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魔法と棒術
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戻ってきたチョコ達が持ってきたのは、やはりたくさんの魔石。こうして手軽に魔石が手に入るから、里にはまだ道具を作る人が多いのだとか。
一番は王様みたいだけど、王様の仕事もやりながらだから、時間が取れないのが不満らしい。
魔道具や付与には失敗も多くて、その為にもたくさんの魔石が採れるあのダンジョンは、里のみんなが利用しているそうだ。
私も簡単な魔道具の作り方を教わって作ってみた。
魔石から抽出した魔力で円を描いただけの物で、触れると一時間位光を発する。
かなり明るくて、薄暗い亜空間の中で本を読む時等に役に立ちそうだ。
でも、明るさがおかしいと聞いて、ちょっと鑑定してびっくり。光の精霊が何故か加護を与えてくれていた。
庭の土や、モチ達が利用している小さな池もそう。お陰で水が汚くなる事もないし、枯れたりもしない。
植物を育てれば、豊富な魔素が含まれた野菜が実る。
それはリリーの育ててくれる野菜や果物も一緒で、他の野菜よりもサイズが大きくなり、美味しくなる。
翌日、私も潜るつもりで洞穴ダンジョンに来たけど、スライム相手に魔法の特訓が始まってしまった。
確かに、折角全属性持っているから、得意な水魔法ばかり伸ばすのは良くないけど、ダンジョンの探索もしたいのに。
「サヤカ?せめて全部中位魔法を扱えるようにならないと、付与にも役に立たないよ?」
そうなんだけど…というか、冒険者として使っていくのは、幾つか決めて使うって話なんだから、下手に練習しても器用貧乏になりかねない。
「アッシュさん。いざという時に備えるのは大事だと思うけど、実際使っていく魔法を効率良く使って伸ばす方が良くない?」
「折角魔法神様に加護を頂いてるんだから、属性を合わせた合体魔法とか、強力な魔法を扱えた方がいいかなって。その為にも、全属性をある程度上げておかないと」
ううむ…あの牛の頭を吹っ飛ばした水蒸気爆発は強力だった…
「焦らなくていいから、毎日少しずつでもやろう?」
まあ…辛くない範囲でなら。
なんて、鬼教官がそんな甘いやり方を許容する筈もない。
一定の力で、寸分違わず属性も素早く切り替えて…なんて、アッシュさんのやり方は容赦ない。
ただ、きちんと教わった通りにやっていれば魔法の腕も確実に上がるし、私の事をちゃんと考えて教えてくれてる。鬼のように厳しいけど、意地悪で厳しくしてる訳じゃないから、高過ぎる要求に応えようと私も努力する。
「短剣は、どうにか扱えるようになったから、次はこれね」
アッシュさんは、アイテムボックスから棒を取り出す。持ちやすいように削られていて、お遍路さんの杖みたいだ。
「魔法使いの杖…とは違う感じ?」
「本格的な杖を使うのはまだサヤカには早いと思って。棒…いずれは杖でも戦えるようにと思ってね」
「えええ…私のメイン武器は短剣じゃないんですか?」
「短剣をメインにする人はそうはいないよ。あくまでもサブ武器。棒術スキルもあるから、取れるように頑張ろう」
そんな軽いノリでスキルが取れたら苦労はしない。
一時期、長距離攻撃用に弓も習ったけど、アッシュさんは私には才能なしと見たのか、早々に諦めて、以来ずっと短剣ばかりだった。
「確かに魔法しか使えないと、魔力が切れた時に危険ですけど、棒の先に考えてる杖を打撃武器として見るのは違うんじゃ?」
「棒は防御としても使える。今慣れておけば、咄嗟に自分の身を守る事も出来るようになるよ」
用意した丸盾は、今は使っていない。全然使えてなかったから、早々に才能なしと判断されたんだろうな。
基本動作と、慣れる事から始められた棒術は、意外にもすぐにスキル化した。
短剣よりも速く上達しそうだけど、やっぱり攻撃をする瞬間と、防御の瞬間に魔力を込める事を要求されて、げんなりした。
