上 下
9 / 166

シュガーの言葉

しおりを挟む
    農園でオレンジを育てられるようになった。そのまま食べても勿論美味しいけど、錬金術でクエン酸、そこから酢が作れる。油は道具屋で売っているし、これでやっとマヨネーズが作れる。
    設備屋でミキサーも買えるけど、寸胴鍋を買ってしまったから、予算が足りない。仕方ない。今回は魔法で頑張ろう。

    結構な時間農園に入っているけど、今の所余分に大きくなる気配はない。
    現実世界での時間分しか日々を過ごした事にならないのか。それはちょっと残念に思う。手足が短いのは戦いで不利だし、頭が重いのはバランスが悪い。転びやすいのもその為だろう。

    農園内ダンジョンで、進むと鉄鉱石の次は銅のはずなのに、何故か魔鉄が出てきた。
    普通の鉄と違って魔鉄は魔力を通す。それもあって魔鉄は魔道具作りには欠かせない金属だ。
    魔鉄そのものと魔鉄を使って簡単な武器を作って、付与の練習もする。斬撃強化と自動回復。鉄よりは付与の容量も多いけど、ミスリルには全く敵わないな。

    付与一つにつき、魔石も一つ使うから練習にも気を使う。魔道具が作れるようになったらもっと使うけど、ダンジョンでは魔石は取れない。

    畑一面はいつも何かしら植えている。食べる分は収納庫にしまい、残りはなるべく調理して出荷箱に入れる。
    牛、もう一頭欲しいな。1日に生産されるのは、紙パック一つ分のみ。毎日撫でていればそのうち量も増えてくるけど、時間は必要。

    ふと思った。色々異世界仕様になっているから、牛と鶏と思って育てているこの子達も、実は違うかも?
    コッコとモーモーだった。同名の魔物でもいたりするのだろうか?

    種も、そろそろ小麦が出てくるはずだ。そうすれば小麦粉を道具屋で買わずに済む。道具屋で買うとかなり割高だからね。
    それにしても、ここはいつでも春の陽気なのに、何でも季節関係なく育ってくれるから嬉しい。
    ついこの前も長ネギを収穫したばかりだ。焼きネギはとっても美味しかった。

    海岸の、砂浜に座ってのんびり海を眺めてたら、何かに指を挟まれた。
「痛っ?!」
    アサリだ。しかも挟まれてちょっと血がでたら、集まってきた。
    以前釣り用にとっておいた狼の肉片を置くと、面白いように集まってきた。
    とりあえずたらいに水を張ってシャベルで掬って入れていく。砂抜きするまでは収納庫には入れられない。
   手に触れていれば収納庫に入れなくても持ち出し可能なのは、こういう時とても便利だ。
    とりあえずは道具屋だ。料理酒を買おう。
    それにしても、大きいな。大アサリかな?

    鑑定    ハマアサリ    肉食。味が良い

    うーん?ハマグリなのか、アサリなのか…どっちでもいいや。

    果物は毎日実る。レベルが上がって身体能力も上がったから、楽々とは行かないけど、地味に資金を上げてくれる。今度からはオレンジもだから、そろそろキッチンの設備を充実させたい。

    スマホから戻ると、ランスがびっくりする。シュガーはさすがに慣れたみたいで、すり寄ってくる。
    たらいの中を覗いて不思議がっている。
(これは海岸で採れる物で、ハマアサリっていうんだよ。後で美味しく料理してあげるね?)

「ニャ…にゃー?」
(うにゃ!ご主人様聞こえるにゃ?)
(シュガー!念話覚えたんだね?)
(にゃーを助けてくれて、従魔にしてくれて、ありがとうございますなのにゃ!)
(シュガー、変に丁寧な言葉使わなくてもいいよ?私の事もメイでいい)
(うにゃ…でもメイはご主人様なのにゃ。とっても感謝してるのにゃ)
(私もシュガーには感謝してるよ?獲物も持ってきてくれるし、シュガーがいると淋しくない)
(にゃ…分かったにゃ獲物を持ってくればメイが美味しく料理してくれるにゃ。メイの料理は幸せの味にゃ)
(美味しく食べてくれるなら、嬉しいよ)

    本当に話せるなんて、私も嬉しい。そして、感謝の気持ちは伝わっていたけど、言葉で聞けてより嬉しく感じる。

    主と従魔。本当なら言葉通り、従属させる物かもしれない。
    でも私にとっては大切な家族だ。だって心が繋がっているんだもん。
(シュガー、大好きだよ。ランスもね!)
(メイの役に立てるように頑張るにゃ!)

    ランスの寝床に皮を敷いてあげたい。
    ベッドに寝られないランスは、亜空間の床に直接寝ている。
    皮は狼や兎から剥ぎ取った物があるけど、獣の脂が付いている。

    検索すると、ミョウバンが必要らしい。
    恐らく町に行けばあるだろう。魔物の皮は利用されてるみたいだし。

    ダンジョンに来た道を反対側に進めば多分町に着く。
    町には冒険者ギルドもあり、年齢制限はない。
    だけど果たして子供一人でやって行けるのか。気軽に考えていたけど、今更ながら不安になってきた。

    ええい!なるようになれだ!
(今日は町に行ってみるよ?)
(遠いにゃ…大丈夫にゃ?)
    ランスが地面に伏せる。乗れと言ってるみたいだ。
(ありがとう、ランス…無理しないでね?それと、他の人には見付からないようにね?)
    魔物に子供が拐われたなんて思われたくないし。

    腰にはウエストポーチ。剣もすぐに取り出せるようにウエストポーチにベルトで留めてある。ウエストポーチはマジックバッグになってるけど、実質ここには何も入っていない。全部収納庫の中だ。

「よおし!出発!」

    シュガーとランスは軽快に走り出した。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~

あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい? とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。 犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

【完結】神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。 神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。 追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。 居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。 小説家になろう、カクヨムでも公開していますが、一部内容が異なります。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

処理中です...