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アッシュ視点
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禁を破って召喚が行われた。
場所はよりにもよってガリオン王国。神託と宝珠がもたらされた国。世界樹からその情報がもたらされ、俺は祖父である王に命じられ、ガリオン王国に入った。
この国は500年前に世界の危機が訪れた時、神より召喚の宝珠と術を賜り、喚び出された物達は、見事悪しき存在を消滅させた。が、元の世界に戻れない事を知ると、大いに嘆き、悲しんだ。
結局その時は神が直々に謝罪し、どうにか落ち着いたものの、独自で研究を続けた者、自身が瘴気を生み出す存在へと至ってしまった者。中には割り切り、こちらの世界で幸せを見つけた者もいたが、二度と自分達のような者を産み出させないよう、どの国でも召喚の技術はこれまでの研究を含めて破棄させられた。
元々この世界の事なのだから、自分達で解決するのが筋だろうと、全ての国が同意した。
召喚されたのは、三人と、この世界にはいない猫という動物。
魔物ではないかと疑われていたが、大人しく、飼い主には従順で、危険はないと判断された。
王に引き合わされたのは、聖女と大魔法使い。
けれど、その割には感じる魔力も普通だし、精霊も全く寄り付かない。念の為にボードで鑑定させて貰ったが、称号は確かに聖女。
しかし人の寝所にまで入り込んで来るような常識知らず。
もう一人の召喚者は引きこもり等というどうしようもない称号で、会う価値はないと言われたが、生活の保証はしていくと。
そうは言われても、確認はせねばなるまい。
しつこく言い寄る聖女から逃げたかったのもあるが、図書室にそのもう一人が良く出入りしていると聞き、そっと様子を見た。同じ年齢だと聞いたが、見かけも素朴で、随分と幼く見えたのは、煌びやかな衣装を纏っていないせいか。
けれど、多くの微精霊が周囲にまとわりついていて、煩わしくはないのかと思ったが、本人には見えてなさそうだ。
聖女は確かに召喚された…その事実を嬉しく思いながらも、間違った称号が付いて、称号に付随するスキルも聖女の物ではない。
気にはなったが、この城を出て行きたい、あの二人からは離れたいという意思を叶えてやりたいと思った。
猫という生き物も、主人である彼女を守る気でいるみたいだし、もしかすると何らかのスキルが与えられているかもしれない。
本当ならそのまま聖女に同行したかったが、生憎厄介な案件をこなさなければならない。
聖女の自覚がない彼女を守護する言い訳も思い付かずにとりあえず、目印を渡して仕事をこなしたら合流する事に決めた。
本当はそう時を置かずに合流出来る筈だったが、ガリオンの惨状を知り、そちらの対応にも時間を割かれた。
魔の森が焼かれた割には瘴気が溢れていないのは、この地に少し前まで聖女がいて、精霊が増えていたお陰か。
それでも、限界は来るだろう…元聖女と魔法使いの娘達は性懲りもなく自分達を助けるように要求してきたけど、犯した罪から考えれば即処刑とならないのが不思議な位だ。
恐らくは聖女の祈りに期待しているんだろうが、称号が消えた今、効果は期待出来ないだろう。
主に夜になると消える発信の魔道具の事も気になるが、とにかく距離を縮めなければ。
久し振りに会った聖女サヤカには驚かされた。この地の守護に付いている聖獣、エンペラーバードアルクを従魔にしていた。
新たなスキルも得て、規格外の力を持つスキルを持っているのに、本人は至って呑気だ。
本人は冒険者になりたいみたいだけど、ハッキリ言うと向いてない。
この世界で、魔物のいない世界で育ったのだから仕方がないとも言えるけれど、短剣すらまともに扱えない。
まだ、スキルの水を魔法のように扱って戦えるようにするのが現実的か。
けれど、魔力には限りがある。いざという時、戦う手段が全くないのは不安でしかない。
いくらチョコ殿やマシロがいるからとはいえ、従魔が入れない場所もある。
この分だと、最低でも自分の身を守れるようになるまでに何年かかるか…とはいえ、たかだか数年、ハイエルフにとっては僅かな時間だ。