「まあ、普通なら何年もかけて習得するものだからね。俺は棒をメインに戦う事は殆どないし、高度な技は教えてあげられないけど」
「アッシュさんは魔法を使う時も杖とか持たないですけど、杖があった方が指向性の補助や、魔力のコントロールに役に立つって教わりましたけど」
「最初から杖の力に頼ったら、実力を見誤るからね。だから最初は棒」
魔法も、自分的には上手くなってると思うんだけど、アッシュさんから見ればまだまだなんだろうな。
今日も頑張った。相手がスライムだから弱い者虐めしてる気分になるけど、酸を飛ばされて酷い目にあった事があるから、油断は出来ない。
さて…夕ご飯はどうしようかな…凝った物を今から作るのはちょっと勘弁願いたい。
(サヤカ、今日仕留めたんだけど)
チョコがマシロに合図すると、マシロが大きな塊肉を出した。
「血抜き済みで、しかも骨や内臓まで落としたんだね。偉いよ、マシロ」
ワイルドボアの塊肉だ。取り敢えず1センチ位に切り分けて、ニンニクを出す。
ガーリックオイルの香りが台所空間に充満する。
「お。いつの間に森の深部に?」
(最近野菜料理が多くて。たにはしっかり肉食べたいからね)
私達用にはミディアムレアだけど、チョコ達には厚切りレアにする。リルも小さな身体のどこに入っていくのか、かなりの大食いだ。
ブロッコリーも茹でて添えたけど、無くならないうちに肉のお代わりを要求される。
あっという間に無くなるから食べ始める前にお代わり分も焼いておいたけど、すぐに無くなりそうだ。
お風呂に入ろうとしたら、モチも入ってきた。
身体の一部を伸ばして、器用に髪を洗ってくれる。
「凄いね、モチ。ありがとう」
褒められて嬉しそうだったけど、一緒にお風呂に入ろうとして、殆どのお湯が溢れてしまった。
「入りたいなら、小さくならないとね」
落ち込んでしまったモチを撫でてお風呂から上がる。
モチが進化してから感情も大分分かりやすくなった。
モチのマッサージチェアに癒されながら、今日の疲れもあってうっかり寝落ちしてしまったけど、モチが器用にベッドに寝かせてくれた。
足音も立てずに飛び乗ったマシロが、もふもふの身体で暖めてくれた。
明日からも頑張ろう。
一番は王様みたいだけど、王様の仕事もやりながらだから、時間が取れないのが不満らしい。
魔道具や付与には失敗も多くて、その為にもたくさんの魔石が採れるあのダンジョンは、里のみんなが利用しているそうだ。
私も簡単な魔道具の作り方を教わって作ってみた。
魔石から抽出した魔力で円を描いただけの物で、触れると一時間位光を発する。
かなり明るくて、薄暗い亜空間の中で本を読む時等に役に立ちそうだ。
でも、明るさがおかしいと聞いて、ちょっと鑑定してびっくり。光の精霊が何故か加護を与えてくれていた。
庭の土や、モチ達が利用している小さな池もそう。お陰で水が汚くなる事もないし、枯れたりもしない。
植物を育てれば、豊富な魔素が含まれた野菜が実る。
それはリリーの育ててくれる野菜や果物も一緒で、他の野菜よりもサイズが大きくなり、美味しくなる。
翌日、私も潜るつもりで洞穴ダンジョンに来たけど、スライム相手に魔法の特訓が始まってしまった。
確かに、折角全属性持っているから、得意な水魔法ばかり伸ばすのは良くないけど、ダンジョンの探索もしたいのに。
「サヤカ?せめて全部中位魔法を扱えるようにならないと、付与にも役に立たないよ?」
そうなんだけど…というか、冒険者として使っていくのは、幾つか決めて使うって話なんだから、下手に練習しても器用貧乏になりかねない。
「アッシュさん。いざという時に備えるのは大事だと思うけど、実際使っていく魔法を効率良く使って伸ばす方が良くない?」
「折角魔法神様に加護を頂いてるんだから、属性を合わせた合体魔法とか、強力な魔法を扱えた方がいいかなって。その為にも、全属性をある程度上げておかないと」
ううむ…あの牛の頭を吹っ飛ばした水蒸気爆発は強力だった…
「焦らなくていいから、毎日少しずつでもやろう?」
まあ…辛くない範囲でなら。
