162 / 244
第158話 逃走(緒恋視点)
しおりを挟む「ッッ!痛っ!ッ、ッ、もう少し!」
荷物をまとめた後、二階の窓からロープを伝って外に出た。
ロープを伝って降りる時に力を入れるたび、お腹が痛んで声を出しそうになるが、我慢する。
何とか地面に着地すると、急いで近くの駅に向かった。
二つのカバンを持って、後ろを確認しながら駅に向かう姿は、傍から見ると不審者にしか見えないだろうけど、そんなことに気を配っている余裕は無い。
駅に向かう間も、頭の中からは先程の出来事が頭から離れず、私の中の疑問も次々に沸いてしまう。
お母さんが亡くなる前までは、あそこまで口調が汚くは無かったし、私のことも名前で呼んでいた。お酒だって、一年に三回程度しか飲まなかったのに、足の踏み場が無くなるぐらい散らかるまで、飲み続けていた筈だ。
あの男にとって、私はもう娘では無いのだろう。
あいつがクソ親に成り下がったところを目の前で見たのに、何故か悲しくなってしまう。
ある種のパニック状態に陥っているのかと、自分の感情が分からないまま歩き続けていると、視線の先に駅が見えた為、足を止める。
「・・・何処に行けば良いんだろう。」
慌てて荷物を整理する時、お母さんの荷物から通帳とハンコ、その他現金なども持って来たから、何とかなると思っていたけれど、学生だった私に行き場所なんて見つからない。
駅の目の前で路頭に迷った結果、近くのATMからお金を引き出すことにした。もしかしたら、あの男から通帳を抑えられるかもしれないから。そう、スマホで調べた情報に書かれてあった。社会知識の無い私には、ネットの情報しか頼りに出来るものが無かったのだ。
「寝る場所と最低限の食事、寝床を確保したら買い物、やる事一杯ある。」
気のせいだろうけど、他のことを考えていると、幾分か気分が良くなっている気がする。いつか、思い出してしまうのだろうけど。
目的地に向かって歩いていると、一台の白いバンが横に止まったと思いきや、後ろから誰かに体を掴まれたと同時にバンの扉が開き、無理矢理バンの中に連れ込まれ、口を塞がれてしまった。
「ンンッ⁉ンンッ!!ンッ!!」
ガムテープで塞がれた口から、何とかして声を出そうとしたが無理だった。
バンの中には、ぽっちゃり体系の中年男が二人と、体格の良い男が運転席に居た。そいつらは、こちらを見ながらニヤニヤしていて、体格の良い男は何かをスマホで確認していた。
「特徴は合ってるな。おい、お前が未希だな?そうだよな?あぁ?」
何故か、私の名前を知っている様子の男達だったが、完全にパニック状態になっている私は気が付かず、慌てて頷いてしまった。
私が頷いたのを見ると今度は、男達に小さな声で何かを伝えると、何処かに向けてバンが急発進してしまった。
「ふひっ!ふひっ!!」
「ハァッ!ハァッ、ハァッ!」
不気味な中年男と共に。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!
海夏世もみじ
ファンタジー
旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました
動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。
そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。
しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!
戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる