上 下
3 / 11

告白、そして新たな婚約者

しおりを挟む
    数日後、スカーレットは父に呼ばれて執務室に入った。
「スカーレット、疑う訳じゃないが、本当に天啓を受けたのか?」
「…。お母様には黙っていて下さいますか?」
「何か訳があるのだな…いいだろう。約束するよ」

   大好きな人に 隠し事をするのは辛い。でも、多分お母様は信じて下さらないだろう。

    スカーレットは、これから起こる事、そして殿下に裏切られ、殺されてしまった事を話した。
「そうなのか…実はサリアと側妃様は同じ年齢で、だから接点がある。同じく元、伯爵令嬢だし…私もサリアの友人全てを把握している訳ではないからな…スカーレットは、辛い思いをしたのだな」

    お父様は、わたくしを抱き締めて下さった。

    あの頃のお父様は、いつも忙しく働いていらっしゃったわ。…お父様ならきっと、知ればわたくしを助けて下さったわ。

「お母様は、わたくしが不幸になっても良いと思っていらっしゃるのかしら」
「そんな事はないだろうが、サリアは公爵夫人としての立場に誇りを持っているからな。スカーレットにもそれを求めているのかもしれない。私は、お前の幸せを一番に考えているつもりだ。まだ早いとは思うが、スカーレットはアベル殿下以外となら、政略婚約しても良いと考えているか?」

「勿論ですわ。出来れば誠実な方が良いと思ってはいますが」
「そうか…殿下の誕生日パーティーまでにはまだ半年ある。私に任せてもらえるか?」
「はい…よろしくお願いいたします」

    そうよね…別に婚約者がいれば、アベル殿下と婚約せずに済む。どんな方でも、殺されないだけましだと思わなきゃ。

    それに、お父様が選んで下さった方なら、間違いないわ。何しろいずれは女公爵として立ち、ガゼル領を継ぐわたくしを補佐せねばならない方なのですから。

    あれから約一月後。わたくしはお父様に連れられて、陛下とかなり年齢の離れた弟君、つまりは王弟殿下の屋敷に行く事になりました。
「まさか、お父様がお決めになられたのは、キルヴィス殿下ですの?」
    キルヴィス殿下はわたくしより七つ年上で、現在12歳。王位継承権も当然持たれている。勿論、順位的には王子達の下になるが。

「無論、お受け頂ければな。これならサリアも文句は言えまい」

    キルヴィス殿下は前の時は、確か宰相を務められていたわ。大変優秀な方でしたと…でも、確か独身で、女性嫌いとの噂もあった方ですわ…大丈夫かしら?

    陛下が即位されてからは独立して、こちらのお屋敷に住むようになられたのですわ。

    広さこそ王宮には及ばないけれど、要人を迎える事もあるここのお屋敷は、王宮にも劣らぬ調度品が設えられていて、品の良さが伺えます。
    キルヴィス殿下は金の髪と色素の薄いアイスブルーの瞳を持っていて、まるで値踏みするかのようにその瞳を鋭くされた。

    殿下は5歳の娘には答えられないような話題も振ってこられて、でも王子妃教育も終えていたわたくしに答えられないはずはありません。
    驚いたようにわたくしを見つめられましたが、試されているのであろう事はすぐに分かりましたわ。
    ならばとこちらも知的な話題を提供すると、嬉しそうな笑顔を浮かべて、褒めて下さいました。

    アベル殿下には褒められた事など一度もなかったので、わたくしは嬉しくなりました。

    無事に婚約を結ぶ事も出来て、わたくしは肩の荷が降りた気分になりました。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

死に戻るなら一時間前に

みねバイヤーン
恋愛
「ああ、これが走馬灯なのね」  階段から落ちていく一瞬で、ルルは十七年の人生を思い出した。侯爵家に生まれ、なに不自由なく育ち、幸せな日々だった。素敵な婚約者と出会い、これからが楽しみだった矢先に。 「神様、もし死に戻るなら、一時間前がいいです」  ダメ元で祈ってみる。もし、ルルが主人公特性を持っているなら、死に戻れるかもしれない。  ピカッと光って、一瞬目をつぶって、また目を開くと、目の前には笑顔の婚約者クラウス第三王子。 「クラウス様、聞いてください。私、一時間後に殺されます」 一時間前に死に戻ったルルは、クラウスと共に犯人を追い詰める──。

婚約破棄イベントが壊れた!