なんて、鬼教官がそんな甘いやり方を許容する筈もない。
一定の力で、寸分違わず属性も素早く切り替えて…なんて、アッシュさんのやり方は容赦ない。
ただ、きちんと教わった通りにやっていれば魔法の腕も確実に上がるし、私の事をちゃんと考えて教えてくれてる。鬼のように厳しいけど、意地悪で厳しくしてる訳じゃないから、高過ぎる要求に応えようと私も努力する。
「短剣は、どうにか扱えるようになったから、次はこれね」
アッシュさんは、アイテムボックスから棒を取り出す。持ちやすいように削られていて、お遍路さんの杖みたいだ。
「魔法使いの杖…とは違う感じ?」
「本格的な杖を使うのはまだサヤカには早いと思って。棒…いずれは杖でも戦えるようにと思ってね」
「えええ…私のメイン武器は短剣じゃないんですか?」
「短剣をメインにする人はそうはいないよ。あくまでもサブ武器。棒術スキルもあるから、取れるように頑張ろう」
そんな軽いノリでスキルが取れたら苦労はしない。
一時期、長距離攻撃用に弓も習ったけど、アッシュさんは私には才能なしと見たのか、早々に諦めて、以来ずっと短剣ばかりだった。
「確かに魔法しか使えないと、魔力が切れた時に危険ですけど、棒の先に考えてる杖を打撃武器として見るのは違うんじゃ?」
「棒は防御としても使える。今慣れておけば、咄嗟に自分の身を守る事も出来るようになるよ」
用意した丸盾は、今は使っていない。全然使えてなかったから、早々に才能なしと判断されたんだろうな。
基本動作と、慣れる事から始められた棒術は、意外にもすぐにスキル化した。
短剣よりも速く上達しそうだけど、やっぱり攻撃をする瞬間と、防御の瞬間に魔力を込める事を要求されて、げんなりした。
「まあ、普通なら何年もかけて習得するものだからね。俺は棒をメインに戦う事は殆どないし、高度な技は教えてあげられないけど」
「アッシュさんは魔法を使う時も杖とか持たないですけど、杖があった方が指向性の補助や、魔力のコントロールに役に立つって教わりましたけど」
「最初から杖の力に頼ったら、実力を見誤るからね。だから最初は棒」
魔法も、自分的には上手くなってると思うんだけど、アッシュさんから見ればまだまだなんだろうな。
今日も頑張った。相手がスライムだから弱い者虐めしてる気分になるけど、酸を飛ばされて酷い目にあった事があるから、油断は出来ない。
さて…夕ご飯はどうしようかな…凝った物を今から作るのはちょっと勘弁願いたい。
(サヤカ、今日仕留めたんだけど)
チョコがマシロに合図すると、マシロが大きな塊肉を出した。
「血抜き済みで、しかも骨や内臓まで落としたんだね。偉いよ、マシロ」
ワイルドボアの塊肉だ。取り敢えず1センチ位に切り分けて、ニンニクを出す。
ガーリックオイルの香りが台所空間に充満する。
「お。いつの間に森の深部に?」
(最近野菜料理が多くて。たにはしっかり肉食べたいからね)
私達用にはミディアムレアだけど、チョコ達には厚切りレアにする。リルも小さな身体のどこに入っていくのか、かなりの大食いだ。
ブロッコリーも茹でて添えたけど、無くならないうちに肉のお代わりを要求される。
あっという間に無くなるから食べ始める前にお代わり分も焼いておいたけど、すぐに無くなりそうだ。
お風呂に入ろうとしたら、モチも入ってきた。
身体の一部を伸ばして、器用に髪を洗ってくれる。
「凄いね、モチ。ありがとう」
褒められて嬉しそうだったけど、一緒にお風呂に入ろうとして、殆どのお湯が溢れてしまった。
「入りたいなら、小さくならないとね」
落ち込んでしまったモチを撫でてお風呂から上がる。
モチが進化してから感情も大分分かりやすくなった。
モチのマッサージチェアに癒されながら、今日の疲れもあってうっかり寝落ちしてしまったけど、モチが器用にベッドに寝かせてくれた。
足音も立てずに飛び乗ったマシロが、もふもふの身体で暖めてくれた。
明日からも頑張ろう。
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