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出会いと別れ

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    農園でお菓子を作り、少しずつ出荷して、ランス達のおやつにもなる薫製肉の下準備を進めて、スマホから出た。

    フレイムには、空の上からの森の調査を依頼してある。
    フレイムと視覚を同調する感覚共有。最初は自分の視覚とダブって見えて気持ち悪くなったけど、私も随分慣れた。

    自分で飛んでいる訳じゃないから怖くないし、ドローンで見てる映像みたいだ。

    薫製を作りながらフレイムからの映像を見る。
    本当に大きな森だ。その奥地に一際大きな木を見つけた。

(フレイム、あの木は何か知ってる?)
(多分世界樹なのー。魔素を生み出す生命の樹なのー)
(へえ…そこにはエルフとかいるのかな?)
(んー?こんな奥地には亜人といえど、住めないと思うのー)

    その時だった。フレイムの恐怖心が大きく膨れ上がった。
(どうしたの?!)
(メ…メイ、助けてなの…)

(ランス!シュガー、来て!)
    走ってきた二人を両側に抱え、フレイムの視覚で見た襲われる少し前に見た開けた景色へと、ロングワープした。
   フレイムの心は、未だ恐怖に包まれているものの、生きてはいるようだ。

    世界樹の周囲は、何か巨大な生物によって踏み慣らされたように硬い土地が広がっていた。
「う…うそ」

    ドラゴン。そう表現するしかない存在が、目の前にいた。金色のドラゴンだ。フレイムは、そのドラゴンが作ったと思われる結界の中にいる。

    鑑定しようとして、弾かれた。
(成る程…お前がこの鳥の主だな)

    念話…やはり高い知能を持った存在のようだ。ランスは尻尾を股の間に挟んでいるし、シュガーも尻尾を太くしているけど、耳を伏せている。
    二人とも力量の違いを本能で感じているのだろう。それでも逃げ出さないのは、私が諦めていないからだ。

(フレイムを…返して下さい)
(その前に問う。何者か?見かけは人の子だが、只人ではあるまい…少し前からその気配は感じていたが、神…ではあるまい。だが、神聖な何かを感じる)

(それは多分、小さい頃は神様が面倒を見てくれたから?でも私自身は人族です)
(神ならここにいますよ。まあ、異界の神ですが。契約でメイさんの身の安全を見守っているのですよ)

(姿は見えぬが…存在は感じられる。異界の神よ。この幼き者は何者か?)
(元は異界の人だった者。今は…そうですね。この世界の神々はこの子を可愛いがっているようですが)

(ふむ…この地を守護する我も、久しく神の声を聞いていないが…我とて世界樹を守護する者。放ってはおけぬ)

(ちょっと待って!エルド)
    この声は、アルミネア?

    アルミネアの姿が、空中にホログラムのように浮かぶ。

(アルミネア様…)
(メイはこの炎鳥を使って悪さをしようなんて、絶対思ってないわ!そうでしょう?メイ)
(は…はい。森の事を知りたくて。ちょっとした興味です…だから、フレイムを返して下さい)

(ほら。エルドもシュールの気配に興味をひかれただけ…よね?)
(いえ、我は…我が興味をひかれたのは、メイという子です。少し前から現れたその気配に、神々の力を感じたので)

(そう。私達全員がメイには加護を与えているものね…それに、いきなりリンドルグに魂のまま入ってきて、そのまま消滅させちゃうのも可哀想だから、人の体を与えたのよ)

    私、消滅の危機だった?!
(大丈夫よ、メイ。今では私達みんなあなたが大好きよ!そうそう。ハチミツのお菓子、美味しかったわー!スイーツはいつもネリーと取り合いになるんだけど、たまたまあの子いなくてね…という訳で、ハチミツのお菓子は再出荷お願いね!)

    えええ…
(でも、ダンジョンは本当に気をつけて?あなたは死ににくくても、従魔達はそうじゃない。シュールも守ってくれないでしょうし)

(うん。気をつけるよ…それならアルミネア、生クリームはないの?)
(そうね…クーミルの木の実がそんな感じに使えるかしらね?ゲームの中で買えるようにしておくわ)
(ありがとう!アルミネア)

(我も喋りたいのだが…元々この炎鳥を捉えたのは、そなたを知る為であった。謝罪する)

    結界が解けて、フレイムが帰ってきた。
(いいえ。その世界樹は大切な物なのでしょう?不用意に近づいて、こっちこそごめんなさい)

(メイの料理は絶品なのよ!エルド。メイ、今何か持ってない?)
    うーん。やっぱり肉かな?
(じゃあ、焼き鳥を…)

    おずおずと差し出すと、焼き鳥はふわりと浮かんで竜の口の中に。
(成る程…うむ!気に入った。分体を作る故、少々待たれよ)
(あら、まあ…でもいい事ね!)

