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誘拐

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    え…?
    何がどうしてこうなっているの?護衛の人は?
    今正に、怪しい人達にどこかに連れ込まれたリア。
    常に綺麗な服を着て、髪もツインテールのドリルだし…それはあんまり関係ないか。とにかく一見してお金持ちと分かる服装だ。そんなの、狙ってくれと言ってるような物だ。

    とにかくドローンを付けておいて良かった!
(シュガー!みんなから離れて!)
    私はドローンに付いている魔力の紐を辿ってショートワープを繰り返す。
    よし!シュガーが人目から逸れた!
(眷属召還!)
    一瞬にして影の中に入ったシュガーを、見つからないように出す…シュガーの理解が追い付いてないけど、私の焦りから察したシュガーは、気配を隠蔽させて、私の後ろに付く。

    そうだ。いいものがあった。気配遮断のマント。上手く行けばリアを安全に取り返せる。
   
    私も気配隠蔽を使って、念のために私とシュガーに透明になる魔法をかける。
    実際に消えてる訳じゃなくて、後ろの景色を自分達に投影させているだけだ。
    廃墟のような小屋には男が三人。何か喋っているみたいなので、聞いておく。

    成る程。ソフィーリア嬢と知ってて拐った訳じゃなくて、やっぱり高そうな服装だから狙われた。それに、学校でこの時期は小学生達がギルド依頼をこなす事も知っている。
(殺るにゃ?)
(リアを助ける方が先だよ。シュガーはここに残ってて)
(了解にゃ)

    廃屋と思われる家にそっと侵入し、リアのいる部屋にそっと侵入した。
(リア、声を出さないで。今からロープを切って姿隠しのローブを渡すから、それを纏って)
    リアは驚いてキョロキョロしてるけど、気配を隠蔽している私に気がつく事は出来なかった。

(足音に気をつけて、外にシュガーがいるから。見張りは今の所いないから)
    リアは頷いて、息を詰めて行動するけど、床が軋む音が出てしまった。
    だけど外に出られそうだ。あとはシュガーが守ってくれるだろう。面倒そうな声を上げて部屋から出て来る男達に気が付かれる前に、リアのいた部屋に入り、気配隠蔽を解く。

「ああ?!さっきのガキと違うじゃねーか!どうなってやがる」
(こっちは大丈夫にゃ。ソフィーリアは護衛の人が見つけてくれたにゃ)
(巡回してる兵士を連れてきて!)
(ソフィーリアがやってくれたにゃ。今戻るにゃ!)

    会話しながらも、誘拐犯を気絶させていく。
    罠用のロープが役に立った。勝手に巻き付いて拘束した。
    あの蛇さんのドロップアイテムだけど、初めて役に立った。

    気がついて暴れてるけど、ロープはしっかりと巻き付いていて、離れない。巨大イカには全く役に立たなかったのに。

    間もなく現れた兵士に後を任せて、事情は説明したけど、領主様の護衛にリアが説明してるだろうし、未配達の物もあったから、代わりに配達した。

「つまり、級長として動いていたら、偶々ソフィーリアを見かけたと。シュガーは妹の、メイの姿を見て仕事から抜け出したんだな?」
「先生、シュガーはサボった訳じゃなくて」

「結果的にはな。メイ、何故単独で入った?強いのは分かっているが、魔道具があったにせよ、あまりにも無謀だ」
「…ごめんなさい」
    気配遮断のローブの事は教えた。でも、先生としては授業中に生徒に万が一の事があったら監督責任を怠った事にもなるんだろう。

「結果論だが、ソフィーリアを助けられた事に関しては感謝している。だがこれからは無茶するな?お前も俺の大事な生徒だ」

    リアは今日の所は家に戻った。自分は何て浅はかな事をしてしまったのか。
    例え授業中といえど付いてくる護衛は鬱陶しかったし、他の子は当然護衛なんていない。

    そんな当たり前の事が、クラスと自分を隔てる要因にも思えたのだ。
    両親、そしてお祖父様に心配と迷惑をかけてしまった。

    メイにも。貴族でもないのに優秀で、自分より年下で。
    不思議で堪らなかった。家庭教師に教わった訳でもないのにマナー以外は成績優秀で、初めは国の王の名すら知らないようだったのに、いつの間にか覚えてしまっていた。

    魔法に関しても、まるで宮廷魔導師のような事を言い、実践してみせた。

    とても興味深い。それに、素直になれない性格の私でも、メイは仲良くしてくれた。

    悪漢に拐われ、名前を聞かれて咄嗟に違う名を名乗ったから、家に知られるのは遅れるだろう。
    だけど直後、激しく後悔した。私の事が分からずに、奴隷として売られる可能性もある。

    不安と後悔に押し潰されそうな私を、メイはあっさりと助けてくれた。
    後から聞いた話では、メイは怪我一つなく悪漢達を捉えたとか。

    それと、メイの声が頭の中に直接聞こえたわ。あれは何だったのかしら?何らかのスキルか魔法だとは思うけれど。

    登校したら、きちんと謝らなければならないわ。お礼も…メイの事だから、高価な物より王都で流行りの美味しいお菓子の方が喜ぶかしら?

    次の日。リアは学校に来なかった。何故かボードに凄い目で睨まれたけど、何で?
「ソフィーリア様を救って下さり、ありがとうございました。私がその場にいなかった事、後悔しても仕切れません」

    睨むのにお礼は言うんだ。まあ、ボードにとっては自分の家が仕える家のお嬢様だし、自分が助けたかったのかな。
「私にとっては友達を助けただけだよ」
    それに、恨まれながらお礼言われても嬉しくない。

    大体、ボードは自分でも魔物に対処出来るからと外の子達のフォローに行ったのだ。それを逆恨みするなんて間違っている。
    睨まれたって怖くも何ともないけどね。

「ねえ?これって痴情の縺れなの?ソフィーリアさんを巡っての」
「トールってば何言ってるの?私は女の子だし」
「や、ボード君見てるとさ、それにオークにもそう見られなかったって話聞いて、実はメイは男の子なのかなって」

「トール!超失礼」
「あはは。冗談だよ。メイは可愛いよ」
「…それこそ誰にも言われた事ないんだけど」
    それこそ前世から。過保護な神様達以外は。

「メイはびっくり箱のような子だから、行動に目が行っちゃうんだよね」
    リリー、それフォローになってない。

「何にせよ、誰にも怪我がなくて良かったよ。怪我したらお姉ちゃん特製のポーションはいつも持ってるけど」
「ポーションは苦いから要らないよ…」
    薬草を擂り潰して使うから、大概のポーションは青汁味だ。

    ボードのせいで雰囲気悪くなっちゃってたけど、トールの冗談(?)で場も和んだ。

    
    
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