巻き込まれ召喚された私は、ペットと共に穏やかに過ごしたい

あかる

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新たなダンジョン

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 魔道具としてのマジックバッグを作れるのは、王様一人らしい。お姉さんも頑張っているけど、拡張の出来る大きさが、全く違うとか。
「時間停止の付与を付けられるのも私だけだし、ティアナが王様の仕事を代わりにやってくれればいいのに」

「嫌よ。私は魔道具師になりたいの。アッシュが王様やればいいのよ」
「やめてよ、姉さん。俺は向いてないってば」
「アッシュは落ち着きがないからな…」

 あれ?世襲的には次はアッシュさんのお父さんでは?
「大体、過去にはハイエルフが王でない事もあったんだし、嫌がる俺達よりも、やりたい人なんていくらでもいるんじゃないかな」

「それを言うなら、儂だって魔道具だけ作っていたいわ!」

「どっちにしろ、まだまだ先の話ね。サヤカさん、やっぱり次に需要がありそうなのは、部屋を冷やすエアコン?という物だと思うの」
「温風が出る魔道具は既にあるので、エアコンというより、冷風機でいいと思いますよ?」
 冷却の一時付与じゃ、服に直接付けるからか、あっという間に体温で効果が薄れてしまう。冷却の生活魔法はあっても個人差なのか、そもそも使える人が少ないし、温度もそれぞれだ。

 扇風機で冷たい風が出来るようになればいいよね?風を生み出す魔道具はあるんだし。

「いっその事、サヤカさん自身が魔道具を作ってみない?元の世界の便利な物を再現していくだけでも、魔道具師としてやっていけそうだし!」
「駄目だよ、姉さん。ハイエルフが聖女の行動を縛るなんて。物になるまでに、何年かかるか…それだけかけて、世に出せないような物を作ったりしたら」

 機械には詳しくないんだよね。そういうのって、工業系の知識が必要だと思うし、難しい気がする。
 それに、流石に何年もかかるのは嫌だな。

 もう春が近いのだと思う。雪は薄くなっているし、心なしか暖かい。
 リルは外を元気にかけ回っているけど、マシロは温風の出る魔道具の前から動かない。
 チョコは森の深い所にいるらしくて、マジックバッグを首から下げて行ってしまい、たまにしか戻ってこない。

 あの時の魔物素材は、数も多くて、分けて持ち込んだ。
 残念ながら肉の方は、血抜きをしていなかったせいで、生臭くなってしまっていたので、肥料として使う事にした。
 それでも、かなりの金額にはなったので、リルの住む辺りの土地を買えないか、検討中。

 結界石は、魔物を防ぐ為の道具だけど、今は世界樹の苗木を挿し木で増やせないか試している。

 里に普通の人が入れないのは、世界樹の結界効果だ。ここにある巨大な世界樹みたく広い範囲を守れなくてもいいから、安全地帯的な物が作れればいいよね。

 世界樹も聖獣等を守る為に自力で増えようとした事はあったけど、普通の木として切られてしまったり、聖獣となる魔物も他の魔物や冒険者等によって充分に強くなる前に倒されてしまう事があった。

 神殿や権力者に神様が神託を降しても、それによって却って狙われたりで、どうにもならないのが現状だ。
 神様も無闇に神罰を降すのはよしとせず、頼みの綱が相応しい魂を持つ物を聖人や聖女として認定して、力を与える事。

 だったらさ、態々召喚しなくても現地調達出来たじゃん?

 あの時点で王様に何かあったら王位を継ぐのはキルリア様だったとしても、王位を継ぐに相応しいと認められる為には、他にいくらでもやり用はあったはずだ。

 結果災害が起きて結局はキルリア様が今は大変な思いをしている。

 聖女の祈りのスキルは残っているんだし、キルリア様なら上手く使うだろう。


 チョコが戻ってきた。やけに上機嫌だ。
(サヤカ!ダンジョンを見つけたよ!マシロとリルも誘って行こうよ!)
「ええ?マシロはともかく、リルは本調子じゃないのに」
「それにチョコ殿、期待している所申し訳ないが、里のダンジョンはドロップするのが魔石メインだから、美味しい物に期待は出来ないよ」

(ボクが一番期待するのは逃げない魔物だよ。サヤカには申し訳ないけど、リルのリハビリの為にも付いてきて欲しい)
「はあ…仕方ないな」
(アッシュが来なくてもサヤカは守るよ?)

「いや…どのみち魔道具で魔石は使うし、行くよ」

 ミスリルランク冒険者のくせに、ティアナお姉様にいいように扱われている気がする。

 世界樹からは、かなり離れた位置にあるダンジョンは、何故か木の洞の中だ。
 縄梯子を降りていくので、とても怖い。
 1階層はやはりスライムなので、既にモチは戦闘を始めている。
「にゃーう!」
 早くしろって?温風機の前から最後まで動こうとしなかったマシロが何言ってるんだか。

 単なる縄の梯子で固定されてないから、降りるだけで揺れるから怖いんだよ。

「ちょっと休ませてよ」
 まだ膝がガクガクしてる。
 そんな私には構わず、バッグから飛び出したモチがスライムを潰し回っている。

「サヤカは流石に怖がりすぎ。落ちてもこの程度なら大したことないのに」
 男の子二人が穴の中に飛び降りてきた!うそ…どう見ても小学生なのに!

「こらマルス、エンジュ。ここは飛び降り禁止だろう?」
「だって、一々面倒じゃん?…あれ?人族の子が」
「こちらは聖女サヤカ様だ。失礼のないように」

「ふうん…その聖女様はどうして地面に座り込んでるんだ?」
「!も、もう平気だよ?ちょっと梯子が揺れたから」
 強がるサヤカに、アッシュは生温い視線を向ける。

「なら、競争しようぜ!扉に一番速くタッチしたら勝ちだ!」
「わ、私はここは初めてで、場所も何も分からないよ」
「向こうの端だよ。スライムに攻撃されたら減点。やっつけたらお宝はちゃんと拾えよ?」
「ハンデは10数える。ほらマルスも」
「よし!いーち…」
 え?え?と…扉の所まででいいんだよね?てか、見えてるんだから楽勝じゃん!ハンデなんて要らないのに。


 リルが一緒に走ってくれる。楽しいのだろう。
 結局、途中で石に躓いたサヤカは負けた。ちょっと擦りむいたけど、リルが舐める前に、傷は塞がった。
「ワン?」
「平気だよ、ありがとう」
「狼の仔?聖女のねーちゃんの従魔?」
「ふわふわだね、可愛い」
「リルっていうの。よろしくね」
「おー…」
 男の子達は聖獣だと気がついたみたいだけど、その遠慮もすぐに消えて、楽しく遊び始めた。

(ボク達は先に進むけど、リルがいるからいいよね?)
「モチもいてくれるからいいよ。程々にね」

「ビッグスライムって、エリアボスで出る時もあるけど、従魔になるとこんなに大人しいんだな」
「可愛いでしょう?」
「うーん…まあ?」
「いや、スライムはスライムだろう」

 むう…
 でも、私の従魔に攻撃する気はないようで、しばらく観察して、すぐに飽きてまたかけっこを始めた。




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