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王都ダンジョン

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    朝から行列に並んで、ダンジョンに入る。
    冒険者には全く見えない鎌と背負い籠を持った人も行列に混ざって談笑している。
    だから聞こえてしまう。ダンジョンの一階層はワカメの魔化した物で、スープの具材や様々な料理にされる事も。

    勿論、普通の冒険者達は魔法石に触れて、行きたい階層へ直接移動するから、一階層が人で埋まる事はない。
    私も鎌を出してなるべく採取するけど、昨日値段を見た限りでは、買った方が効率がいい。

    結局足に絡み付いてきた物だけ刈って縮んだワカメを手に入れる。ランス達もそんな感じだ。
    それにしても、みんな逞しいな。ごく普通のおばちゃんが鎌を持ってワカメに挑んでいる。

    私達は階段を探す。とはいえ、ここは迷路状になっていないので、すぐに分かった。
    
    逆に2階層は全く人がいない。シーデンデンという、巨大なかたつむりの魔物で、本体はぬるっとして打撃は通りにくい。
    殻は打撃でも壊れるし、ミスリルの刃も通る。
    …えええ。ドロップアイテムは殻なの?
    錬金術の材料として使えるみたいだけど、収納系の魔法がなければ持ち帰れない。
    砕いて少しだけ持って行こう。

    そして迷路。きっと通過するだけでみんな寄り付かないね。
    倒すのが面倒になって途中から蹴飛ばして倒した。
    倒れると縮むから、復活するまでに通り過ぎてしまう。

    やっと階段を見付けた。結構時間かかったな。3階層に降りる前に、軽く食べておく。
「ヤブラン…軽く、だよ?」
「勿論、満腹にはしない」
    ランスもかなりの量を食べるけど、ヤブランは軽く倍は食べる。人化した時の姿は変わらないけど、竜に戻った時の姿は若干大きくなってるかも。

    魔物はフナマスだ。海の魚で、大きく開く口には鋭い歯が生えている。
    大振りな白身の魚で、鍋にすると美味しい。
    町でも干物として売られているのを見かけた。
    干物にすると出汁が出て、スープの具材にすると最高に美味しい。

    ここには冒険者?料理人?の姿も多いし、勿論逞しいおばちゃんの姿も見られる。
    外れだと何も残らないけど、たまにまるごと一匹手に入る。
    勿論農園の海岸で釣る事もできるけど、倒して手に入れるのも面白い。

(主は運が良いのか?)
(普通だと思うけど?)
    確かに、他の人より魚に変わる確率は高い気がする。
    でも…本当に運が良かったら、私は今ここにこうしていない。
    それなりに仕事して、もしかしたら結婚もしていたかも。

    もしもなんて考えても仕方ないし、今は充分に幸せだ。
    
    迷路状に張り巡った足場から、飛び上がる魚を仕留める。運がいいと、手元に魚本体が落ちる。
    ただし、次の階層へ行くのに迷路をズルして通路を飛び越えると、フナマスにぱっくんされてしまう。
    まあ、それ狙いで呼び寄せるんだけど。

    この階層でしばらく狩りを楽しんで、四階層への階段を見つけてから戻る事にした。

    フナマスをたくさん手に入れられた。ダンジョンにかかる橋の麓でワカメを買って、亜空間に戻った。

    アロカシアに手伝ってもらいながらワカメをかき揚げにする。フナマスは素揚げだ。
    オリーブが収穫できるようになってからは殆どオリーブオイルだ。菜種油も作れない事もないけど、畑を広く使ってしまうから、収穫するだけで済むオリーブオイルについ偏ってしまう。

    町に売っている油はオーク等から採れた油と、オレルの実から採れる油がある。
    馴染んでないからか、菜種油かオリーブオイルが美味しく感じる。ごま油は、作るのが一人だと大変だ。主に収穫が。
    オリーブは木になるから果実のように今日の収穫分が箱に入った状態で手に入る。
    
    畑で採れる作物は実際に収穫しないと手に入らない。
    
    美味しい物を食べる為には、みんなにも食べさせてあげる為には頑張るけどね。

    
     次の日は、四階層に向かった。出てくるウミウシを倒しながら、ここもやっぱり食べ物と食べられない物が交互に出てくるのかなと考えた。

「そうでないダンジョンも多いぞ。というか、食べ物がドロップするダンジョンは人気がなかったりする。ここは多くの人が魔物と会わずにダンジョンまで来られるからな」

    そうなんだ。ダンジョンのドロップアイテムはどんな倒し方をしても一定の形で皮も手に入ったりするし、解体の手間もない。売る方も買う方にもいいのかな。
   
    収納庫を持ってないと腐る前に食べ切らなきゃならないし、飽きちゃうよね。

「うわあ…綺麗!」
    浅い海には色とりどりの珊瑚。思わす一歩踏み出したそこに、下から鋏で攻撃される。
「わ…びっくりした」
「メイ、危ないにゃ」

    というか、海老じゃん!鑑定では、出汁を取るのに向いてるって事だけど。
    鋏を避けつつ剣で刺すと、随分縮んだ。
「植物以外でもこんな風に縮んだりするんだ」
「ダンジョンだからな。何が起きても不思議はない」

    お、あれは食堂でも使われてたつみれになってた魚だ!
    農園では釣れない魚だ。切り身に変わったので、落とさないようにロングハンドで手に入れた。
    周りの冒険者は網を用意している。あれば便利だね。
    シュガーが蔓の網で集めている。それもいい方法だね。
「珊瑚は集めなくていいのか?」
「売るだけしか使い道ないしな…ああ、でも出荷できるか」
    現実世界のお金は今の所充分だけど、ゲーム内で使いたい。

    珊瑚はヤブランに任せて、へばりついている牡蠣に似た貝を剣で剥がす。
    鑑定    ミルク貝    モーモーのミルクに似た味の貝

    やっぱり牡蠣なのかな?生で食べたいね。
    集中しちゃうと鋏でちょっきんされちゃうから、周囲にも気を配る。

    綺麗な海のほとりで海遊びをしている気分になる。
    夏休みは長いし、ダンジョンもいいけど、海遊びもしたいね。

「次に行かなくていいのか?」
「そうだね…またいつでも来られるし」

    五階層は迷路状になっていないから、階段も探しやすい。
    
    6階層はまた普通のダンジョンに戻った。
「嘘…魚の骨が飛んでる」
    何の魚だろう?随分大きい。

    鑑定    ボーンフィッシュ    風魔法に注意。骨は硬く武器や防具の素材になる

    ああ。そういう種類?なのか。そして骨の中に魔石が見えている。
    他の冒険者は打撃でダメージを与えて、ある程度ダメージが蓄積すると魔石か骨を残して消える。

「魔法の方が楽だぞ」
    光魔法か…って事はアンデット?…考えてみれば骨だしな…うん。アンデットでも魚の骨は怖くないな。

    骨は別に要らないけど、魔石は欲しい。売る為じゃなくて使う為の魔石だけど。
    魔石は様々な用途で使われる為、値崩れしない。だから冒険者は荷物にもならないから魔石狙いの人も多い。
    シュガーも私達を見て魔法を使い始めた。

    魔石は嬉しいけど、五階層で遊び過ぎたからか、お腹空いた。
「残念だけど戻ろうか。無理する必要はないからね」

    やりたい事もできたし、今日は帰ろう。

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