殿下が探しているシンデレラは貴方の嫌いな私です

榎夜

文字の大きさ
上 下
30 / 49

29話

しおりを挟む

王弟殿は伯父様が差し出した資料を受け取ると、興味深そうに眺めています。

裁判の前に私も見ましたが聞いていた内容も、聞いていなかった内容も本当に細かく書かれていて、ここまで調査していたんだ、と驚きました。

伯父様は忙しい中、合間を縫って調べてくれたんだと思うと胸がいっぱいになります。

王弟殿下は一通り資料を読み終えると

「なるほど......これは、王妃がどう反論しても覆らないな」

と言って陛下にも資料を渡した後に王妃を見ました。

そうなんです。伯父様の資料は反論する隙間もないくらい完璧に裏付けも証拠も揃っています。

いくら必死に反論しても無駄ですよ。

王妃は顔を真っ青にさせて

「そんなっ!知らない!私は知らないわよ!」

頭を振り乱しながらそう叫んでいます。

いまだに認めるつもりがないみたいですね。

「私は悪くないわ......そうよ!全部あの男が...アージュ公爵が仕組んだことよ!」

そう叫ぶ王妃は瞳孔が開いていて、目が充血してしまっています。

なんでしょう......こんなことを思ってはいけないと思うんですが......

「覆らないって言われたのに、みっともないね」

ボソッと私が思っていることを代弁してくれたのは勿論レオンハルト様でした。

凄いですね。私の心の中でも見えているんでしょうか?

なんてことを思いながら

「そうですね......」

とだけ呟いてまた王妃を見つめました。

でも、認めたくないのは仕方の無いことなのかもしれません。

だって、今まで上手くいっていたのが急に崩れ落ちたんですもの。

現実逃避をしたくもなりますわ。

はぁ...と王弟殿下はため息をついた後に

「まぁ、これは名誉毀損の裁判だからな。これらの判断は全て兄上...陛下に任せよう」

そう言って裁判の締めに入りました。

結論は言うまでもありませんよね。

伯父様の勝利です。

後は陛下が王妃に対してどのような処罰を下すのか。

会場にいる皆がそれを待っています。

会場が静まり返る中、陛下は椅子から立ち上がって

「王妃の処罰を言い渡す前に、皆に伝えておかなければならんことがある」

と言ったことで一部がざわつき始めました。

これで最後ですね。

私たちは陛下がこれから言うことを聞かされていますよ。

これで、王妃様がやったこと全てが、皆に知れ渡ることになります。

もうどこにも居場所は無くなるでしょうが、自業自得ってやつですよね?

「王妃は他人との子を王子だと偽っていたことがわかった!」

陛下がそう言うと、会場が一気にざわつきました。

それもそうですよね。今まで王子だと思って接していたのに、急に違うだなんて。

王妃は目を大きく見開いて固まっています。

この場でそんなことを言われるなんて思わなかったんでしょうね。

でも固まっていたのはすぐに解けて、

「そんな...っ!嘘です!その子は陛下との子供ですわ!」

と陛下の元に駆けつけようとしましたが、近くにいた兵士に抑え込まれてしまいました。

一応、王妃なんですけどね?そんなに手荒でいいんでしょうか?

「何を言うか!儂はお前とは1度も夜を共にしたことがない!もちろん、初夜もだ!」

陛下がそう叫ぶと、流石に何も言い返せないのか、王妃は唇を強く噛んで黙ってしまいました。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

お別れを言うはずが

にのまえ
恋愛
婚約者に好きな人ができたのなら、婚約破棄いたしましよう。 エブリスタに掲載しています。

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

婚約破棄?とっくにしてますけど笑

蘧饗礪
ファンタジー
ウクリナ王国の公爵令嬢アリア・ラミーリアの婚約者は、見た目完璧、中身最悪の第2王子エディヤ・ウクリナである。彼の10人目の愛人は最近男爵になったマリハス家の令嬢ディアナだ。  さて、そろそろ婚約破棄をしましょうか。

処理中です...