    魔素が集まり、小さな竜を生み出す。私と変わらない大きさだ。
(我はここを離れられぬ故、それを連れていかれよ。分体は我自身ではないが、意識は共有できるし、我ほどの力はなくても人のそれと比べると充分に強い)

(それって、従魔って事ですか?)
(その判断は分体に任せる事にしよう)
    もふもふじゃないけど…ここで好意を無にするのもな…

(じゃあ、分体さん…それともエルドさん?)
(その名はやめてくれ…エルダードラゴン、略してエルドと呼ばれているだけだからな)
    アルミネアがてへぺろしてる。…まあ、ある意味アルミネアらしいかな。

(ええと…男?女?)
(我に性別はない。どちらの姿にもなれる)
    それって、人化も出来るって事?
「これでどうだ?」
    エルドが思い切り縮んだ!しかもランス達と違って最初から服着てるし。
    まるで仙人みたいだ。

    銀竜…シルバー。うーん?エルドは金竜だけど、この子は銀。そこは不思議だな…

    名前ね…シルバードラゴンは、宿根草だ。
「性別がないって、逆に難しいんだけど」
「我は魔素から生まれた存在だからな」
「なら、ヤブランかな。もし女性がいいならアロカシアで」

(うむ!気に入った。メイはどちらがいい?年齢的にはどれ位で?)
    ええっ!そこも変えられるんだ…仮の姿は変更不可って言ってたけど、ドラゴンだからかな。

「じゃあ…10歳以上の女性で…大人がいいかな」
    
    おお…顔立ちはアルミネアに似ている。ただし、もっとキリッとした感じで。髪は銀。瞳は金色だ。女性の格好をしているけど、どこか中性的な感じもする。ヅカの方みたいだ。
「私、アロカシアはメイ、あなたに仕えましょう」
    パスが繋がった。アロカシアは従魔になってくれたという事だ。

(やれやれ…これで命の心配はなくなりましたね…おや?体が…軽い!これはもしや?)
(シュールはちゃんとメイに謝ったし、罪悪感と使命感からも解放されたって事ね。もう、元の世界に帰れると思うわ)

    そういう事か…
(おめでとう、シュール。そして今までありがとう)
(怒っては…いないのですか?)
(そう何年も怒るのは難しいよ…それに今の生活も気に入っているし、大切な仲間もいるから…お別れはちょっと淋しいけど)

(メイさん…私も、悪くない数年だったと思っていますよ。無謀に過ぎる時もありましたが、そう手間もかかりませんでしたし…もう会う事はないと思いますが、お元気で…)
(シュールも、お勤めご苦労様でした)

    骸骨の体がすうっと薄くなっていく…その顔が、少しだけ笑ったように見えた。

    まさかドラゴンが従魔になるなんて。とても頼りになりそうだ。
    頼りきりにはなりたくないけど、いざという時は頼りにさせてもらおう。

    アロカシア(ヤブラン)(0)
     シルバードラゴン
    レベル    1

    スキル    
    属性ブレス    再生    高速飛翔
    耐性無効    癒しの光    守護
    竜鱗結界    魔眼    感知    威圧
    並列意志    変化    

    …もう、どこから突っ込んでいいのか分からない。世の中の全てのレベル1に喧嘩売ってる?

    ていうか、見た事ないスキルだらけだ。そして私にも神竜の加護とかいつの間にか付いてるし。
    命を危険に晒すような攻撃を受けそうになると、アロカシアの守護が働いて、竜鱗結界で守ってくれるようだ。

    レベル1とはいえ、エルドの力と知識を受け継いでいる。
    魔法に関しても、使えない属性はなく、イメージで全ての魔法を扱える。

    生まれたてとは思えないけど、ドラゴンっていうのはそういう存在のようだ。
    竜の中でも一番の上位種で、まず人の力では勝てない。

    下位の属性竜はまた別物。そんな存在が何故に人の従魔に…
    やっぱり餌付け?餌付けなの?



   
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