人生詰んだ気がしたので、VTuberになってみた。

未来アルカ

文字の大きさ
上 下
106 / 244

第103話 メディカルチェック

しおりを挟む
午前10時
 本当なら今日も『炎上配信』をやりたかったのだが、俺にしては珍しく、伸二さん以外の来客がある。

 「先生。これで良いですか?」

 「ええ、記入漏れが無いようにだけ注意して頂戴ね!」

 手元にあるチェックシートを確認しながら、目の前の人物を見る。
 パッと見て40代くらいの眼鏡をかけた女性で、左目の下にある小さな傷跡が特徴だ。

 「そんなに私の顔を見て、どうしたの?もしかして、何か付いてる?今更私に惚れても遅いわよ?」

 「そんなことは絶対ありえませんよ。そんなことより、そろそろ約束の時間じゃないんですか?」

 「そうだったわ!!それじゃあ、また今度来るからよろしく!!」

 そう言った後、脇に置いていた高そうなバッグを持って、足早にアパートから出ていってしまった。

 「相変わらず夫婦仲がよろしいことで。せっかちな部分も、本当に変わらない。」

 佐藤《さとう》 遥《はるか》
 少年院に居た時、俺の精神科医として担当していた人だ。何故か俺に会いに来ていた伸二さんと仲良くなり、何かある度にメディカルチェックを理由にして会いに来てくれる人だ。
 この人のことは、伸二さんと比べると、そこまで信頼はしていないが、他人と話すよりも幾分か楽な感じはする。勿論、そんなことを考えていれば、顔に出さなくても行動やら何やらで、遥さんに感じ取らせてしまった場面が何回もあった。しかし、遥さんは『別に割り切った関係で良いのでは無いのか?私は別に、信頼して欲しいとか思って無いしな。』と肯定してくれた。とても優しい人だとは思う。
 ちなみに、もう少しで50代後半を迎えるにも関わらず、あそこまで活発な理由を聞いてみると、『旦那に少しでも若々しく見られたくて、普段から頑張ってるんだよ!』と、恥ずかしがりながらも言われた時は、少し引いた。後、『年齢のことは口に出すな』とも言われたな。

 テーブルの上にあるお茶と茶菓子の空を片付けながら、今日の配信で何をやろうか考える。

 「流石に毎日毎日voltexばかりだと飽きられるからな。まぁ、配信をちゃんと見てる奴が居るのか分からないけど。うーん、やっぱり炎上した人達を集めて、大集会みたいな感じの配信が出来たら、めちゃくちゃ面白そうなんだけどな。」

 昨日の配信がきっかけになったのかは分からないが、少しずつ俺と同じような配信スタイルの奴等が出て来ている。ただし、このような配信が出来るのは、一部の個人勢配信者のみだ。特に、企業所属のVTuberなんかは、今回の事件に対しての対応が後手後手な状態だ。そろそろ、別の解決策を見つけなければ、配信者業界に大きなダメージと亀裂が入ってしまうかもしれない。

 一人で黙々と作業を進めていると、スマホに一件の通知が来た。
 普段から基本的に通知はオフにしている為、珍しく届いた通知が気になり開いてみると、ある一つの小さな企業から俺(鬼道 奈落)宛てのメールだった。

 「一体何だろ。会社からのメールって、支払い請求以外で来たこと無いぞ?悪戯の可能性もあるしな。」

 ブラックハッカー関連の悪質なメールかもしれないと、取り敢えずその日は触れないで置き、後ほど伸二さんの方で調べて貰うことにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!

海夏世もみじ
ファンタジー
 旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました  動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。  そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。  しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!  戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

おねしょ合宿の秘密

カルラ アンジェリ
大衆娯楽
おねしょが治らない10人の中高生の少女10人の治療合宿を通じての友情を描く

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

ダンジョンのモンスターになってしまいましたが、テイマーの少女が救ってくれたので恩返しします。

紗沙
ファンタジー
成長に限界を感じていた探索者、織田隆二。 彼はダンジョンで非常に強力なモンスターに襲われる。 死を覚悟するも、その際に起きた天災で気を失ってしまう。 目を覚ましたときには、襲い掛かってきたモンスターと入れ替わってしまっていた。 「嘘だぁぁあああ!」 元に戻ることが絶望的なだけでなく、探索者だった頃からは想像もつかないほど弱体化したことに絶望する。 ダンジョン内ではモンスターや今まで同じ人間だった探索者にも命を脅かされてしまう始末。 このままこのダンジョンで死んでいくのか、そう諦めかけたとき。 「大丈夫?」 薄れていく視界で彼を助けたのは、テイマーの少女だった。 救われた恩を返すために、織田隆二はモンスターとして強くなりながら遠くから彼女を見守る。 そしてあわよくば、彼女にテイムしてもらうことを夢見て。

処理中です...