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級長

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    試験の日からはあっという間だった。
    雪が降り、少し積もるようになったなと思ったら、新年も間近だった。

    特に入学式のような物はなく、クラスは三つに分けられて、私もシュガーもAクラスだ。
    教科書は使い回された物で、何人かが新しい物を使っている。
    そういった子達はお金持ちなのかな?服も上質な物を着ている。

    あの時の先生が担任か…私がちょっと常識知らない事を分かってそうだから、色々聞けていいかも。

「あー、まずはクラスの係を決める。まずは級長だが、メイ。副級長はボード」
「先生、級長は戦いの技術とは関係ないですよね?」
    いかにも頭良さそうな子供だ。

「無論だ。勿論、野外活動をする時にも色々動いてもらうから、両方できる奴を選んだ」
「そうですか…正直、こんな小さな子に勉強で負けたとは思いたくないのですが」
「メイは両方トップだ。安心しろ」
    安心というか、悔しいんだと思う。6歳に満たないのは私だけみたいだし。
 「それ以外は黒板に書いた係の所に名前を書くように。希望者多数の所はじゃんけんだ。このクラスは全員読み書きが出来るから楽でいいな」

    中にはシュガーみたいに形がいびつな文字を書く子もいる。
    このクラスは優秀な子が集められたのかな?

    メイは、教科書を開いてみた。
    …あれ。足し算と引き算しかないや。それにお金を絡めた計算の仕方。
    流石に商人はこれじゃだめだから、上の学校もきっとあるんだろうな。
    
    あ、魔法についてか。…ええと、全ての呪文を唱える魔法が一番威力が強くて、端的に効果を表す表現だけを言葉にした簡易詠唱。
    これには、私もよくやってる現象を魔法名に当てはめてそれを唱えるだけのやり方もある。ただし、呪文を唱えた時よりも効果は落ちる。嘘だぁ。

    あとは完全無詠唱。攻撃する時はそうなるよね?
    うん…この本は信じたらだめな奴だね。でもこれが、この世界の人達の魔法の常識なのかな。
    属性についてもある。まあ、予想通りの内容かな。使える属性は多い人で2~3個。生活魔法はほぼ全ての人が使えて、魔力も殆ど使わない。

    あれ?雷の属性ってないの?麻痺の付加効果も付くから便利なのに。
    雷は電気がないこの世界の人には想像が難しい物なのかもしれない。覚えておこう。

    でも麻痺の魔法はあるんだから、ここの人達には必要ないのかもしれない。

    え…獣人は魔法は身体強化しか使えないの?…殆どか。
(シュガー、魔法のテストはどうやったの?)
(蔓の鞭で叩いたにゃ。驚かれたけど、普通にゃ?)
(うん。でも他の属性は使わない方がいいかもね。獣人は魔力を放出するのが難しいって書いてあるし)
(分かったにゃ)

    教科書ってこれしかないのかな?何かもう、これ読んだだけで充分て気がするな。

    ボードは新しい教科書をやはり読んでいて、難しい顔している。
    他にも簡単なマナー講座がある。もし上級冒険者になった場合は、領主様と会う機会もあるかららしいけど、私達はそんなに上のランクになるつもりはない。Aランク、もしくは国に認められたSランクなんて物になると、指名依頼があったりと大変そうだからだ。

    一番多いCランク位が多分丁度いいよね。
    私はともかく、ランスやシュガーは上に行けそうだから…勿論本人の意思は尊重するけど、極普通の冒険者がいいよね。
    
    まだそんなに積もってないから部屋のチェックだけしておこう。
    幸い、シュガーとは部屋も一緒だ。
「ウナギの寝床だ…」
「ウナギにゃ?」
「ええと…細長いって事」
    四人部屋で、二段ベットが二つあり、細長い板は勉強用だろう。それと物入れの箱が四つ。

    とりあえずカーテンがあるからプライベートは守られる。
    うん。いいね。みんな寝たら亜空間に入れるし、移動してランス達と過ごす事も出来る。

    この町の子でも、遠いとここで過ごす。あとの二人はどんな子かな…仲良くなれるといいな。

    
    学校内の幾つかにゲートを開いて、ランス達がいるダンジョンの近くに出た。
    この位の距離なら念話も通じるけど、奥の聖域から町だと距離があるからか、通じない。
(冬の間はボク達はここにいるのー。冒険者の気配もないし、メイも分かりやすいと思うのー)

「羨ましいにゃー」
「勉強よりもダンジョンに潜っている方がいい?」
「しかしシュガーは、ずっとメイと共にいられるのだろう?」
(ボクもそっちの方が羨ましいと思うのー)

「学生の間だけだよ。それに空いた時間は必ず会いに行く」
    私だって、淋しいのだ。
「ちょっとだけ中で戦うにゃ?」
「いいけど、どこに行きたいの?」
「そろそろワニーと戦うのも慣れてきたし、階段を探してもいいんじゃないか?」
    いいけど、時間的に中途半端だな…少しならいいか。

    新しく考えた魔法、マップで歩いた所は地図が出来ている。
    これには感知のスキルも連携させてあり、魔物の位置も素早く察知出来るようになっている。

    ワニーの攻撃はフレイムには当たらないから、安心して参加させておける。

    かなりの時間このフロアーは探索しているから、マップもかなり出来ている。
「よし!あった!」
(待て、メイ。俺が下の様子を見てからの方がいいだろう)
    もう…ランスは過保護だな。

(14階層は真っ暗だ。…む!蝙蝠の魔物だ)
(私達も行くよ!)
    本当に真っ暗だ。私も夜目のスキルは取れたけど、習熟には程遠い。みんなは全然平気みたい。
(ライト…ううん!フラッシュを使うよ!)
    闇に潜む魔物なら、却って光には弱いと思った。
    案の定、気絶してるのや、飛び方がおかしい奴もいる。
    それにしてもでかい魔物だな…しかも腕が4本もあるし。

    超音波の攻撃を防ぎつつ、止めを刺すと、蝙蝠の皮膜が残った。
    
    鑑定    シャドーバットの皮膜    水を弾き、軽くて丈夫

    …これで傘を作ったら、本当のコウモリ傘だな。
    でも、この世界では傘なんて見かけないな。みんなマントで雨を防いでいるみたいだ。

    買ったマントは重いし、これを集めてマントを作るのもいいかもしれない。
(これ、集まったらみんなのマントを作るよ)
(了解した)

    今日の所はこれまで。潜った時間が遅かったからね。
(戻ってごはんにしよう?)

    今日はランスも好きなワニ肉の山賊焼き風だ。  
    農園で収穫したリンゴもフレイムにあげる。フレイムは果物が大好きだ。
「二人共…元気で。無茶はしないでね」
「すぐに会えるのだろう?」
    でも、生活に慣れるまでは気を張っていないと。
    亜空間移動で会いに来るのはしばらく無理かもしれない。

    夜にはランスに思い切りもふもふして、フレイムもたくさん撫でた。シュガーもね。

    明日からは学校だ。しばらくは座学らしいけど、シュガーは耐えられるかな?


    
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