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第109話 引っ越し?

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翌日午前9時
 今日も『スペースオペラ』の事務所に来ている。正確に言うなら、『スペースオペラ』にある、鬼道 奈落専用配信スペースに来ていと言った方が正しいかもしれんが。

 昨日、幸太郎さんとの話題でも出たように、『スペースオペラ』はとにかくでかい。でかすぎて、従業員が足りないくらいだ。そこで、幸太郎さんは、本社のライバー一人一人に対して、配信スペースを設けることにしたと言う。一部屋の大きさが、アパートの一室よりも遥かにでかいことに関しては、どう反応したら良いか分からない。

 「取り敢えず、最低限の配信準備は出来たかな。」

 幸太郎さんからの指摘により俺は、この会社のこの部屋に住むことになった。ちなみに、部屋代は無料。家電製品などは既に設置済み。もし他にも設置したい物があれば、相談したのちに設置出来る物は設置させて貰うことになった。しかもだ、驚くことに朝食夕食付きだ。どうやら、ここの会社の従業員の方も何人か空き部屋を使用しているらしく、『どうせなら社員食堂も作ってしまえ!!』と言う考えから、食堂と料理スタッフ数名を雇い入れたらしい。本当に大丈夫なのかこの会社。
 そして何より、幸太郎さんがお金をかけてまで強化したのが、防犯設備だ。
 防犯設備の内容については詳しく聞くことは出来なかったが、今朝会社を訪れた時には、昨日まで居なかった筈の警備員が入り口に3名待機していて、厳重な身分証明の後、入り口から入ってすぐのところで、指紋認証用の型を取ることになった。
 将来的には、各部屋に指紋認証を取り付けたいようだ。幸太郎さんに『何故IDチップなどの認証システムを使わないんですか?』と聞いたところ、『ブラックハッカーも、IDチップ内のデータより、人の指紋を入手する方が難しいでしょ?』と言われた時には、ここまで対策を考え抜いていることに驚いた。

 家から持って来た配信器具を設置しながら、これから会う同期達に不安の表情を隠しきれない。
 ちなみに今日会うことになっているライバーは4人。他の3名は都合が悪いらしく、今回の顔合わせは無しだ。そして、その4人の内、俺と同じくこの会社に住む人が3名。何より、同期のほとんどが年上なのだ。
 社会経験がほとんど無いような俺と同期で大丈夫なのか。同期に馴染むことが出来るのか。
 これが企業所属になった故の悩みなのか。
 色々な考えが頭の中で巡り続ける。
 俺は基本的に大人のことは信用してはいないが、同じVTuberとしてなら、尊敬に値する部分もあると考えている。と言うか、そのような部分があるからこそ、今でもVTuberが好きでいられるのだ。

 時計を見ると、もうすぐで10時を迎えようとしていた。約束の時間だ。

 
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