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享年12歳
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とある田舎町の一角。周囲には商店が立ち並ぶも半分は空き店舗だ。
小学校を卒業して、念願のスマホを手に入れた秋野稔は、友人の家に急いでいた。
役場前の交差点。押しボタンの信号機の前には、犬を連れたおばさんが一人。見知った顔だったので、稔は軽く頭を下げた。
車の通りは少ないが、カーブになっている為、見通しは悪く、車の数も通行人も少ない通りでは、大体の車が飛ばしている。
「チビ、ぽちゃぽちゃだねー」
言いつつ、首の脇をかいかいしてやると、首を伸ばして後ろ足でエアーかいかいするチビ。
「陽太君は今年就職ね。本当にあっというま」
陽太と花香。稔の兄弟だ。高卒で就職する兄と、2つ上の姉は、最近漫画を書いている。ちょっと恥ずかしい漫画だけど、手伝わされたりする。
信号が変わったので、車道に出た…カーブで見えていなかったのか、高速で走る車が一台。
そりゃ、運動神経は悪い方だったけど、迫りくる車を見ても驚きで全く動けなくなるなんて…
お姉ちゃんの、どこに出しても恥ずかしい漫画、今日も手伝う筈だったのに…
沈んでいた意識がフッと覚めた。
えっ…ここはどこ?!外人のお兄さんが見える…って、私、生きてたの?!
「あー。まだ終わってないから寝てて欲しかったんだけどな…説明面倒だから、後でいいか?」
へ?ここがどこか位教えてくれても良くない?痛くない…って事は、軽症で済んだって事?
「いや?死んだぞ。秋野稔。ちょっと頼みたい事があってさ、体は作り直すから」
じゃあ…私は、やっぱり…あれ?でも死んでも意識ってあるものなの?
「ちっ…いいからちょっと、寝ててくれない?」
面倒臭そうに言う言葉を聞いた稔の意識は、ふつりと閉ざされた。
はっと目を覚ますと、さっきの外人さんがいた。
「夢…じゃない?体も動く…あの、あなたは誰で、ここはどこですか?そもそも日本語は…」
「ここは俺の空間。で、俺は隣の世界の神、トーラスだ。トールでいいぜ?ミノリには、滅びかけてる世界を再生して欲しい」
「ちょ…何なの?神様とか自分で言う?痛い人なの?」
「いいからまずは信じろよ。ここはバルスって世界だ。
ここに邪神が乗り込んできて、俺が昔世話になったホトスという神を消滅させてしまった。
邪神は俺の管理する世界から連れてきた男に倒してもらったんだが、倒すだけ倒したら、さっさと帰っちまった。
で、主神のいない世界は放っておけば間違いなく滅びる。
だから、ミノリにはそこを再生して欲しいんだ」
「え…無理!どうせ魔物とかいるんでしょう?戦うとか無理だし」
これは、まさか今流行りの異世界転生?!いや、生き返ったのは嬉しいけど。
「確かにいるけど、生き返らせたんだから、少しは妥協してよ」
「そ…そうかもだけど、地球には帰れないの?」
「あのさ…君は死んだんだよ?もう遺体は火葬されてるし、それが復活したらホラーでしょ。出来る限りサポートはするし、ミノリなら出来る…と、信じている」
いや、目を微妙に逸らして言ってる時点で、信じてないでしょ。
というか、トールって神様に見えない。近所のお兄さん的な?顔はイケメンだけど。
「失礼な奴だな。俺はここの隣の世界の主神だぞ?…で、サポートの為にこれを利用した」
「あっ…!私のスマホ!」
「外側だけな。取り敢えず1万ポイント振り込んでおいたから、スキルとか適当に取って、武器防具を揃えろよ?
ポイントは、行動によって増えるから、色々試してみるといい。それと、ここの空間はミノリにやる。ここがあれば生活は出来るだろ?」
ほんのり明るい空間には今寝てた大きなベッドと、作業台みたいな大きな机。その他にも立派な机と椅子、後ろには本棚もある。
屏風みたいな間仕切りで区切られた向こう側には、台所や風呂も見える。
寝転がれる程大きなソファーの前には、テーブルと、ポットが置いてある。
「外に出るのはそこの扉だ。じゃあな、頑張れよ」
それだけ言って、トールは消えた。
取り敢えず外を見てみようかな?異世界なんて、凄く興味深い。
見渡す限りの荒野だ。そこに、水色の髪の妖精?と、何気に可愛いモグラがいた。
「使徒様、待っていたのです。私は水の精霊のアクア。水魔法をかけて下さい」
「僕はノーム。土の精霊だよ。魔法習得が契約の証だよ」
「えっ…精霊?魔法?」
何それ…この子達は魔物とかじゃなくて、精霊?
