(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる

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    フレイムに代わって今は、アロカシアが亜空間を開いて、みんなそこにいる。
「ただいま!中々帰れなくてごめんね」

    ああ…もふもふがもふもふだ…
    一頻りもふもふを堪能して、竜に戻っているアロカシアも撫でると、頭を刷り寄せてくる。
    アロカシアの鱗は表面は少し冷たいけど、その向こうに確かな温もりがある。

「私はご飯食べちゃったけど、みんなは遠慮しないでいっぱい食べてね?」
    町に居るようになって、今では野菜はほぼ買っている。毎日入れないから野菜不足を補う為と、米や小麦を優先的に育てる為だ。

    それに、米や小麦の種籾の値段が下がったから、野菜でかさ増しする必要もない。
    これはあれかな…もっと料理を出荷して欲しいと思っているのか、食べてしまう為に負担になっているのを見かねてか。
    どちらにせよ嬉しい。大食い従魔も出来た事だし。

(主が喜ぶかと思い、収納庫にハチミツも沢山入れておいた)
「わ…もう15階層まで行ったんだ?凄いね」
    アロカシアならあっという間だと思ってたけど、まだ学校が始まってから一月程だ。

「そうだ。今日はみんなに植物性生クリームを試して欲しくて」

    みんなには人化してもらい、食後のデザートとしてシフォンケーキに生クリームをたっぷり添えた物を出す。
    植物性だからか、あっさりとした味わいの生クリームだ。
    
    出来れば普通の生クリームが食べたかったけど、作り方知らないしな…
    でも、生クリームとしては充分美味しいし、何よりヘルシーな感じがする。
    勿論、手紙を添えてケーキは出荷した。ネリーも勿論だけど、みんなにも食べて欲しかったから。

    今まで手紙を出荷した事はなかったけど、アルミネアの所に行くのは分かったし、読んでくれると嬉しいな。

「ふわふわで甘くて、メイの好きそうな味にゃ」
「うむ…俺は肉の方が嬉しいが、メイの作る物は何でも嬉しい」
(ボクはこの味、好きだよー?…それとごめんなさい。人化を覚えようと頑張っているけど、まだ覚えられなくて)

「いいよ。大丈夫」
「主…フレイムには人化は無理かもしれない。種族によってスキル習得の限界があるからな」
(そうなのー?)
「極端な例だが、人族がブレスを吐けないのと一緒だ」
    そりゃそうだ。大道芸人じゃあるまいし。

(じゃあ、ボクも進化すれば使えるようになるかなー?)
「進化の条件も曖昧だからな…だがフレイムは向上心もあるし、主からの信頼も得ている」

「別に進化に拘らなくてもいいよ?何もなくても、みんな大切な家族に変わりはないんだから」
    それにフレイムは役に立っている。私の目になってくれれば、ロングワープでそこに飛んで、ゲートを開く事も出来る。

    寝る準備をして、もふもふのみんなとベッドに入ると、アロカシアと目があった。
「人化して一緒に寝る?」

(いや…寝たら竜に戻る可能性が高いから、止めておく)
    うん…流石にベッドはもとより、私は確実に潰れるかな。
(スキルには、目に見えない熟練度みたいな物があるのは主も分かるだろう?)
    それは凄く分かる。双剣の扱いもだけど、魔力操作が上手くなったから、錬成の為の魔力も減ってる気がする。ミスリルも、まだまだB級品にしかならないけど、だんだん容易になっている。

    アロカシアとはまだ一緒に寝た事がなかったな…予備の布団も丁度出来たし、今日はアロカシアと寝よう。
    布団を敷いて、アロカシアに凭れかかり、毛布を被る。

(主…我はもふもふじゃないのに、いいのか?)
(ん…いいよー?もふもふにも埋もれたいから、たまにになるけど)
    そこは譲れない。もふもふは欠かせない癒しだから。


