上 下
155 / 166

取り敢えずの対策として

しおりを挟む
    とはいえ、私一人に出来る事なんて、限られている。

    島の寒さをどうにか出来ないかと思って、結界やら色々やってみたけど、結界を張っている間、私が動けなくなっちゃったら、本末転倒なんだよね。

    それに、長年暮らしている彼らなりに色々対策はされていて、隙間のない住居には燃焼石の入った壺もあるし、温風の出る魔道具もある。

    勿論服装は例のヌメヌメエキスを上手く使って、ヒー〇テックのように暖かい。
「それでも、育たない野菜の方が多いだろうし、ダンジョンで全て賄えるはずもないですよね?」

「そうですね。服等は作れないですし、そういう物は、偽装の魔道具を使ってまとめて買いに行ってますよ」
「外見的特徴はその耳だけだと思うから、それさえ見せなければ、変にびくびくするより堂々としてた方が目立たないんじや?」

「それでも…幼い頃から寝物語として人族の恐ろしさは聞かされてきたので」
    悪い人ばかりじゃないし、エルフ族の事を知らない人もいると思うけど。
    それでも、絶滅寸前まで追い詰められた恐怖を取り除くのはいい面も悪い面もあると思う。

    勿論、私が農園で採れた食料を支援する事も出来るけど、私が来られなくなったら?年取っておばあちゃんになったら…

    …ん?そうか…農園か。
    私の力でスマホを創り出せれば…検索機能は付けられなくても、この世界の物しか育てられなくても、充分に役に立つ。
    出荷先はこの天空の塔ダンジョンで設定してもいい。

    蚊とかウツボカズラとか、魔力や血を冒険者から掠めとれるから、運営は上手く行ってる。でも、スマホからの出荷でリンクさせて運営は…どうなのかな?
    それ以前に、いくらイメージしても、精密機械を創り出せるか自信ないな…

    それに、スマホのスキルは私の個人スキルなんだよね。

    一旦亜空間に戻り、板にスイッチが一つ付いた物をイメージして創ってみる。

    …データの引き継ぎは、無理だな…勿論一人しか入れないし、複数人スイッチに登録するのも無理。
    外部に魔力登録は…今の私には…

    ふわふわとした優しい光に気がついて、目が覚めた。
「メイ、起きたの」
「フレイム…私、寝ちゃってた?」
「みんな心配したの。大丈夫?」
「うん…平気」
    力尽きたのだろう。魔力とはまた違うので、魔力枯渇による弊害もなさそうだ。

    どのみち、今日は動くのは無理そうだ。
    なら、取説…攻略本を書こう。いきなりスイッチだけ渡されても、困るだけだし、ゲームだという事も理解出来ないだろう。

「メタル、一緒に中に入ってチェックして貰っていいかな?」
(まさか…それがスマホなのですか?)
「さすがにスマホとは呼べないかな。農園のゲームしか出来ないし」

    中に入ると、まるっきりの初期状態だ。これは想定内。メタルにも動いて貰い、あちこち確認して貰う。
(閉ざされた、主の魔力空間。それは一緒ですね。森にも入れるようです)
    農具一式もボロのままだ。
    カブの種も持っている。蒔いておけば、明日には実るだろう。

    武器屋もあるから、依頼すればインゴットにして貰えるし、製作台を買えば魔力でオート作成も出来る。私はその辺は使わなかったけど。
    カブの種は蒔いてみたから、これが明日出来ていれば成功だ。

    これはスマホじゃなくてスイッチだけど、加護で与える時はスマホでも大丈夫。
    
    農園から出たら、入った時の状態と変わっていた。
「にゃー!何があったにゃ?すごく時間経ってるにゃ!」

    うわ…確かに。お昼食べ損ねたな…いつもの事だから、お腹は空いていないけど。
    時間を確認してみると、およそ等倍で時間が経っている。
    その辺は、私の未熟さ故の事かな…でも却っていいのかも?
    一瞬で帰って来られると時間の感覚も変わるし、精神的に辛い物があるよね…1日余計に働いた気分になる。

「ごめんね、みんな…心配かけたね。完璧にこの力を使いこなすには、まだ無理みたいだから」

    それに、まだこれで終わりじゃない。あんな日の当たらない所で暮らしていたら、心に悪い。
    空飛ぶ島に転移すればいい事だけど、寒いからね。

    でも、こればかりはいい方法もない。
    このスイッチは、出来れば量産はしたくないし。
    どのみち、スマホのスキルがないと使えないけどね。

    あとは、攻略本的な物を書かないと。
    こっちの方が厄介かな。私の字は綺麗とは言えないし、上手く書ける自信もない。

    取り敢えず出来る事と、ダンジョン等の注意点。武器や防具、アクセサリーについて。
    料理の方は是非工夫して色々作って欲しい。

    あー…書くのこれ、1日じゃ無理だわ。前世の攻略本なんて、人も殺せる厚さの物がゴロゴロしてたよね。
    写真やイラスト等を入れないにしても、かなりの厚さになりそうだ…手が痛くなりそう。

    次の日入ってみたらちゃんとカブは1日で育っていた。
    中で寝ると出ちゃうのも含めて、ちゃんと伝えないと。

    それと、一瞬では無理だけど、中にいる間は実際より長くいられるように、時間軸を調整した。
    じゃないと、複数人で使えるようにする意味がないからね。

    外部登録については、ダンジョンコアを利用する事に決めた。あのコアは、転移魔法陣とリンクしてるみたいだから、それを利用させてもらおう。

「…という訳で、こんな感じの作ってみたんだけど、どうかな?」
「凄いの、メイ」
「中は暖かいと聞くし、誰が入るかで喧嘩になるのではないか?」
「最初の頃は畑も出来る事が少ないし、仕方ない所はあるよ。でも、釣りとか全く出来る事がなくなる訳じゃないし」

「それは、神器と言えるのではないのか?それを易々と渡して良い物か」
    アロカシアの意見に、少し迷う。
    これは私が作った物だから、神器とは言えないと思うけど、機能の一部はゲームだし…野菜を取り出せるのはまずいのかな?…でもこの世界にある物しかゲームでは出ないように設定したし、私が買えるようにした?ケチャップとかも道具屋では買えない。

「まあ、全てのエルフが善人とは限らないって分かるよ。…そうだね。なら、善悪を判断する水晶も付けるよ」
    町に入る為の必須アイテムに判断してもらえばいいでしょう。

    その程度なら簡単に組み込める。
    うん…こんな所かな。
    スマホ擬きまで作れちゃうなんて、私もチートになったもんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~

あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい? とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。 犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

前世で医学生だった私が、転生したら殺される直前でした。絶対に生きてみんなで幸せになります

mica
ファンタジー
ローヌ王国で、シャーロットは、幼馴染のアーサーと婚約間近で幸せな日々を送っていた。婚約式を行うために王都に向かう途中で、土砂崩れにあって、頭を強くぶつけてしまう。その時に、なんと、自分が転生しており、前世では、日本で医学生をしていたことを思い出す。そして、土砂崩れは、実は、事故ではなく、一家を皆殺しにしようとした叔父が仕組んだことであった。 殺されそうになるシャーロットは弟と河に飛び込む… 前世では、私は島の出身で泳ぎだって得意だった。絶対に生きて弟を守る! 弟ともに平民に身をやつし過ごすシャーロットは、前世の知識を使って周囲 から信頼を得ていく。一方、アーサーは、亡くなったシャーロットが忘れられないまま騎士として過ごして行く。 そんな二人が、ある日出会い…. 小説家になろう様にも投稿しております。アルファポリス様先行です。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

処理中です...