「え?この子何も分かっていない?まさか間違えたのか?」
「あの…使徒様、ですよね?バルスを救って下さる」
「ええと…トールはさっき、そんな事を言ってたけど…あ、スキルがどうのとか言ってたっけ…」
スマホのスイッチを押すと、スキルのアイコンがあった。
他にはマップや買い物アイコン?上の数字がポイントだろう。
取り敢えずスキルを押すと、オススメのスキルで、アイテムボックスと、鑑定のスキルがあった。ポイントはどちらも500だ。異世界物では定番のスキルだし、どちらもすぐに買った。
魔法を検索すると、水と土の魔法は確かにあったので、買った。
ピコンと電子音が頭の中で鳴り、声が聞こえた。
『 土の精霊ノームと契約しました。ポイントが千加算されます』
おお。親切だ。あとは水魔法だね。
だけど、どうやって使うのか分からない。
「ねえアクア、魔法ってどうやって使うの?」
「まずは魔力操作で魔力を感じて下さい。あとはイメージです」
呪文じゃないんだ…良かった。
因みに魔法は一つ50ポイント、魔力操作は、僅か10だった。
魔力を意識すると、心臓の辺りが暖かくなった。魔力って、暖かいんだね…
蛇口をひねって水を出すイメージをすると、手のひらから水が出たので、アクアにかけてやる。
「とても美味しいです。使徒様」
「その、使徒様っていうのやめて?様付けされる程偉くないし。ミノリでいいよ」
『 水の精霊アクアと契約しました。ポイントが千加算されます』
「トールも不親切だな。精霊の事とか何も言ってくれなかったよ」
ステータスとかもあるんだろうか?
「ステータスオープン…おお…」
ミノリ レベル1
管理者代行 導き手 人族
アクティブスキル
魔力操作 土魔法 水魔法
パッシブスキル
物理耐性 料理
異世界神トーラスの加護
小学校を卒業して、念願のスマホを手に入れた秋野稔は、友人の家に急いでいた。
役場前の交差点。押しボタンの信号機の前には、犬を連れたおばさんが一人。見知った顔だったので、稔は軽く頭を下げた。
車の通りは少ないが、カーブになっている為、見通しは悪く、車の数も通行人も少ない通りでは、大体の車が飛ばしている。
「チビ、ぽちゃぽちゃだねー」
言いつつ、首の脇をかいかいしてやると、首を伸ばして後ろ足でエアーかいかいするチビ。
「陽太君は今年就職ね。本当にあっというま」
陽太と花香。稔の兄弟だ。高卒で就職する兄と、2つ上の姉は、最近漫画を書いている。ちょっと恥ずかしい漫画だけど、手伝わされたりする。
信号が変わったので、車道に出た…カーブで見えていなかったのか、高速で走る車が一台。
そりゃ、運動神経は悪い方だったけど、迫りくる車を見ても驚きで全く動けなくなるなんて…
お姉ちゃんの、どこに出しても恥ずかしい漫画、今日も手伝う筈だったのに…
沈んでいた意識がフッと覚めた。
えっ…ここはどこ?!外人のお兄さんが見える…って、私、生きてたの?!
「あー。まだ終わってないから寝てて欲しかったんだけどな…説明面倒だから、後でいいか?」
へ?ここがどこか位教えてくれても良くない?痛くない…って事は、軽症で済んだって事?
「いや?死んだぞ。秋野稔。ちょっと頼みたい事があってさ、体は作り直すから」
じゃあ…私は、やっぱり…あれ?でも死んでも意識ってあるものなの?