もし時間がかかるような仕事をしなきゃいけない時は、エルフの里にでも預けるか…
場所はよりにもよってガリオン王国。神託と宝珠がもたらされた国。世界樹からその情報がもたらされ、俺は祖父である王に命じられ、ガリオン王国に入った。
この国は500年前に世界の危機が訪れた時、神より召喚の宝珠と術を賜り、喚び出された物達は、見事悪しき存在を消滅させた。が、元の世界に戻れない事を知ると、大いに嘆き、悲しんだ。
結局その時は神が直々に謝罪し、どうにか落ち着いたものの、独自で研究を続けた者、自身が瘴気を生み出す存在へと至ってしまった者。中には割り切り、こちらの世界で幸せを見つけた者もいたが、二度と自分達のような者を産み出させないよう、どの国でも召喚の技術はこれまでの研究を含めて破棄させられた。
元々この世界の事なのだから、自分達で解決するのが筋だろうと、全ての国が同意した。
召喚されたのは、三人と、この世界にはいない猫という動物。
魔物ではないかと疑われていたが、大人しく、飼い主には従順で、危険はないと判断された。
王に引き合わされたのは、聖女と大魔法使い。
けれど、その割には感じる魔力も普通だし、精霊も全く寄り付かない。念の為にボードで鑑定させて貰ったが、称号は確かに聖女。
しかし人の寝所にまで入り込んで来るような常識知らず。
もう一人の召喚者は引きこもり等というどうしようもない称号で、会う価値はないと言われたが、生活の保証はしていくと。
そうは言われても、確認はせねばなるまい。
しつこく言い寄る聖女から逃げたかったのもあるが、図書室にそのもう一人が良く出入りしていると聞き、そっと様子を見た。同じ年齢だと聞いたが、見かけも素朴で、随分と幼く見えたのは、煌びやかな衣装を纏っていないせいか。
けれど、多くの微精霊が周囲にまとわりついていて、煩わしくはないのかと思ったが、本人には見えてなさそうだ。
聖女は確かに召喚された…その事実を嬉しく思いながらも、間違った称号が付いて、称号に付随するスキルも聖女の物ではない。
気にはなったが、この城を出て行きたい、あの二人からは離れたいという意思を叶えてやりたいと思った。
猫という生き物も、主人である彼女を守る気でいるみたいだし、もしかすると何らかのスキルが与えられているかもしれない。
本当ならそのまま聖女に同行したかったが、生憎厄介な案件をこなさなければならない。
聖女の自覚がない彼女を守護する言い訳も思い付かずにとりあえず、目印を渡して仕事をこなしたら合流する事に決めた。
本当はそう時を置かずに合流出来る筈だったが、ガリオンの惨状を知り、そちらの対応にも時間を割かれた。
魔の森が焼かれた割には瘴気が溢れていないのは、この地に少し前まで聖女がいて、精霊が増えていたお陰か。
それでも、限界は来るだろう…元聖女と魔法使いの娘達は性懲りもなく自分達を助けるように要求してきたけど、犯した罪から考えれば即処刑とならないのが不思議な位だ。
恐らくは聖女の祈りに期待しているんだろうが、称号が消えた今、効果は期待出来ないだろう。
主に夜になると消える発信の魔道具の事も気になるが、とにかく距離を縮めなければ。
久し振りに会った聖女サヤカには驚かされた。この地の守護に付いている聖獣、エンペラーバードアルクを従魔にしていた。
新たなスキルも得て、規格外の力を持つスキルを持っているのに、本人は至って呑気だ。
本人は冒険者になりたいみたいだけど、ハッキリ言うと向いてない。
この世界で、魔物のいない世界で育ったのだから仕方がないとも言えるけれど、短剣すらまともに扱えない。
まだ、スキルの水を魔法のように扱って戦えるようにするのが現実的か。
けれど、魔力には限りがある。いざという時、戦う手段が全くないのは不安でしかない。
いくらチョコ殿やマシロがいるからとはいえ、従魔が入れない場所もある。
この分だと、最低でも自分の身を守れるようになるまでに何年かかるか…とはいえ、たかだか数年、ハイエルフにとっては僅かな時間だ。
もし時間がかかるような仕事をしなきゃいけない時は、エルフの里にでも預けるか…
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