巻き込まれ召喚された私は、ペットと共に穏やかに過ごしたい

あかる

文字の大きさ
上 下
6 / 35

隣国ブランへ

しおりを挟む
 乗り合い馬車は、丁度ブラン行きの人を探していた。
 定期便みたいな物で、ある程度の人数が乗れば出発するみたいで、咄嗟に金貨を払って乗ってしまった。
 料金は金貨8枚と高いけど、護衛の冒険者もつくし、仕方ないのだろう。

 良く調べもしないで乗ってしまったけど、ブランの首都まで10日もかかるみたいだ。
 なるべく遠くに離れたいとは思っていたし、良かったと思おう。

 それにしても、マントを買ったのは正解だったな。丸めてクッションの代わりになったし、長く丸めておけば、少しの間なら、私の代わりにもなる。マシロにこっそり会いに行ってもばれなかった。
 勿論夜の間だけだし、スキルがバレるのが怖いから、長い時間は無理だったけどね。

 街道沿いの町で、買い物をする機会があった。正直助かった。マシロ用のお肉が切れかけていた。
 今日は皆、宿に泊まる人が多い。
 護衛の冒険者さん達もそうだ。
「レイナちゃん、買い物終わった?」
 この旅の間に仲良くなった冒険者の少女で、成人したばかりで、ギルド登録間もないそうだ。
 まだ見習い扱いだけど、ゴブリンは、単体でなら倒せるみたいだ。
 正直、凄いと思う。
「うん!サヤカちゃんは今日は宿?」
「そうだね。あ、これさっき買ったんだけど、一緒に食べない?」
「肉串?でも…リーダーに見付かったら怒られるから…」
 護衛時の決まりとか、色々あるらしい。

「一緒に食べたいなって思ったの」
「それなら…一口だけ」
「リーダーさんには内緒でね!」
 クスクス笑いながら、醤油味の肉にかぶりつく。
「コッコの皮がパリパリしてる!」
「ジューシーで美味しいね!…レイナちゃんは魔物が怖くない?」
「まだ大型の魔物とかは戦った事ないけど、家族で冒険者やってるからね」

 リーダーのお父さんはとても強そうな人だ。そして、元の世界でアクション俳優なんてしてたらモテそうな人。
 この世界は結構美形率高い。レイナちゃんも、暗いピンク色の髪に、健康そうに日焼けした肌が良く似合っている。
「私も、落ち着いたら冒険者になる予定だから、負けないように頑張ろう!」

「サヤカちゃん、ギルド登録は15歳にならないと出来ないんだよ?」
「私はもう、15歳だよ?」
 元の世界ではバイト位しか出来ないだろうけど、ここでは成人だもんね。
「またまたー。ギルドではちゃんと調べられるから、虚偽の申告は出来ないんだよ?」
 それなら、多少子供っぽく見えても登録は出来るね。

「にゃー」
 ドアを開けると、マシロのお出迎え。
「というか、何かマシロ、大きくなってない?長毛種だから?」
 多めに買った肉串の、串を外してお皿に移す。
「分かった。ここにはネズミも出ないし、ずっとベッドで寝てるから大きくなったんでしょ」
 こっちの世界に来てから、随分大きくなった…柴犬超えてない?野良だから種類は分からないけど、大きくなる種類なのかな。
 肉を食べ終えたマシロが私を見上げる。
「お代わり?食べ過ぎも良くないよ?でも、猫カリカリもないから適正量は分からないんだよね」

 もう1本追加で出してやり、今日買える物をチェックする。
「レタスか…旅の間は野菜不足になりがちだし、買おう」
 宿場町に寄れない時は、硬いパンと干し肉、小腹が空いてもドライフルーツやナッツをちょっと食べる位だ。

 私はアイテムボックスがあるし、それもかなり大きく、時間も停止するからそんな侘しい食事をする必要もないけど、何となく他の人に合わせて食べている。
 しょっぱいから水も結構欲しくなるけど、水スキルのお陰で困っていない。

 水のスキルは役に立った。10人程の人がいたけど、生活魔法の水が使える人がいなかったから。
 クリーンを使える人もいなかったので、水は有難がられた。
 ただ、水は遠慮なく貰う人達も、クリーンには遠慮がちになる。
 同じ生活魔法でも、クリーンの方が魔力を使うし、使える人も少ないからなのか。

 レイナちゃんのパーティーには魔法使いのお姉さんがいて、その人に頼んでお互いにかけあうという形で、クリーンをかけてもらった。
 うん…確かに違う。プロとの差なのか、爽やか感が違う。
「こういう物は慣れよ。訓練次第で魔法は上手になるものだから」

 私は初心者だし、魔法なんてない世界から来たけど、ラノベのお陰でイメージの方はちゃんと出来ていると思う。
 毎朝10分位は瞑想と魔力操作をしてるらしい…なら、私も今まで以上に頑張ろう。自分にかける以外は、マシロにかける位だからね。

 お金は要らないので、練習にクリーン掛けさせて下さいって言ったら、何やら微笑ましい顔でみんな頷いてくれた。
「魔力切れには注意してね」
 魔力が切れると気絶するらしい…魔法を教えてくれた先生によると、私の魔力は多いみたいだけど、数字で見える訳じゃないからね。

 気持ち程度で、銅貨を貰った。何故か頭を撫でられたけど、子供じゃないんだけどな。

 馬車は国境を越え、目的地に着いた。首都はまだ先だけど、下手に都会に行くつもりはない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...