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実習とメイの実力

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    秋の間は、実習三昧だ。敢えて街中に限定した依頼も受ける。もう私はCランクだから、本来ならFランクの依頼は受けられないんだけど、そういう授業だから特別だ。

「どれにする?」
「私は手紙の配達にするよ。他の子のフォローもしないといけないし」
「大変だね…級長」
「それで得られるのが名誉だけとか…名誉じゃお腹は膨れないのにね」
「メイってば…」

    まあ、設営にギルドも係わっているんだから、子供のうちに、子供の出来る依頼をこなせばお小遣いが貰えると分かればこの先、依頼を受ける子供が増えるだろう。

    そういえば、先生の話ではお泊まり実習の時にオークが出たのは、森に入る冒険者が増えたからかもしれないって。
    確かにあの辺は騒がしくなった。魔物の分布図も変わってきているのかもしれない。

    肉はお店で買わないから相場は分からないけど、種類は豊富になってきている。
    残念ながらミノタウロスの肉は見た事ないけど、オーク肉は増えている。

    冬に備えてだろう。ハムやベーコン、ソーセージに加工されている。ただ、手間はあるけど味が微妙だから、自分で作っている。
    
    今日はそんなに危ない依頼を受けた子はいなかったから、町のあちこちに行けるのをいい事に、ウインドウショッピングも兼ねている。コーンスターチみたいに新たな発見がないとも限らないし。

    まあ、そんな発見がそうそうあるわけないよね。でもフレイムに似合いそうな防寒着を見付けた。町に来た時に気に入ったら買ってあげよう。
    ギルドに戻ると、何人かの生徒が戻っていた。
「丁度いい、メイ。ボードと組んで模擬試合してみろ」
「は?何ですかいきなり」

「そうですよ、先生。自分はEランクで、もうすぐDランクにも届く実力です。単に強いだけの人と戦っても意味ないです」

「なら、先生と組んでメイと戦うか?」
    何言ってるの?
「ほら、行くぞ」
    って、まだ私は了承してないんだけど!

    まあ、きっと何か考えがあるんだろう。
    ギルド内にいた人も観客席に入ってくる。

    先生は強そうだな。相対すると分かる。
    なら、先生には手加減要らないよね!木剣だし。
「おまっ…俺はボードのフォローをする為に…っ!」
    そんなの聞いてないもーん!

    ボードの槍には脅威が感じられない。
    先生の武器は長剣。私は二刀流とはいえ短剣だ。だけど不利には感じない。
    短剣のスキルを持つからだろうか。どこで合わせればいいかが分かる。
    それで懐に飛び込んで2本の短剣で先生の長剣を弾く。

    カンッと音を立てて先生の長剣が弾き飛ばされる。
    ソルジャーオーガの方が強いけど、知恵を使う人相手の戦いはまた違った面白さがある。
「えへへ!勝った!」
「…嘘だろ…俺は元Bランクなのに…しかも余裕かよ。メイの今のランクは?」
「Cだよ。だってまだ5歳だし」

    大きくため息を吐いて木剣を戻す。ボードは殆ど参加できなかった。
「まあ…何だ。ここまで実力が違うと張り合う気も失せるだろ?」
「でも…いえ」
「先生との試合は楽しかったよ?また相手して下さい!」
「やなこった。そこまでの実力があるなら、スキルの全てを使って戦った訳じゃないだろう?」

「それは先生も一緒でしょ?」
「まあ、身体強化も使ってないし、必殺技も使わなかった。当然魔法も使わなかったしな」
「必殺技?見たい!」
「それは冒険者引退と共に封印したんだよ」
    …黒歴史的な物のようだ。深くは突っ込まないでおこう。

「見事な試合だったな。…正直ランクも上げてやりたいが、規則だからな。その実力なら、10歳になったらBランクに無条件で上げてやる」
「ギルマス…」
「アレス、今は高ランクの冒険者が不足しているんだ。深淵の森から強い魔物が出て来る事もあるし、その時は力を貸してくれ」

