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王宮での仕事

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「お願いいたします!お茶汲みでも何でも仕事をさせて下さい!そもそもが私が貴族と決まった訳ではないではありませんか!」

    ジーク殿下は少し考えて、
「ならさ、俺の仕事手伝ってよ」
「それは…宜しいのでしょうか?」
「遊んだ分の仕事が溜まっている筈だし、ダメなのは渡さない」

「…はぁ」
「でもまずは、医者にちゃんと診て貰ってからだな」
「でも…傷はありませんわ?」
「あるだろ、謎の頭痛」
    それを言われると反論出来ないのですが…

    診断の結果は、大きな精神的ショックで一時的に記憶障害を起こしているそう。
    知識として覚えた事は覚えているそうで、人物に関する知識に欠陥がみえるとの事。いつ思い出すかは分からない。ただ、切っ掛けさえあればすぐにでも思い出すかもしれない。

    その日は思い悩んで何も手に付かなかった。
「ゆっくり休養…もマリーにとっては心苦しいんだよな?グレンもいてくれるから、無理ない程度に手伝ってくれ」
「分かりました」

    ただ、自分では何も出来ない事から、それなりのご令嬢ではないかと思う。お世話されるのに慣れている…これじゃ駄目だわ。
    現在進行形で迷惑しかかけていないのに、ドレスまで用意して頂いて…お返し出来るのかしら?

    次の日からは、書類の整理をしたりと出来る範囲でお手伝いさせて頂きました。時折意見を求められる事もありましたが、人物に関する事以外はするすると知識が出てきて、私自身戸惑いました。

    それに、優しくされる謂われもないのに…私は単なる居候。分かってはいたのですが。

「まあ!最近お側に侍る令嬢がいると噂で聞きましたが、本当でしたのね…あなた、どこの誰ですの?このわたくしを差し置いて殿下と親しくされるなんて」
「私は…記憶がなくて、すみません」
「何なんですの?どこの家の方?見覚えもありませんわ」

「イザベラ嬢。この方は殿下の客人です。アシュトン王国の方に無礼を働くと、国際問題になりかねません」
「ですが!ジーク殿下と親しくされていると噂が…」
「イザベラ嬢?婚約者でもないのに愛称呼びは不敬ですよ」

「ふ…ふん!少なくともこんな小娘に負けるわたくしではありませんわ!」
    イザベラ嬢と取り巻き令嬢達は、去って行った。

「ああ…私、気がつきませんでしたわ。今まで殿下を愛称呼びしてしまって…すぐにお詫びしなければ」
「まあまあ落ち着いて。マリー嬢には怒ってなかったんだし。珍しいよ?殿下が令嬢をお側に置くなんて」

    それはそもそも、そういう対象として見られていないだけでは?私の正確な年齢も分かりませんし、迷子の子供を預かっているような感覚なのかも?

    
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