裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~

あかる

文字の大きさ
28 / 75

終わりの予感

しおりを挟む
    今年の夏は忙しかったせいか、あっという間に過ぎてしまった。
    夏休みが終わる少し前、弟が生まれた。名前は亮太。小さくてふにゃふにゃだ。

「美優はお姉ちゃんだから、亮太には優しくするのよ」
「うん!」
    実感は湧かないけど、弟は大切にしようと思う。
    そして、赤ちゃんには付きっきりでお世話しないといけないから、これからも畑仕事の手伝いも頑張ろうと思う。
    うん。私はお姉ちゃんだもんね。

    幼稚園も始まり、畑の方も一段落して、久しぶりにゆっくりとダンジョンに潜る。
    牛肉、牛乳、チーズ…同じ魔物のドロップアイテムで、これだけ色々出るのも珍しい。
    更には魔石の時もある。

    依頼されているマジックバッグの分の魔石は完成品のバッグと一緒に貰えるけど、自分用には使えないから、常に幾つかはキープしてある。

    うちの子達は少し位の火ならものともしない。首輪に魔鉄の飾りを付けてそこに耐性上昇の付与をつけたし、自分でも避ける。
    私は前面を覆う位の結界だ。全面だと却って使い辛い。盾を使って避けるのに似ている。
    ブレスを受け流した所で魔力を込めた杖で突く。

    その動作も大分慣れてきた。そろそろ次に行ける段階だろうか?
(ダンジョンを少しお休みしてたんだから、少し手慣れてから次に進んだら?)

    タマが心配してくれるけど、大丈夫だと思う。
    却って魔力操作の腕も上がって攻撃が使い易い位だ。
(大丈夫。14階層に進もう)
    
    14階層は、硬質の甲殻を持った巨大な蟻だ。
    鑑定    アーマードアント    刃を弾く硬質な甲殻を持つ。酸袋は刃を鍛えるのに使う。火が弱点

    なら、適当に火を当てて行けばいいかな。
    甲殻の一部か酸袋。たまに魔石を落とした。

    火を使えない冒険者にはきつい階層だと思うけど、私もタマも使えるから、サクサク行ける。
(やった!階段!)
(ちょっと…まだ14階層も今日入ったばかりじゃない。食べられない物ばかりだからって、すぐに進むのは良くないわ)
    確かにタマの言う事にも一理ある。けど、5のつく階層はボーナスステージ的な場所だ。

(ピヨちゃんは、大丈夫なの)
    ちょっと油断した隙に、下に下っていく。
    私は一応マジックポーションを飲み干して続く。
   
    5のつく階層は、不思議階層。一説には、空が同じだから、繋がっているという人もいる。
    これは前世でも同じ意見があったけど、私はどうかと思う。
    出る魔物も違うし、入るダンジョンによって魔物の強さもかなり違うからだ。

   巨大椎茸だ。肉厚な傘を振り回して襲ってくる。
    これはダンジョンが出来た際に椎茸のホダギの一部を呑み込んだ為だろう。
    当然、倒せば椎茸が手に入る。

    ん…階層の壁代わりになってるこれは…マジックベリーだ!仄かな甘味と酸味があるこの実は前世では高級品で、上級のマジックポーションが作れる。

    喜んで実を取ろうとすると、蜂が襲って来る!毒針を飛ばしても攻撃してくる。耐性は上げても毒状態にならない訳じゃない。
(美優、ボクは大丈夫だよ!闇攻撃に対する耐性が元々高いんだ!)
    犬神が使う攻撃は確かに闇系だ。そんな特典?もあるんだね。

    タマも少しは恩恵を受けているだろうけど、ポチほどじゃない。
    ピヨちゃんはあっさり毒状態になるから、良く見てて、毒を喰らったら、すぐに回復してやる。
   
    私も攻撃を避け損ねると、毒を受けてしまう。
    魔法で回復出来るけど、自分が怪我したり、具合が悪いと上手く集中できない。
    毒消しだけでも、常に持ち歩くべきだろうな。
 
    たくさん採れた椎茸は、焼き椎茸にしようかな。
    ホクホク顔で出てくると、丁度私達より先に出たのか、翔真兄ちゃん達がいた。
「とにかく、俺が切り込んでもサポート出来ないなら、レベルも上がらないし、いつまでもお荷物だからな」
    彼女さん、泣きそうじゃん。
「…っと、美優。美優達は、どこまで行けたんだ?」
「翔真兄ちゃん、それは冒険者としてのルール違反だよ」
「あー。そうだな。悪い…でもボスは倒したんだよな?」
「そうだね…幼稚園生にはいっぱい時間あったし」
「なら、頼む!ボスだけ手伝ってくれ!」
「翔真君!…そんな…」
「俺につき合って無理に冒険者になる必要もないんじゃないか?俺はもう9階層まで行けてるんだ。ソロで。だから新しいスキルだって気になってるし、先に行って有用なスキルが取れれば戦力になるだろ?」

「…分かったわ。私、お荷物になりたい訳じゃないもの」
    8階層で躓いているのかな?確かにあのネバネバ糸は嫌だよね。
「マップは俺が買って来るから、頼む」
    マップは私、見えるから要らないけど…まあいいか。

「お姉さん、松明を買えば攻略出来るんじゃないですか?そうしてる人結構いますし」
「実力で、が翔真君の方針なのよ…取れたスキルも私は少ないし、本当は魔物も怖いから、翔真君に付いていくのは、これからはちょっと…」

    それは、お付き合いも止めるって事?!
「翔真兄ちゃんの事、嫌いになりましたか?」
「そこまでは…でも、ダンジョンだけが交流する場所じゃないと思うし」

    …まあ、そりゃそうだろう。田舎だから遊ぶ場所もあんまりないと思うけど。カラオケ屋さんもないしね。

    
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~

御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。 異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。 前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。 神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。 朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。 そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。 究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。 十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。 剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。 十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。 紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。 十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。 自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。 その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。 ※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

処理中です...