上 下
27 / 166

フレイムの危機

しおりを挟む
    あ。やっぱり売り始めた。
    スマホ内の道具屋で、大麦の種が売られているのを見つけた。
    麦芽糖に麦茶に、麦ご飯…えへへ。
    気がついた事がある。元々ゲームの世界で育てられた野菜以外、例えばこの世界独自の野菜等は、出荷箱に入れるとそう間を置かずに種が売られる。
    ゲームではなかった野菜も、かなり小出しではあるけど、売られる。まあ、名前が微妙に違ったり、色が違う事もあるけど。

    元の世界にはなくて、この世界独自の野菜は、何もしないと種が出てこない。

    海の中の生き物はほぼこちらの世界にいるものだろう。
    そして、蟹や海老は虫系魔物だった。
    ブラウンガザミという岩肌そっくりな蟹とか。
    ブルージュエルクラブはくすんだ紺色が、茹でると殻が宝石のように綺麗なブルーになる。それが宝飾品に利用されて、中身は勿体ない事に、捨てられるらしい。

    なんて勿体ない!私は勿論美味しく頂いたよ。

    そうして今、また海で獲物を探している。
    うわ、でっかいな…でも形は海老だ!
     2メートル位ありそうな巨大な海老を銛で仕留めて、砂浜に上げる。

    鑑定    イセビー    虫系魔物だが、美味

    産地偽装?いや、こんな大きな伊勢海老はいない。

    こんな大きな海老、どうやって調理しよう?
    ランスもいっぱい食べるし、シュガーも進化して体が大きくなってから量も増えたし、大きな焼き網を作ってもいいかな。

    スマホ内で魔石が採れるようになった事で、私の付与の腕前も随分上がった。
    付与をした武器や防具、アクセサリーは高く買い取ってくれる。
    出荷箱より長い大剣とか、図鑑を埋める為に出荷した大きなジンギスカンプレートとか、明らかに容量オーバーなのに。
    
    ゲームとしてやっていた時は気にならない事でも、考え始めると気になるけど、分かりようがないんだよね。

    案外出荷箱は、アルミネアの所に繋がっているのかもしれない。

    海産物が結構手に入れられたな。幾つかは出荷箱に入れよう。

    コージの花やイーストの花は出荷しても売られないのは、雑草扱いだからだろうか?
    味噌も出荷したら、道具屋で売られ始めた。ゲーム内金欠なので買う事はないけど。

    うん…少しでも加工すれば高く売れるかな?イカとか、一夜干しにしてから売ろう。
    何がいくらで売れたとか、その場でも分かるし、図鑑にもしっかりと載るから、色々比較できて嬉しい。

    今の所大きな買い物はないから、お金が必要なのは米の種籾位だ。ゲームの頃から思ってたけど、主食が高いのは辛い。

    
「ただいま…はぁ」
(疲れてるにゃ?)
    体の疲れはリフレッシュをかければ取れる。ただ精神的に、今日もよく働いたなと思うだけで、実際は時間は全く経っていない。
    それはこちらとしても都合がいいんだけど、だからって行動がなかった事にはならない。モチベーションの問題だ。

「大丈夫だよ。今日はシュガーの服の尻尾の穴を開けようか」
    人化してもらい、穴を開ける位置を合わせる。
(森に行きたいのー)
「なら、俺も行こう」
    山菜等、メイの喜ぶ物を採って来たい。
「気をつけてね」

    買って来た服にはクリーン位しか付与が付けられない。
    10階層のボスを倒しても、シルクの布が出るのはたまになのだ。大概宝箱だ。
    裁縫セットが出た時もあったな。少しだけシルクの糸が入っていたから、そこになら色々付与を付けられる。

    さすがにサイズ自動調節を付けてもゴムの役割まではしてくれないけど。
    
「可愛いにゃ?」
「うん!凄く似合ってるよ!普段着は多めに用意したから、色々取り合わせて楽しもうね!」

    冒険活動中の服はまた別だ。こっちは勿論動きやすさと防御力重視で選んだ。
    便利なのは、服を着たまま人化が解けてしまっても、ランスのようにベルトに締め付けられるとかがないこと。
    ランスは下着等は破れてしまうのだ。

    シュガーはもふもふだけど体自体は結構細い。それでもアサシンキャット時代から比べたら大きくはなっているんだけど。

    ん?!…驚きと、恐怖?フレイムだ!
    シュガーと二人、外に出て行き、パスの繋がる方へ走る。

    私達が近付くと、近くにいたフレイムが遠くに飛んでいく。冒険者か…狙われた?

「ちっ…折角の炎鳥、逃がしたか」
「どのみち私達の誰もテイムのスキル、持ってないじゃない」
「けど、売れたかも知れないだろう?」

(メイさん!フレイムが無事ならもうそれでいいでしょう)
    シュールの声に、はっと我に返る。ここで私が出て行ったら話がややこしくなる。

    シュガーと二人、そっと引き返した。

    炎鳥は時間が停止する収納庫を持っている。だから狙われたのだろう。
    フレイムを守るには、従魔として登録…ううん。例えそれで証を付けても、見えなかったと言われたらそれまでだし、簡単に外せるし、さらっても窃盗程度の罪にしかならない。
    魔物には当然人権なんてない。

    迂闊だった。ダンジョンの五階層以降に行ける方法を教える事になったんだから、きっとこれからは色々な冒険者が来る。
    私が気をつけないと。

(フレイム、大丈夫?)
(大丈夫なのー。あいつらが見えなくなったら戻るのー)
(ランス、出て行くの我慢してくれて偉いよ)
(俺があいつらを攻撃したら罪に問われるのは主だと思ってな)
    当然ランスも従魔の登録はしてない。
    でも悪人以外は攻撃して欲しくないし、戦いになればランスも怪我するかもしれない。それは嫌だからね。

    冒険者達はダンジョンの中に入っていった。
(メイー!)
(ちゃんと逃げられて偉いよ。これからはより気をつけないとだめだね)
(人化をしていない時は、ああいう輩には攻撃して良いか?)
(それは…)

(剣を向けられれば相手を攻撃するのは魔物なら当然だ)
    そうなんだよね…でも出来れば身を隠して欲しいかな。
(ランス、メイが困ってるにゃ)
(ごめんね…でも逃げて欲しい、かな)
(ボクは逃げるのー!)
(フレイムは特に狙われると思う。だから気をつけて)
    魔法はイメージなんだから、時間が止まるのを意識しただけで空納は収納庫になるのに。

    魔物の魔法が属性に別れているのは特性だから。人族にはそういう物はないのに、どうしてみんな勘違いしてるんだろう。
    とにかく、これまで以上に冒険者が来る事を考えると、フレイムには特に気をつけてあげないとならないな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~

あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい? とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。 犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~

碓氷唯
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……

処理中です...