    次の日。スマホに入ろうと電源を入れたら、アルミネアからお礼のメールが届いていた。
    出荷での手紙は、アルミネアも思っても見なかった事だったらしい。でもこれで、一方通行でないやり取りが出来るようになった。
    でも、教会でのお祈りはするよ?そこは気持ちの問題だからね。

    畑仕事を終わらせて、農園での家…でも相変わらずのボロ小屋に入り、生クリームを使ったお菓子を考える。
    シュークリームとかいいよね…クリームがあっさりしてるから、カスタードクリームも入れて、ダブルシューにしよう。
    あとは私が前世でも好きだった、生クリームたっぷりのプリンかな…

    そうだ。オージェへのお礼もしなきゃ。
    酒場のみんなが美味しそうに食べていたのは、イエローバイパーの串焼きだ。
    しっかりと下味を付けて焼くと、歯応えもいい感じなおつまみになるらしい。

    おつまみはラスカームも食べそうかな?エルダンは分からないけど、ユリースは…どんな物が好きなのか見当もつかない。
    見かけは少年だけど、神様だから長生きしてるだろうし。

    あとで聞こう。まあ、取り敢えずはアロカシアから追加で貰った高級牛肉、ミノタウロスを使って何品か作る。
    これは当然アロカシアの収納庫にも入れておく為、沢山作る。

    釣りは…今回はいいや。早くアロカシアから戦いの技術を教わりたいし。
    例え時間が全く経っていなくても疲れるし、気持ちの問題もある。

    作ってきた物をアロカシアの収納庫に移して、木剣を出すと、頷いて、ヤブランの姿になる。
    私の必死の攻撃も、ヤブランに片手剣1本で止められてしまう。
    身体強化を施し、風で土埃を巻きあげてからの一撃。
「主、奇襲に頼るのは良くない。それよりも技に磨きをかける方が良い」

    そうだね。ヤブラン相手だと、これ位の攻撃は見切られてしまう。あの時見たステータスより更に細かいスキルはたくさん覚えていそうだ。
    体格のハンデを差し引いても、ヤブランには勝てる気がしないな…

    細かい擦り傷はあっというまに治ってしまう。
「ヤブランは、怪我してない?」
「ふふ。我の肌は人のそれに見えても鱗だからな」
「うーん…それだと、逆に怪我しないのが不思議がられるかもね」
「怪我をするような目に遇わなければいい」
    そう言い切れるのはヤブランだからだよね。
    私こそ気をつけないと。転んだ傷が治ってしまうのを見られたくないからね。

    ご飯は…ピザにでもしようかな?
そういえば、甘いピザを出荷した事はなかったな。
    折角アロカシアにハチミツをたくさん貰ったし、フルーツとハチミツのピザも作ろう。

    肉好きのみんなには、ダイス状に切って炒めた肉を散らして…

    わ…チーズにハチミツってこんなに合うんだ…美味しい!
    こっちも適度な酸味と甘味が…チョコレートもあれば良かったけど、カカオを見つけたとしても、加工できる自信はないな…

「今までピザは甘くないと思っていたからこれは混乱するな」
(ボクは好きだよー)
「ふう…お腹いっぱい」
「いつもの事ながら、主は少食だな」
「普通だよ。まだ子供だからね」
「たくさん食べれば、大きくなれるぞ?」
「えええ…人族はそう簡単には大きくなれないんだよ」

「ふむ…まあ我も、そう短期間に大きくなれる訳ではないが」
「大人になるのにどれ位かかるの?」
「ふむ…元々我は分体だ。用が済めば本体に吸収されるのではないか?」
「そんな…」
「そう悲しそうな顔をするな。我は主が生きているうちは存在し続ける」
「でも…嫌だよ。そんな消えるみたいな言い方」
「優しいのだな。主は」
    アロカシアに頭を撫でられて、少し涙が出た。
「心配せずとも、主を残していなくなったりはしない」

    エルドは相当長生きしているんだろうし、同じ竜なら普通は長生きするのだろう。私の事は関係なしに長生きして欲しいな。
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