデリオンは禁忌を侵さなければあなたたちを襲うことは絶対にありません。正直なところあなたたちのことを相手にしていませんから。」
「緑竜ヴェルデリオンに会うことは出来ますか?」とゲッターは真剣な顔でエリーに尋ねた。
エリーは不思議そうに「何が目的ですか?」と聞き返す。
ゲッターは「私たちが世界樹の実を取る協力を、ヴェルデリオンにお願いできないでしょうか?」とエリーに尋ねた。
するとエリーは少し考えた後「では私が紹介しましょうか?」と提案してきた。
「世界樹の実を遠くに運んだり食べたりするのは飽きたかもしれませんが、あなたたちと協力する話なら聞いてくれるかもしれません。長生きしすぎてヴェルデリオンは刺激に飢えていますからね」とエリーは言った。
それから少し難しい顔をして「会って話をするのは大丈夫ですが実際に協力してくれるかは正直わかりません。あなたたちの提案次第だと思います。もしつまらない話をしたら怒りはしないと思いますが二度と会ってくれなくなると思います」とエリーは続けた。
「ヴェルデリオンの禁忌とは何ですか?参考までに聞いておきたいのですが」とゲッターは尋ねた。
「1番してはいけないのは出された料理を残すことです。これだけは絶対にしてはいけません」とエリーは真剣な表情で言った。
「料理が出されるのですか?」とアイナはちょっと引き攣った笑顔で聞いた。
「ヴェルデリオンは多趣味で、その中で一番好きなことが料理で客をもてなすことです」とエリーは言った。
ゲッターはドラゴンが料理を作ることがイメージ出来ず、エリーに「料理お上手なんですよね?」と聞いた。
「私は食べたことがないのでわかりませんが、一度隣の大陸に住む氷竜グレイシアが来た時に、グレイシアが出された料理を残したことでヴェルデリオンと大喧嘩になりました。森に甚大な被害が出て、世界樹にも傷ができました。この森の世界樹が傷を負ったのは後にも先にもあの時だけです」とエリーは震えながら言った。
「グレイシアはどうして料理を残したのですか?」とアイナも怖そうに聞いた。
「料理の量が多かったのは確かなようです。ヴェルデリオンも後でそのことは反省していました。それ以外のことは喧嘩の直接的な原因も含めて聞けていません。私には怖くて聞けません」とエリーは言った。
話を聞いてもゲッターはドラゴンがどうやって料理するのか全く見当がつかなかったので話を進めた。
「他の禁忌はどういったものですか?」
エリーも気を取り直して続けた。
「先ほども言いましたがヴェルデリオンは多趣味で共通の趣味を持つ者とはすごく仲良しになります。そのかわり趣味のことを馬鹿にされるとすごく怒ります。あとヴェルデリオンの家に行った時コレクションを見せられるかもしれませんが、絶対に勝手に触ったり壊したりしないでください。土竜テラノクスがうっかり壊したことがあってすごく怒られていましたから。テラノクスが素直に謝ったのであの時は被害が出ませんでしたがヴェルデリオンの怒りは凄まじいものでした」
「ヴェルデリオンって人間みたいですね」とゲッターが言うとエリーは「逆です。あなたたちがヴェルデリオンに似てるのです」と言った。
「ヴェルデリオンたちエルダードラゴンは太古に生まれてこの世界を作る一役を担っています。ほとんど神と同じ存在です。そしてあなたたちも神の落とし子だから似ているのも当然です」とエリーは説明してくれたが難しくてゲッターたちにはよくわからなかった。
「どういうことですか?」とゲッターは理解することを諦めずに聞いた。
「世界樹やエルダードラゴンがこの世界の理を守る者。あなたたちはその理の中でこの世界に住む者です。理を守る者に似るのはそのためです」とエリーは言ったがやっぱりゲッターたちには難しくてよくわからなかった。
道中は特に問題なく進めた。
オークの村の近くを通った時もオークたちと出会うことはなかった。
アイナが「エリーが魔法か何かを使っているかもしれない」と言っていたがそれほどまでに世界樹までの道のりは順調に進んだ。
エリーは森の中なら瞬間移動できるらしく野営の際は帰って休み、朝になると戻ってきた。
ゲッターが「素晴らしい能力ですね」と感嘆するとエリーは「私たちは世界樹の世話役なので世界樹から力が借りられるのです。なので森の中ではかなりの力が発揮できます。ですが森からでると世界樹の力が届かなくなるので消滅してしまいます。あくまでも世界樹の世話役が私たちの使命なのです」と言った。
出発してから3日目の午後になった。
エリーの言うとおりならそろそろ世界樹が見えてもよさそうだが全くそれらしきものは見当たらなかった。ゲッターは少し不安になり始めたが、エリーは落ち着いて前を進んでいる。
ふと、エリーは立ち止まり「着きました」と宣言した。
ゲッターたちが周囲をキョロキョロと探していると、エリーは両手に杖を掲げ呪文のようなものを唱え始めた。
エリーの身体から力の波動が溢れ出し周囲の木々を揺らした。
その様子をゲッターたちは身を寄せ合って見守っていた。
するとエリーから力の波動だけでなく強い光も溢れ出した。
ゲッターたちは目を閉じて堪える必要があった。少しすると力の波動の感触がなくなったので目を開けるとそこには天までそびえる巨大な樹が立っていた。
ゲッターは思わず上を見上げたが多くの枝と葉のためどれほどの高さがあるのか確認できなかった。
横を向いてもどこまでも幹が続いていてどれほどの太さがあるのか想像がつかなかった。
世界樹のあまりの存在感に3人はしばし圧倒されて動けなかった。
「皆様、こちらへ」と固まっていた3人にエリーが声をかけた。
ゲッターたちは圧倒されたままで黙ってエリーに付いていく。エリーも特に何も言わずに一行は静かに歩いて行った。
歩いても歩いても世界樹には到着せず、世界樹との距離感がわからなくなってしまった。
そのうちに、前方から丸太小屋が近づいてきた。
世界樹の存在感に圧倒されていたゲッターたちは、丸太小屋に到着できたことでとても安心した。
エリーの案内で丸太小屋に入ると3人はリビングのテーブルに思わず突っ伏してしまった。
ゲッターは突っ伏したまま「はぁ~」と長く息を吐き、身体を起こし天井を見上げた。
ゲッターは天井があることを確認すると何故か安心感が湧いた。
安心したことでやっと言葉を発することができるようになった。
「世界樹とは聞いていたけどなんて大きな樹なんだ。迫力がすごくて圧倒されてしまった」とゲッターは頭を抱えるような仕草をしながら言った。
ガプロも未だ興奮醒めやらぬ様子で「まさしく神の宿る樹ですな。こんな樹が森にあることに今まで気がついていなかったなんて、とても信じられません」と言った。
アイナも火照ったような顔で「近くに多くの動物たちの気配がするのだけど、世界樹の存在感のせいで上手く感知できないわ。こんなことは初めて」と言った。
エリーは改めてといった感じで「皆様ようこそ世界樹へおいでくださいました。しばらくはこの丸太小屋を皆様の拠点にお使いください」と歓迎の意を示した。
ゲッターはすぐには行動する気になれず「今日はもう休んで疲れを癒そう」と提案するとガプロとアイナも同意した。
これがゲッターと世界樹の邂逅であった。
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