(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる

文字の大きさ
上 下
52 / 166

フレイム

しおりを挟む
    ダンジョンから出て、もう辺りはすっかり暗くなっていた。

    夜の海はちょっと怖い。波に呑み込まれそうな錯覚を覚える。
    ここのギルドは場所柄、夜間の買い取りもしてくれる。そうして食料を流通させる事も大切なんだろうけど、ウチには大食いがいるからな…
    何も言わずにお子様抱っこしてくれたヤブランを見て、内心でため息をつく。

    お肉は充分過ぎる位仕入れてくれるけど、野菜とか、料理とか…でも最近はアロカシアが随分料理を覚えてくれたから、コンロの魔道具や、農園から余分に買ったオーブンを並べて、大概の料理は亜空間内でも作れるようにしてある。

「明日は料理の日にしようか?たまには休まないとね」
「うにゃ…メイが休めないにゃ?」
「私がスマホの中で作ってもいいんだけど、アロカシアにも手伝って欲しいかな。シュガーも何かやる?」
「カシオブツを削るにゃ!」
「あはは。それもいいかも。たこ焼きも作りたいからね」

「俺は…」
「ランスは、良かったらフレイムを遊ばせてあげて?」
(嬉しいのー!ボクは狩りのお手伝いなのー!)
    あんまり休憩にならないかな?でもフレイムも殆どずっと影の中だったから、可哀想だし。

    次の日、米その他の収穫をして、収納庫の中身と相談しながら次の種を買って、醤油の実を見に行く。
    まだか…やっぱりこの王都にいるうちに、醤油の実はたくさん買っておこう。

    そういえば、宝石ダンジョン…しばらく入ってないな。
    ここを攻略しないとラストダンジョンには入れないんだよね…ゲームでは、ラストダンジョンでオリハルコンが採取出来るはずだから、攻略はしたいんだけど…今日はダンジョンはお休みにしたいかな。

    うん…折角だから、ソースとかの作り方もアロカシアに覚えて貰おうかな。エイジングの魔法はアロカシアでも使えると思うし。

    あとはご飯かな。炊飯器の魔道具はもう1つ作って亜空間に置いてもいいな。今まではここで炊いて亜空間に持って行ってたけど、足りなくなる時もあるもんね。

    フレイムにはお弁当を持たせて王都の外にランスと遊びに行ってもらっている。

    王都の中にも外にもゲートがあるから、移動も一瞬だ。
    ここの草原は王都からも少し離れているし、近くにも街道はない。フレイムが狙われたら嫌だから、気をつけてとは言ったけど…まあ、ランスが一緒なら平気だろう。

    それにしても大きい蛸足だ。太さなんて私よりあるし、長さでも身長越えてる。
「これを切れば良いのか?」
「…そうなんだけど、絶対まな板の上で切るのは無理だから、魔法で切るね?」
    うーん。先に吸盤を外すか。
    そして薄切りにしてもとっても食べ応えのある一枚になった。
「これは、ステーキにするのか?」
    そう思うよね…
「刺身でも美味しいと思うんだけど、大きいから切るようだね。わさび醤油で食べると美味しいよ」
    子供の舌にはワサビは厳しいけどね。

    歯応えが凄い。でも噛み締める度に口いっぱいに広がる美味しさは絶品だ。大味にならなくて良かった。
「神への献上品にもするのだろう?」
    はっ…そういう考えもあるのか…いや、そっちが普通か。売ってるなんて言えないな…
「そ、そうだね。気に入ってもらえるといいね!」

    あとはたこ飯かな。
「アロカシア、米を研いで」
「うむ。力加減も覚えたしな」
    そう。最初は米をバキバキに割っていたもんね。それはお菓子に利用したけど。
    アロカシアはカップで丁寧に米の量をすりきりで入れている。
「角切りにしたにゃ」
    シュガーは適当。この辺は性格だよね。私も割と適当な方。調味料とかは全て目分量だ。
「ありがとう。シュガー」
    魔道具に釜をセットして魔力を流せばセット完了!

