巻き込まれ召喚された私は、ペットと共に穏やかに過ごしたい

あかる

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国外へ

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 ゆかりに寝取られた王子様には当然、婚約者がいたみたいだ。
 婚約破棄して王子様との結婚を狙ったみたいだけど、そう簡単にはいかないみたい。
 侯爵家の令嬢が次代の王妃になる事は決定していて、あの王子様は実は王太子に決まっていなかったみたい。

 現時点で王様に何かあった時には王弟のキルリア様が王様になるし、禁を破って召喚の儀式をした人が、次の王様になんてなれないよね。
 今の王様には息子が一人しかいなかったし、それもあって結構我が儘に育ったみたい。
 キルリア様のお子様には男の子二人と女の子がいるけど、まだ成人はしてないし、となるとゆかりが王子様狙ってても、王妃様にはなれないよね。
 愛人になるって選択肢はあるだろうけど、そんな立場で納得する人じゃないし…まあ、私には全く関係ないよね。

 そんな微妙な立場なのに、ゆかりはエルフの特使に体の関係を迫ったみたいで、それが今、結構な問題になってる。
 こうなれば、今出来るだけの知識を書き留めて、混乱に乗じて脱出を…なんて、簡単にはいかないだろうな。

 気配隠蔽を使って部屋から出たけど、グレンさんに速攻で見つかった。
 まあ…気配がなくても、ドアが開けば分かるよね。それに、騎士の人に取れたばかりの気配隠蔽のスキルが効くとは思えない。何か見破る系のスキルを持っていてもおかしくない。
「図書室に行ってきます」
「では私はその間、少し抜けますね」

 本を読んでいる間はかなり暇になるからね。それに、誰もが図書室に入れる訳でもない。
 授業で習った事や、調べた事等を書き留めたノートを持って、数冊の本を手に、お気に入りの場所に座る。

 今回もスキルを中心に、魔物から取れる素材、魔道具の本も入れている。
 マシロはいつもこの時間は寝てるから、置いてきた。

 戦闘系スキルは、戦いながらの方が、習得しやすい。
 というか、そもそも武器を持っていないと駄目だよね。
 日本人だからか、剣を持つ事には抵抗がある。けど、この世界の人は一般人でも何らかの武器を携帯している。

 流石に街中までは魔物は入って来られないけど、外に出れば別だ。
 スキルの水は、まだ上手く使う自信がないし、先の買い物の時、護身用の武器を買っておくべきだったかな。

「今日も勉強?熱心だね」
 言いながら、向かいの席に疲れたように座る。
「生活がかかってますから」
「…本当に、同じ世界から来たとはとても思えないよね…」
 一緒にされたくないし、ゆかり達が来なければ、今頃私は普通の高校生だったのに。
 いや、王子様が召喚したのが一番の原因か。

「あなたの顔が、ゆかりの好みにバッチリ合ってるんですよ。ええと、王孫の…」
「アーシェルムレイン」 
「ええと…アーシェル何とか様?」
「何とかって…君達には俺の名は発音し辛いみたいだね。アッシュでいい。サヤカ…でいい?」
「はい!」
「うん。サヤカは城外に出たいんだよね?」
「勿論。ただ巻き込まれて召喚されただけの私がここにいるなんておかしいし、どこかの田舎でマシロを思いっきり遊ばせてあげたいです。あー…でも魔物がいるんですよね。冒険者を目指すのもいいですし、何とかなります」

「それがあなたの望みなら。突然だが、明日なんてどうだ?丁度次の場所に行く所だし、その程度の気配隠蔽では、城門を抜けるのは難しいだろう」
 ああ…やっぱり。
「私は嬉しいですけど、いいんですか?」
「構わないよ。それに、聖女の自由を守るのは、世界の為になる事だから…一国で利益を独占してもいい物ではない」
「聖女って…私は引きこもりですよ?それにゆかりは王子様がいるこの国から離れないと思いますし」

「それで、どうする?」
「本当に協力してくれるんですか?アッシュ様に迷惑がないのであれば、馬車に乗れる所まででいいので」
「そう。俺としても助かるな。次の予定も決まってるから」
 何かの気紛れなのか、召喚に巻き込まれた私に同情してくれたのかは分からない。自力で抜け出す事が困難なのだから、助けてもらおう。マシロはスキルの中で我慢してもらうしかないけど、お肉はそれなりに入ってるし、隙を見て世話をするようにすれば、何とかなるかな?

 次の日。出来るだけの準備をして、アンさんとグレンさん、キルリア様にお礼と謝罪の手紙を書いて、ソファーの隙間に挟んだ。
 約束の場所に行くと、アッシュ様もマントを羽織って準備万端の装いでいてくれた。
「気配隠蔽は使って、何があっても声は出さないで」
 頷いて、立派な馬車に乗ったら、ゆかりと愛理の声が聞こえた。
「レイン様!聖女である私がどうしてもと頼んでも行ってしまわれるのですか?」

 私は窓から見えないように、足元にこっそり隠れた。
「聖女、ね。称号がそうなだけですよね?せめてこの国の民に認められる位でないと。勿論、称号大魔法使いのあなたも。それと、私の名を略して愛称のように呼ぶのを許した覚えはない」
「大使殿、聖女様達にはこれから色々と覚えて頂いて、時が来れば必ず巡礼の旅に出せるようにして行きます。今回のご無礼も、何卒ご容赦を」

「ガリオンの王よ。次はない」
 …うわ。アッシュ様が別人みたい?私には気さくに接して下さったのに。

 いつバレるかと心配で、顔も上げられなかったけど、城門でも止められる事はなかった。
「もう、座って平気だよ。町に抜けたから…そうだ。昨日渡すのを忘れてたけど、これを渡しておくね。守護の付与もかけてあるから、アイテムボックスには入れないで、出来れば身に付けて」

「えっ…でも宝石付いてるし、こんな高価そうな物受け取れません!」
「俺の用事が済んだら合流しよう。その時まで預かっておいて」
「でも、盗まれたりしたら…」
「冒険者のタグを付けたら、一緒に紐に通して服の下にでも入れておけば大丈夫だよ…ほら、ギルドに着いたよ。ここからなら、馬車で好きな所に行けるよ」

 押し切られる形で馬車から下ろされてしまった…最後にお礼のつもりで頭を下げた。

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