    それは、ダンジョンに行くついでに冒険者が森の魔物も間引きしてくれればいいんじゃないかな?お肉的に美味しい魔物もいるし。

    美味しい魔物か…またミノタウロス食べたいな。
「えへへ…」

「ほら、そこ、食い意地張ってないで、殆どの生徒が戻って来たんだから、まとめてくれ」
    な、何で分かるかな…
 
    授業は終わったので、目を付けていた野菜を買い、収納庫に仕舞う。乾燥アジタケもある。これも買おう。
「シュガーはちゃんと依頼こなせた?」
「…町中の依頼はにゃーには向いてないにゃ」
    シュガーは確か店の手伝いをやったはずだ。気分屋なシュガーには確かに向かないかも。
「まだ明るいし、ちょっと外で発散する?」
「行くにゃー!」

    寮に戻って、部屋に入る前に亜空間に入る。
「メイ、この前のオークで角煮を作ってみたのだが…」
    あ、美味しそう!
「うん!美味しく出来てるよ!アロカシア、料理の腕前も上がったね!」
「そうか?…いや、主の料理の方がやはり美味しい」

    そうかな?ちょっと味が濃くなっちゃったけど、充分美味しいと思う。
「まあ、味見しながら慣らしていけばいいと思うよ?」

「うむ…それと、ミノタウロスを狩ってきた」
「おおー!丁度食べたいと思ってたんだよね!」
「これは主に料理して欲しい」

    アロカシアの収納庫から出した物を自分の収納庫に仕舞い直す。まだ眷属になってないアロカシアの収納庫とは、繋げる事が出来ない。
「そうだね…すき焼きにしてみようかな?後でスマホに入って作ってみるよ」
「うむ。期待している!」

    もう一つの方の期待は口にしないけど、分かる。
    腕を上げて抱っこしてもらう。
    密着していた方がしっかり存在を感じられるからだけど、今日も無理そうだ。

「ランス達にもよろしくね!」
「ああ。遅くまで狩りに行っているのが悪い」
    フレイムとランスは一緒に行動してるみたいだ。相変わらず仲良しだな。

    豆腐はあるけど、蒟蒻がないな。もし蒟蒻芋があっても私には作れないと思う。
    味噌はおばあちゃんの作り方を見て覚えていたけど、蒟蒻は分からない。
    糸こん欲しいけど、仕方ないよね。

    こうやって考えてみると、現在食べられない物は結構ある。
    まあ、米と味噌、醤油が手に入るだけでも嬉しいけどね。小説の主人公達はみんなそこで苦労しているみたいだし。

    久しぶりに入った亜空間で、シュガーはお気に入りのクッションで丸くなっている。
    学校に通っていると、スマホにもおちおち入っていられない。

    メタルは普段、亜空間の中でじっとしているみたいだ。
    食材も心許なくなってきたし、久しぶりにちゃんと入ろう。

    大イカもいつの間にか食べ尽くしてしまったし、海産物が欲しいな。
    メタルにも銛とマジックバッグを渡して、海に入る。
    海底を歩くメタルに、海老や蟹の特徴を伝える。
    泳げないメタルには魚は無理だ。魚は釣った方が早いけど、海での狩りも楽しい。

    やっぱり、海の中の魔物も強くなっている。きっと実際の海がこんな感じなのだろう。
    私も強くなったし、メタルがいるから安心なのは確かだ。

    イカは巨大な物ばかりじゃない。ヤリイカは、エンペラの先に鋭い槍?角?が付いていて、見慣れたサイズだ。
    クリという名のウニも幾つか見付けた。ふと上をみると、フィレオフィッシュが泳いでいた。
    うん。ダンジョンにいるんだから、海にいてもおかしくないよね?
    きっといつか、魚の骨が泳いでいる姿も見られるんだろうな。

    海に行く時や、ラストダンジョンに入る際はメタルと一緒に行動するようにしよう。

    ランスも進化して体が大きくなったから、その分たくさん食べるし、アロカシアの胃袋は相変わらずブラックホールだ。
    ペットは飼えない数を飼ってはいけません。
    思わずそんな言葉が頭に浮かんだけど、ペットじゃなくて家族なんだから、私が頑張らないと。

    設備は揃ったんだから、あとは種と調味料が買える分だけ稼ぐようにすればいい。
    ボロ小屋も修繕したから、やっと普通の家屋になった。
    ここで生活出来る訳じゃないから、家のレベルアップはこれ以上する必要はない。

    メタルの為の魔宝石は、出来る気がしない。

    魔晶石は、腕のいい錬金術師なら作る事が出来る。私もやっと作れるようになった。
    その魔晶石を材料にしてしまう魔宝石が必要なんだから、相当の実力が必要だろう。

    とりあえず今の所の目標かな。
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