「あとは何を作る?」
「んー…カルパッチョとかもいいね!」
「バブルフィッシュのカルパッチョも美味しかったな」
    確かに。
「じゃあ、シュガーは野菜をお願い。アロカシアにはドレッシングのバリエーションを教えるから」

    たまには女の子達だけで楽しむのもいいな。

    そんなこんなで色々と料理が出来た。
    早速美味しく頂きながら、今夜やる予定のたこパの話をする。
「入れる具材がタコだけじゃ面白くないから、違う物も入れてみない?」
「肉とかか?」
「ぶた玉がいいにゃー!」
「あのね?たこ焼きはこの位の大きさで、生地も小麦粉だから…」
「うにゃー?」
「例えば、チーズとか」
「それは美味しそうだな」

    そんな中だった。二人の恐怖と助けを求める声を聞いたのは。
(何があったの?!)
(ワイバーンだ!ここはすぐに戦場になる。ヤブランを出してくれ。メイは来るな!)
    絶対行く!

    王都から少し離れた草原。冒険者や騎士達が集まりつつある。空を飛べるフレイムが、ブレスでワイバーンに先行して相対しているけど、あんまり効いてないみたいだ。ランスも隙を見て雷撃を放っているけど、距離が遠いから、届いていないみたい。
     魔法使いが使う魔法も一緒だ。微妙に魔法の届かない距離にいるみたいだ。

「この距離では弓も届かない。我が戻れば蜥蜴ごときに遅れはとらぬのだが」
「それはやめて?」
    ワイバーンどころの騒ぎじゃなくなる。
    ワイバーンの鱗はドラゴンには劣るものの、かなり硬いみたいだし、そうなるとやはり魔法が有効。だけど届かない。
    でも見ていると、ランスの放つ雷は警戒しているけど、他の魔法は気にしてもいない。

「ワイバーンは魔法も効き難い。あれでも一応は亜竜だならな」
    へえ。でも下に落とせれば何とかなるんじゃないかな?
    雷…雷雲から発生できれば、そう目立つ事もないかな?
    ランスの使う雷にはみんな驚いているけど、ワイバーンに気を取られている。
「ヤブラン、少し守ってて」

    雷雲を発生させてそこから雷を発生させれば、効果は大きくなるはず。でもかなり魔力を使いそうだし、イメージもしっかりしてワイバーンに確実に当てないと。

(フレイム、少しの間ワイバーンの気を引いていてね)
    気持ちを落ち着けて、集中力を高める。
    明るい空がみるみる暗くなり、雷雲が発生する。
    うう…思った以上にきつい。天候を左右する魔法なんて図書館の本でもあまり例がなかったのか、ほんの数行しか書いてなかった。

    よし!まず一匹!中でも大きなリーダーっぽいワイバーンを狙った。
    10万ボルトだ!…あれ?雷ってボルト数は…まあいいや。あの黄色くて可愛いモンスターと同じ技だ!
    どうっ…と大きな音を立ててワイバーンが落ちた。多分仕留めた。
    ヤブランが、前に渡した両手剣を持って走る。
    
    あと4匹…リーダーを失って動揺しているのか、動きが粗い。
    一匹が、誰かの放つエアハンマーで落とされた。
    すかさずヤブランや皆が剣や槍で攻撃する。

    あと三匹。雷を落とす…弱い?でも、体勢を崩したそれに、ランスの雷が当たる。

    魔力が…!頑張る!
    よし!残りは一匹だ…

(ごめん…メイ)
    今までその小さな体でワイバーン達の攻撃をひらりと躱していたフレイムが、残り一匹となったワイバーンの尻尾に弾き飛ばされる!
「フレイム!」
    魔力不足で頭がクラクラするけど、構ってられない!ショートワープを繰り返してフレイムの所まで走る!

    血の臭いに集まって来ている魔物を威圧で退かせ、フレイムをそっと持ち上げる。その魔物の中に、金属で出来た人形のような、ゴーレムのような物と目が合った気がした。
    とにかく今ならまだ大丈夫と信じて回復魔法をかける。
    あ…不味い。目の前が真っ暗に…私の影に入れれば、自動回復で…
    何も考えられない。

    フレイムを影に入れ、メイは意識を失った。
    必死でメイの下へ走る従魔達。近くにいた冒険者も、倒れている子供を見てぎょっとなる。
    魔物に襲われる…!いや、その前にゴーレムに!何故こんな所にゴーレムが?


しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

処理中です...