「ちっ…いいからちょっと、寝ててくれない?」
面倒臭そうに言う言葉を聞いた稔の意識は、ふつりと閉ざされた。
はっと目を覚ますと、さっきの外人さんがいた。
「夢…じゃない?体も動く…あの、あなたは誰で、ここはどこですか?そもそも日本語は…」
「ここは俺の空間。で、俺は隣の世界の神、トーラスだ。トールでいいぜ?ミノリには、滅びかけてる世界を再生して欲しい」
「ちょ…何なの?神様とか自分で言う?痛い人なの?」
「いいからまずは信じろよ。ここはバルスって世界だ。
ここに邪神が乗り込んできて、俺が昔世話になったホトスという神を消滅させてしまった。
邪神は俺の管理する世界から連れてきた男に倒してもらったんだが、倒すだけ倒したら、さっさと帰っちまった。
で、主神のいない世界は放っておけば間違いなく滅びる。
だから、ミノリにはそこを再生して欲しいんだ」
「え…無理!どうせ魔物とかいるんでしょう?戦うとか無理だし」
これは、まさか今流行りの異世界転生?!いや、生き返ったのは嬉しいけど。
「確かにいるけど、生き返らせたんだから、少しは妥協してよ」
「そ…そうかもだけど、地球には帰れないの?」
「あのさ…君は死んだんだよ?もう遺体は火葬されてるし、それが復活したらホラーでしょ。出来る限りサポートはするし、ミノリなら出来る…と、信じている」
いや、目を微妙に逸らして言ってる時点で、信じてないでしょ。
というか、トールって神様に見えない。近所のお兄さん的な?顔はイケメンだけど。
「失礼な奴だな。俺はここの隣の世界の主神だぞ?…で、サポートの為にこれを利用した」
「あっ…!私のスマホ!」
「外側だけな。取り敢えず1万ポイント振り込んでおいたから、スキルとか適当に取って、武器防具を揃えろよ?
ポイントは、行動によって増えるから、色々試してみるといい。それと、ここの空間はミノリにやる。ここがあれば生活は出来るだろ?」
ほんのり明るい空間には今寝てた大きなベッドと、作業台みたいな大きな机。その他にも立派な机と椅子、後ろには本棚もある。
屏風みたいな間仕切りで区切られた向こう側には、台所や風呂も見える。
寝転がれる程大きなソファーの前には、テーブルと、ポットが置いてある。
「外に出るのはそこの扉だ。じゃあな、頑張れよ」
それだけ言って、トールは消えた。
取り敢えず外を見てみようかな?異世界なんて、凄く興味深い。
見渡す限りの荒野だ。そこに、水色の髪の妖精?と、何気に可愛いモグラがいた。
「使徒様、待っていたのです。私は水の精霊のアクア。水魔法をかけて下さい」
「僕はノーム。土の精霊だよ。魔法習得が契約の証だよ」
「えっ…精霊?魔法?」
何それ…この子達は魔物とかじゃなくて、精霊?
「え?この子何も分かっていない?まさか間違えたのか?」
「あの…使徒様、ですよね?バルスを救って下さる」
「ええと…トールはさっき、そんな事を言ってたけど…あ、スキルがどうのとか言ってたっけ…」
スマホのスイッチを押すと、スキルのアイコンがあった。
他にはマップや買い物アイコン?上の数字がポイントだろう。
取り敢えずスキルを押すと、オススメのスキルで、アイテムボックスと、鑑定のスキルがあった。ポイントはどちらも500だ。異世界物では定番のスキルだし、どちらもすぐに買った。
魔法を検索すると、水と土の魔法は確かにあったので、買った。
ピコンと電子音が頭の中で鳴り、声が聞こえた。
『 土の精霊ノームと契約しました。ポイントが千加算されます』
おお。親切だ。あとは水魔法だね。
だけど、どうやって使うのか分からない。
「ねえアクア、魔法ってどうやって使うの?」
「まずは魔力操作で魔力を感じて下さい。あとはイメージです」
呪文じゃないんだ…良かった。
因みに魔法は一つ50ポイント、魔力操作は、僅か10だった。
魔力を意識すると、心臓の辺りが暖かくなった。魔力って、暖かいんだね…
蛇口をひねって水を出すイメージをすると、手のひらから水が出たので、アクアにかけてやる。
「とても美味しいです。使徒様」
「その、使徒様っていうのやめて?様付けされる程偉くないし。ミノリでいいよ」
『 水の精霊アクアと契約しました。ポイントが千加算されます』
「トールも不親切だな。精霊の事とか何も言ってくれなかったよ」
ステータスとかもあるんだろうか?
「ステータスオープン…おお…」
ミノリ レベル1
管理者代行 導き手 人族
アクティブスキル
魔力操作 土魔法 水魔法
パッシブスキル
物理耐性 料理
異世界神トーラスの加護
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