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召喚

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    いよいよ最終学年に入ったある日の事。わたくしは陛下からお父様も一緒に王城へ召喚されました。

    疚しい事などないので、堂々と行きますわ。
    驚いた事に、アージェ様やそのお父上であるホロス男爵、アベル殿下、そしてキルヴィス殿下もいらっしゃいます。
    てっきりわたくし達だけだと思っていたので、これには驚きましたわ。

    こんな場でもアージェ様は変わりませんわ…キルヴィス殿下を目を輝かせて見ています。

「さて、アベルよ。まず問おう。スカーレット嬢に対して婚約を迫ったようだな?何故だ」
「それは、アージェがそうしろと…」
「ちょっと待ってよアベル!それはイベントの為なのよ!」

    許されていないのに発言するなんて…男爵様も顔を青くしていますわ。

「…そのイベントとは何だ?」
「それは、アベルが私を選んでスカーレットに婚約破棄をするイベントです!なのにどうしてか、アベルはスカーレットと婚約してないって言うし」

    陛下は額に手を当てて疲れたような表情をなさった。きっと報告は受けていたのでしょうが、ここまで酷いとは思わなかったに違いありません。

    しかも婚約破棄する為に婚約する?訳が分からないわ。

    実はあれから何度も婚約を迫られたのです。わたくしにはキルヴィス殿下がいらっしゃるというのにしつこく。

「理由は?」
「だから、イベントの為ですってば!未来の王妃を虐めたんですから、当然の報いよね!それで、国外追放の後は隣国で幸せになられても悔しいから、殺されちゃうんですよ。お約束回避です!」

「アージェ?俺が王位を継承する事はないんだけど?」
「大丈夫よ、アベル…側妃様の策略で、アベルが王様になるの!そして私は王妃様!」

「兄上、ここまでの情報をどうやって集めたか、問い質す必要がありますね。ホロス男爵?」

「わ、私は何も…王城に入る事すら許されていない私には、何も分かりません…娘の非礼は申し訳ございません。教育が行き届いていませんでした!」

「もうお父様!私は何も悪くないんだから、謝らなくてもいいのよ!悪いのはみんな悪役令嬢なんだから!」

「…その悪役令嬢というのは何なのだ?スカーレットを指して言ってるようだが」
「そうよ!ねえ、あなたのお名前は何ていうの?とても素敵な方ですね!」

「いいから、質問に答えろ」
「そんな怖いお顔しないで!私はヒロインなの。みんなに愛されて、幸せになる為に転生して来たのよ!」

    話しが全く噛み合わないわね…キルヴィス殿下も困っていらっしゃるわ。
「取り敢えず牢に入れておけ。スカーレット嬢は大変な思いをしたようだ」

「誠に申し訳ございません!王子殿下や公爵令嬢への無礼、私はいかようにして償いをすればいいか見当もつきません!」

「…ふむ。アベルよ。あの娘が好きなのだろう?ならば廃嫡してやるから結婚すればよい。無論、取り調べが済んでからだが」
「は…廃嫡?!何故!」
「あの娘の口車に乗せられて貶めるような噂を流し、そうしておきながら婚約を迫るなど、言語道断だ」

「それは、スカーレットがアージェを虐めたから」
「公爵令嬢が男爵令嬢を虐めて何の罪になるのだ?それに、そのような報告はない。あの娘には虚言癖があるようだし、まんまと騙されるお前も悪い」

「は…廃嫡された殿下を我が家で引き取れと?」
「それがせめてもの罪滅ぼしになるだろう」

    がくりと項垂れる男爵。だけど、お家断絶されないだけましだと思いますわ。王家から何の補償もない方を使えるようにするのは大変だと思いますが。
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