上 下
79 / 166

飛翔

しおりを挟む
    次の週末にはアロカシアとランスが帰ってきた。
「買ってはきたが…随分高価な物だな」
「おまけにかなり並んだ」
「そうなの?」
「ああ。王都に入るのに並ぶのは仕方ない。が、この菓子は輸入品な上に希少とあって、爵位のない我らは半日程並んだ」
「それでも買えたの?」
「どうにかな」

「そっか…ありがとう。私の為に」
    二人共念入りにブラッシングしてあげた。
    何でも、それまではただ苦いだけだとして見向きもされなかったらしい。
    ただ、これからはちゃんと栽培されるだろうから、流通も価格も落ち着くだろうという事。

    オカカなんて名前だから誰も研究しなかったんじゃ…
    取り敢えず、種か苗木か分からないけど、農園で売られるかもしれないから、チョエコットのお菓子は出荷してみよう。

「そうだ。餅つき機が出来たから、お餅が作れるんだよ。ちょっと作ってくるね!」
    あれから餅米も育てられるようになったから、好きな時に作れるようになった。
    餅米粉を使った料理やお菓子は結構出荷した。
    それでもダンジョンの稲刈りは続けるつもりだ。

    スマホに入り、餅つき機の魔道具を動かして、私はメタルと海に入る事にした。

    海の中は以前とは違い、強い海の魔物も普通に出現するようになっていた。
    スマホの中ではアロカシアの加護も効かないから、慎重に食料を探している。

    アロカシアの加護は効いてないけど、他の神様の加護はちゃんと効いているんだよね…あんまり使わないけど、シュールの加護も。
    不思議だけど、神竜だけど、神様とは違うのだろう。アロカシアは神様の住んでいる所には行けないから。
    
    海の底を走るメタルは心強い。私もちゃんと戦うようにしてるけど、要らない感じだ。
    空気を必要とする私にはどうしても浮力が働くから、自在には動けない。
    メタルと共に狩りをしていたら楽しくて、気がついたら結構疲れていた。

「楽しかった。また来ようね?」
    海から上がって温泉に入り、リフレッシュをかける。
    これから色々な餅を作らないと!
    あんころ餅にずんだ餅、納豆餅にからみ餅。
    勿論雑煮やお汁粉も用意した。

    残念。海苔を使い切っていた。海苔の養殖も出来ないかな?でも、海の魔物が狂暴になったから難しいかな…まあ、いつでも買いに行けるからいいや。

    アルミネア達、喜んでくれるといいな。

    オカカの原産国を検索で調べてみた。
    アスールという、クラーク国からは随分南の島国だそうだ。
    海の魔物の攻撃に完璧に耐えられる船はない。
    大蛸とか大イカが海にはいるんだし、仕方ないと思う。

    そんな船を守るのは、鳥獣人や、羽根を持つ魔族。
    魔族は子供ができにくく、とても長寿で魔力と戦闘能力に優れている。獣人はそんな魔族の国に住み、魔族の比護下で暮らしているという。
    船を守るのは、人族から報酬を得て行っている。

    勿論、国から離れて暮らす獣人や魔族も少数ながら存在する。
    妖精族と呼ばれる人達はそれなりにいるらしいけど、まだ私は見た事ないな。

    とにかくアスールだね!行ってみたい。

    細長い米はパエリア位しか利用方法がないと思っていたけど、粘りの少ない米だから、チャーハンにも合う。
    胡椒も畑で作れるから、たっぷり使える。胡椒と醤油だけのチャーハンだ。これがまた美味しい。

    今回はこんな物かな?海で捕れた獲物は、初めての獲物は出荷箱に入れた。
    マグロは未だに一匹は入れてない。レア魚とはいえ、釣れる確率はかなり低い。

    まあ、美味しいお肉はたくさんあるから満足ではある。それに、ヌメヌメウナドン。鰻丼にすると最高に美味しい。

    スマホの外に出て、ご飯までの時間を利用して、山菜を探そうかなと思っていたら、ミノタウロス狩りに誘われた。
「ミノたんも美味しいよね!ローストビーフにでもしようか!」
「…ミノたん?」
「何となく、可愛い呼び方だと思って」
    本人?は結構凶悪だけど。

    生息地に亜空間移動して、メタルも連れていく。
    ドローンで探そうと思って、四つ位なら出せそうだと感じた。
    いい感じにスキルもアップしてるし、ちょっと実験。ドローンの魔法からスキルを使う。
    
    頭に落として、ソニックウェーブ!ふらついたミノタウロスが、呆気なく倒れた。
「実験成功!あとは普通に倒そう!」
    まあ、普通に倒そうとするとランスやメタルが呆気なく倒しちゃうんだけど。

「主、最初の一匹はどのように倒したのだ?」
「魔法から、シュガーに貰った超振動のスキルで脳ミソを麻婆豆腐にしたんだよ。流石に脳は鍛えられないかなって」

「…凄いな」
「そう?」
「ああ。その発想はなかったな。さすがに想像のスキルを他人に与えられるだけはある」
    本当は…ううん。想像でいい。でも、どうやって祝福を与えたのか見当もつかないんだよね。アロカシアも多分、眷属に出来れば想像を与える事が出来るのかもしれないけど。

    というか、アロカシアは色々凄過ぎるから、それ位しか眷属の恩恵はないかもしれない。
    鍛冶や錬金術にもアロカシアは興味ないみたいだし。

    スキルも今はたくさんありすぎて使えてないのがたくさんある。特に飛翔は…私、羽根ないし。でもランスは羽根がなくても空を駆ける事が出来るんだよね…あんまり高い所は怖いから無理だけど、飛べたら気持ちいいかもしれない。例えば魔法の翼とか。

    あ…あれ?魔法の羽根が出来たみたい!羽根を動かすと、ふわりと体が浮く。
    ずっと飛翔のスキルは気になっていたけど、魔法で補助してあげれば良かったんだね!
    魔法の羽根だから触れたりしないし、他の人には見えない。

    羽根があると安心して飛べている気がするな。
    …ううん、あんまり高い所はやっぱり無理。精々が木の高さかな。この高さなら、足場を作りつつ無理なく降りられるからね。
    もふもふに戻ったランスが、空を駆けてくる。
(大丈夫か?メイ)
(平気だよ!スキルで飛べているんだから!)


    
    
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ
ファンタジー
【異世界に召喚されましたが、間違いだったようです】 ノベルアッププラス小説大賞一次選考通過作品です ※自筆挿絵要注意⭐ 表紙はhake様に頂いたファンアートです (Twitter)https://mobile.twitter.com/hake_choco 異世界召喚などというファンタジーな経験しました。 でも、間違いだったようです。 それならさっさと帰してくれればいいのに、聖女じゃないから神殿に置いておけないって放り出されました。 誘拐同然に呼びつけておいてなんて言いぐさなの!? あまりのひどい仕打ち! 私はどうしたらいいの……!?

知らない異世界を生き抜く方法

明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。 なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。 そんな状況で生き抜く方法は?

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

処理中です...