秋月一花
恋愛
 学園の卒業パーティー。たった一人で姿を現した私、カリスタ。会場内はざわつき、私へと一斉に視線が集まる。  ――卒業パーティーで、私は婚約破棄を宣言される。長かった。とっても長かった。ヒロイン、頑張って王子様と一緒に国を持ち上げてね!  ……って思ったら、これ私の知っている婚約破棄イベントじゃない! 「カリスタ、どうして先に行ってしまったんだい?」  おかしい、おかしい。絶対におかしい!  国外追放されて平民として生きるつもりだったのに! このままだと私が王妃になってしまう! どうしてそうなった、ヒロイン王太子狙いだったじゃん! 2021/07/04 カクヨム様にも投稿しました。

私が妻です!

ミカン♬
恋愛
幼い頃のトラウマで男性が怖いエルシーは夫のヴァルと結婚して2年、まだ本当の夫婦には成っていない。 王都で一人暮らす夫から連絡が途絶えて2か月、エルシーは弟のような護衛レノを連れて夫の家に向かうと、愛人と赤子と暮らしていた。失意のエルシーを狙う従兄妹のオリバーに王都でも襲われる。その時に助けてくれた侯爵夫人にお世話になってエルシーは生まれ変わろうと決心する。 侯爵家に離婚届けにサインを求めて夫がやってきた。 そこに王宮騎士団の副団長エイダンが追いかけてきて、夫の様子がおかしくなるのだった。 世界観など全てフワっと設定です。サクっと終わります。 5/23 完結に状況の説明を書き足しました。申し訳ありません。 ★★★なろう様では最後に閑話をいれています。 脱字報告、応援して下さった皆様本当に有難うございました。 他のサイトにも投稿しています。

愛するひとの幸せのためなら、涙を隠して身を引いてみせる。それが女というものでございます。殿下、後生ですから私のことを忘れないでくださいませ。

石河 翠
恋愛
プリムローズは、卒業を控えた第二王子ジョシュアに学園の七不思議について尋ねられた。 七不思議には恋愛成就のお呪い的なものも含まれている。きっと好きなひとに告白するつもりなのだ。そう推測したプリムローズは、涙を隠し調査への協力を申し出た。 しかし彼が本当に調べたかったのは、卒業パーティーで王族が婚約を破棄する理由だった。断罪劇はやり返され必ず元サヤにおさまるのに、繰り返される茶番。 実は恒例の断罪劇には、とある真実が隠されていて……。 愛するひとの幸せを望み生贄になることを笑って受け入れたヒロインと、ヒロインのために途絶えた魔術を復活させた一途なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25663244)をお借りしております。

愛しているなら何でもできる? どの口が言うのですか

風見ゆうみ
恋愛
「君のことは大好きだけど、そういうことをしたいとは思えないんだ」 初夜の晩、爵位を継いで伯爵になったばかりの夫、ロン様は私を寝室に置いて自分の部屋に戻っていった。 肉体的に結ばれることがないまま、3ヶ月が過ぎた頃、彼は私の妹を連れてきて言った。 「シェリル、落ち着いて聞いてほしい。ミシェルたちも僕たちと同じ状況らしいんだ。だから、夜だけパートナーを交換しないか?」 「お姉様が生んだ子供をわたしが育てて、わたしが生んだ子供をお姉様が育てれば血筋は途切れないわ」 そんな提案をされた私は、その場で離婚を申し出た。 でも、夫は絶対に別れたくないと離婚を拒み、両親や義両親も夫の味方だった。 ※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

振られたから諦めるつもりだったのに…

しゃーりん
恋愛
伯爵令嬢ヴィッテは公爵令息ディートに告白して振られた。 自分の意に沿わない婚約を結ぶ前のダメ元での告白だった。 その後、相手しか得のない婚約を結ぶことになった。 一方、ディートは告白からヴィッテを目で追うようになって…   婚約を解消したいヴィッテとヴィッテが気になりだしたディートのお話です。

好きにしろ、とおっしゃられたので好きにしました。

豆狸
恋愛
「この恥晒しめ! 俺はお前との婚約を破棄する! 理由はわかるな?」 「第一王子殿下、私と殿下の婚約は破棄出来ませんわ」 「確かに俺達の婚約は政略的なものだ。しかし俺は国王になる男だ。ほかの男と睦み合っているような女を妃には出来ぬ! そちらの有責なのだから侯爵家にも責任を取ってもらうぞ!」

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。

緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」  そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。    私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。  ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。  その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。 「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」  お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。 「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」  

処理中です...