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第79話 検察官
しおりを挟む「これ、どちらの家も工事の邪魔になりません?まぁ、直接言ってくることはなさそうですけど、別荘とか建てたい人がいたりしますよね?」
「それについてなんだが。一度、リゾート開発の建設会社から、お前の両親に対して家の建て壊しや立ち退きを要求されたことがある。勿論、写真の通りは残ったままだ。お前の両親はどちらも断ったが、下手するとお前にも同じような話がいくかもしれない。もし、そのような話を持ち掛けられたら俺に教えてくれ!また明日来る。」
どうやら面談時間は終了らしい。まぁ、伸二さんも色々とやることがあって大変そうだもんな。特に、俺のせいで。
留置所に戻ってくると、ベッドに横になって考える。
まさか、授業でしか聞いたことの無い『地方地域の過疎化』の問題が、俺に関わって来るとはな。実際、父さんも母さんも要求には一度断っているようだし、俺だって残したい気持ちの方が強いと思う。ただ、俺に対しての問題が山積みな事が気になる。
民事裁判、刑事裁判、少年院、学校の卒業、遺産の管理、親権問題。流石に何が何だか分からなくなってくる。
伸二さんに面談が始まってすぐ、検察官との話し合いの内容を教えたのだが、検察官が民事裁判の内容を知っている事に疑問を持ったらしい。そもそも、検察官は刑事裁判の事象でのみ対応を任される為、民事裁判に関わっては来ないのだ。いや、関わることが出来ないの方が正しいか。
少年院については、俺が入るのは医療少年院のようだ。はっきり言って学校の卒業は難しいだろう。それに、さっきの話では伸二さんがオブラートに包んで遺産の話をしてくれたが、俺だって馬鹿じゃない。
要は、俺の親権も含めて財産を狙ってくる大人が何人かいるってことだろう。それには、親戚のクズ共も含まれている。
これから俺がするべきことは、誰が敵で誰が味方か見極める事だろう。伸二さんからは、検察官には注意しとけって言われたしな。
頭の中で今までの事を整理していると、昼食が運ばれて来た。
今日は珍しく、食パン二枚と牛乳一杯、それに二枚のクッキーだった。
ここの刑務所が碌な飯を出さない事は分かっていた為、食パン二枚でも結構嬉しい。
昼食を食べ終わりベッドで横になっていると、何処からかテレビの音が廊下で響いて俺の元に流れてくる。
『昨夜から続く、大型の台風の接近による局地的な大雨や強風が直撃した場所では、洪水や土砂災害の他、家の倒壊が数多く報告されています。ニュースを見ている皆様もどうか、不要な外出を控え防災用品準備をお願いいたします。』
『どこもこんなニュースばっかりだな。』
『土砂災害で300人近く亡くなったんだろ?家も数多く巻き込まれたって言うしな。今日は早く帰った方が良さそうだ!』
テレビの音と人の話し声を聞きながら目を瞑っていると、いつの間にか眠ってしまった。
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