巻き込まれ召喚された私は、ペットと共に穏やかに過ごしたい

あかる

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林檎

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 結局夕飯前、ぎりぎりまで戦った。私はドロップアイテムを拾い集めてばかりだった。
 下手に魔法を使って動きの素早いチョコに当てちゃうのが怖い。
(サヤカ程度の魔法なら、ボクにはたいしたダメージにならないのに)
 どころか、わざと私の魔法を受けて見せた。…全くダメージにもなっていない。悔しいけど、それだけチョコは強いって事だ。
「次の目標は、魔法の威力を上げる事かな」
 ぶれる事ない鬼宣言。

「まあ、これだけ魔法が使えるようになったのなら、魔法をメインにしてもいいけど、魔力が切れた時の事も考えて短剣だけはマスターするよ」
 鬼だ…鬼がいる。

 以前と違うのは、筋肉痛になっても回復魔法を使える所かな。
 もう多くの冒険者は戻ってしまい、人が少ない。中にはセーフティエリアにテントを張って明日に備える人もいる。

 私達もテントを張るけど、入る先は亜空間だ。

 種からでも林檎を育てられるかと、種を渡して交渉してみた。
「これはご自身が育てた方がお役に立てると思います。金の果実はならなくても、立派な実をつけます」

 えっ…いや、そもそも林檎って種から育てられるの?挿し木で増やすならともかく。妖精さんになら、種からでも育てられるって考えたんだけど。

 植木鉢代わりにマシロが以前使っていた木箱に亜空間内の土を入れ、たっぷりと水をかける。

 出来なかったらその時はその時だし、妖精さんに負担をかけてもね…

 けど、大丈夫なのかな?この空間、根を張れるものなのだろうか?
 いやそれ以前に、芽を出すかどうかも未知数だけど。何しろここは、日射しがない。何もしないと、ぼんやりとした暗さだ。生活魔法のライトがあるから暮らせるだけで。

 池の水は何故か腐ったりしない。みんな池の水を飲んでるからね。
 そういえば、モチも大きくなってる。進化って訳じゃないけど、モチは生まれたばかりみたいだし、成長期なのかも?

 羨ましいな…チビで肉なし体型。童顔な私にこそ、成長期が来てほしい!

 もう、誕生日が来て16歳になった私には無理かな。

 聖魔法はまだ少し難しいけど、その前段階である光魔法は容易に扱える。他の初級魔法に比べても、ヒールを扱うのが今まで出来なかったのが不思議な位、あっさりと扱える。水の次位には自分に馴染んだ魔法になった。

 光魔法にも、ちゃんと攻撃手段がある。アンデットに対する為だけじゃなくて、光の弾をファイアーボールのように使える。
 魔法の訓練は、その光の弾を最小限の力で出して、掌の上で維持させる。
 これがなかなか厄介で、少しでも気を抜くと消えたり、打ち出されてしまう。

 最初は光だけでも、慣れたら多くの属性を出して維持出来るようにする事が訓練だ…現在5分ともたない私には、随分気の長い目標だけど、魔力操作を鍛える一環だと思えば頑張れる。

 チート能力を貰っても、使えないなら意味がないし、強い魔物には初級魔法じゃだめみたいだから、鍛えない選択肢はないけど。

 ともあれ、次の日も朝から中ボス部屋だ。牛乳やチーズは出るけど、バターや生クリームは出ない。確率低いはずなのに、今回も宝箱が出たのは、開けたチョコのレベルが高い為だろう。

 今回の宝箱には罠がなかったので、開けると鉄や銅等のインゴットが複数出てきた。
 これは素直に売ろう。

 7階層は骨格標本…じゃなくて、スケルトンだ。剣ではなく、光の弾を当てていく。
 剣だけで倒すのは難しいのだ。アッシュさんがやっている、降ろす瞬間に魔力を込めて攻撃するやり方が、どうしても上手くいかない。
 そんな事関係なしにチョコやマシロは嘴やネコパンチでいとも簡単に倒していく。
 ドロップするのは、魔石だ。大きくて質の良い物は魔道具に利用されるので、小さな崩魔石だけ付与の為に取っておく。後は売却だ。

 中ボス部屋の中には鎧を着た骨格標本…じゃなくて、スケルトンの上位種、リッチが多数出た。
 骨にはモチの酸弾はほぼ通用しない。私の光の弾もリッチ相手には一発では倒せない。しかもマシロに守って貰いながら、何とか一匹?倒せた程度だ。その後は、チョコ達が蹂躙した。

 あんまり活躍出来ていなくても、身体は疲れる。
 今まで訓練も欠かさずに行ってきたけど、明日は何もせずに敢えてゆっくりと休む予定だ。

 ダンジョンからも脱出して、不要品をギルドに売る。
 林檎はもう、苗木にまで成長したので、池の側に植えた。
「マシロ、林檎の苗木では爪研ぎしないでね」
「にゃ!」
 うん、可愛い。もふもふ。

 モチは表面がゴムみたいになって、丈夫になった。レベルアップの恩恵だろうか?
 もう、ゴブリン位になら負けない。

 その日の夕方、皆が戻る頃に孤児院にお邪魔した。
 チョコに許可を取って、たくさん集めた肉を焼いた。勿論、妖精さんが育てたLLサイズの玉ねぎも一緒に焼いて、皆で食べる。

「食べてますか?」
 空を見ていたアッシュさんに声をかける。もうみんなお腹一杯で、チョコでさえ満足そうに座っている。
「今日は動いてないからね。サヤカこそ料理ばかりして、ちゃんと休めてる?」

「私はもふもふを充電すれば元気になれるんですよ」
 こちらの世界に来て、動いているからだろうか?レベルアップの恩恵もあって、不思議と疲れないし、次の日に疲れが残る事はない。
 訓練で筋肉痛が残っても、それ程酷くはならない。

「アッシュさんはどこかに連絡してるみたいですけど、仕事とか平気ですか?」
「強いていうなら今は、瘴気の浄化と、精霊を増やす事が仕事かな」

「それが私のやるべき事なんですよね…具体的にどうすればいいか全然分からないですけど」
「して欲しい事がある時はこちらからお願いするよ」
 アッシュの目には、色とりどりの精霊がサヤカの周囲に羽虫のように集っていて、姦しくお喋りしている。
 多分そのうち見えるようになるし、声も聞こえるようになるだろう。ある程度育った精霊が、サヤカの元を離れて、この地に居着いて恩恵をもたらしていく。

 どれもやる気に満ち溢れていて、積極的にサヤカの役に立とうとしている。それらの声を聞く事が出来ないのは、彼らにとっては可哀想な気もするが、聞こえたら今度はサヤカが大変。

 平和が一番、かな。
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