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スマホ農園の進化

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    ランスと一緒にお風呂に浸かりながら、ぼんやりと考え込む。
(ブレードディア、あの素早さと攻撃力は怖いな…)
(なら、我々だけで狩ってくる。バッグを持たせてもらえば、肉も手に入れられるだろう)

(ううん…そんな風に甘えたくない。私も、強くなりたいもん)
    並の3歳児よりは強いと思うけど、私はみんなの主だ。戦力にはなって欲しいけど、頼りきりは良くない。

    ここの人達の強さがどれ位かは分からないけど、変に属性化して分類しない分、魔法はできていると思う。
    一度、冒険者の使う魔法を見てみたいな。

    
    次の日。いつものように農園に入って、畑の方だけざっと終わらせて、仕掛けておいたオリーブの搾油器を見る。
    やっぱり搾れてないか。私がいない間は完全に時間が止まるみたいだ。

    今回は時間をかける用事がある。少しでも早く炊飯器の魔道具を作りたい。
    
    机なんかの家具は全て後回しだから、ボロのままだけど、勉強できない訳じゃない。
    ここならうっかり寝ない限り、際限なく勉強を進められる。

    前世の記憶は殆ど役に立たない。いや、家電のまま再現する方が難しいか。

    う…まだ朝なのに、眠くなってきた。ちょっとは動くか。
    これから使うと思うし、金属の採掘に行こう。
    
    実際のダンジョンと比べると、かなりのイージーモードだ。少し歩いて行くだけで、採掘ポイントが出てくる。最初はゴブリンやコボルト等、町の近くでもまだ見た事のない弱い魔物。

    あれ?これ、魔石!うそ…今までドロップするのは、ボロ布とか木の棒位だったのに。
    たまにだけど、小さくて質は悪そうだけど、魔石をドロップするようになった。

    やってくれたのはアルミネアだよね?…本当にどうやってプログラムに介入したのかとか突っ込み所は多いけど、嬉しい。
    これは付与の練習に使えそうだ。
    どうせなら、これから銀まで取って、アクセサリーに色々付与して出荷しよう。

    いつもより念入りにダンジョンを巡って、屑魔石を手に入れる。
    魔石そのものも一応出荷しておこう。
    使い切るまで。それこそ魔鉄で作った武器にまで付与して、出荷箱に入れる。

    …はっ。当初の目的は勉強だったのに…
    ミントティーを淹れて頭をスッキリさせると、また大きな本に向かい合った。

    この本は難しいな。もう少し初心者用の本があればいいのに。
    まあ、貰い物に文句は言えないけどね。

    …ん?寝落ちしたかな?
(にゃ?メイ、眠いならベッドに行くにゃ)
(ううん、起きるよ)

    それに、試してみたい事もあるし。
    塩とハーブに浸けられた豚バラ…じゃなくて、オークのバラ肉。
    エイジングは、対象の時間を経った事にする魔法。浸け込む時間の短縮だ。

    燻製器に入れて、チップに火を付ける。当然煙が出るけど、それを風魔法を利用して収束させ、亜空間外に排出させる。
    うん。ちゃんと出来てる。しかも魔力操作の訓練にもなるな。

(メイ、今日は出掛けないのか?)
(うん。色々とやりたい事があるし、料理も作り貯めしたい)

(なら、外に行ってくる)
(にゃーはメイと一緒にお留守番にゃ)
    シュガーは寒いのは苦手だもんね。
    ランスにマジックバッグを渡した。中にはポーションも入っている。

(気をつけてね…え?フレイムも行くの?)
(む…まあ大丈夫だろう)
    小さな弟分を頭に乗せて走る姿は微笑ましい。
    フレイムも雛の頃に比べたら大きくなった。今は鳩位の大きさだ。

    燻製、やるのはいいけどこれにかかりきりになっちゃうのもな…空気清浄機でもあればな…
    空気を吸い込みつつ、定期的にクリーンを作動させる。出来なくはないけど…とにかく炊飯器の方が先だよね。
  
    ずっと見ている必要はないよね。勉強しながらにしよう。

(メイ、くさいにゃー!)
    ?!はっ…ちょっと寝てた。
    随分拡散している。丁寧に収束して外に出す。
(ごめんごめん)
    理解できない物を読むと眠くなるよね…春になって、町に行ったら絶対初心者用の魔道具の本、買おう。

    ランス達が帰ってきたので、一緒にミルフィーユ鍋を食べた。
「ピイ…」
(フレイムはどうしたの?落ち込んでいるみたい)

(雪狐の魔物を、消し炭にしてしまったんだ)
(魔石もって事?)
(だから落ち込んでいる)

    ブレスの威力、上がってる?
(大丈夫だよ、フレイム。私もまだまだ経験不足だから、一緒に強くなろうね)

    フレイムの羽根が落ちた。…よし!
    付与、反重力。

「にゃっ!」
    シュガーがひらひらと舞う羽根を捕まえようと、じゃれる。
(何でにゃ?捕まえられないにゃー?)
「あはは。体は大きくても、猫だね」

    アサシンキャットなんて怖い種族で魔物だけど、今の私のペットであり家族だ。
(魔石は貴重じゃないのか?)
(スマホの中でも屑魔石なら手に入るようになったの。付与の練習したいから丁度いいなって)

    今は農園も初級ダンジョンしか入れない。でもこの先、魔物も強くなっていく。そうしたらまともな魔石を落とすようになるのかな…なったらいいな。

    ちょっと不安でもある。指先で動かしていた頃と違って、今は実際に戦っているから。
    シュガー達も一緒に入れたらいいのにな。
    色々やった事はあるんだよね。体をぴったりくっつけたり、影に入れたり。
    どうしてもできなかったのは、スマホのスキルが私にしかなかったせいかな?
    収納庫の中の物は出し入れ出来るのに、残念。

    私のスマホだけど、中身は色々違っている。電話もできないし、ラインも無理。これは死者からメッセージが届いたら怖いからだろう。音楽も聞けない。音を発する事ができないみたい。
    マップも時計もこっち仕様で、こっちの情報しか検索できない。

(ランス、スマホはランスにはどう見えているの?)
(ただの板だな。俺には何も見えん)
(光とかも?文字とか)
(光を発しているのか?)
    えええ…
    他の人には見られないようにしよう。掌大のただの板を真剣に弄る…痛い。

    まあ、他の人にスマホのスキルがない限り、見える事がないのはある意味有難い。
    特に本が高価なのに、検索のスキルとか、チートだもんね。一番のチートは物を取り出せるゲームの世界だけど。

    肉は出ないけど、野菜や果物は全部?って位出てくる。大豆は次の日にはもう乾燥して大豆状態だから残念ながら枝豆は食べられないけど、お陰で豆腐は作れた。あとはコージの花とやらを見つければ、味噌も作れるだろう。

    春になったら本格的に探してみよう。
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