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81話 フレグリッドside

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自室で待機するように、と言い渡されて結構な日にちが経った。

当然だが、まだ俺は部屋から勝手にでることは禁止されているし、パーティーで一緒にいたベネッサと会うことは遅家、手紙のやり取りすらも禁止されている、という状況だ。

はぁ......いや、宰相に渡された問題を解いていると国にとって辺境の存在がいかに大事なものか、そして国にどれほどの貢献をしていたのかは理解することが出来た。

俺のやったことは、一言で言うならば愚行だ、というのも。

ただ、だからと言ってこれほどまでに長い日数、部屋の中に閉じ込めておくのはおかしいのではないか?

それに、宰相は辺境がどれほど大事なものなのか教えたいみたいだが、俺がそれを知ってどうなる。

既にアリスティアとは婚約破棄をしたんだから、今更学んでも意味がないだろう。

そう思いながらも、普段通り特にやることもない、ということで宰相に渡された問題を解いていた。

えーっと?今日は貴族たちの仕事について、だが.......なんだ?辺境伯と他の貴族で比べられるように、と分けて書かれているんだな。

はぁ......わざわざそんなことをするなんて、相当暇なんだな。

なんて思っていると、急に扉をコンコンとノックする音が聞こえてきた。

ついさっき昼食をとったところだから......今の時間だと宰相か?

なんて思いながら、入室の許可を出すと扉を開けたのはメイドだが、部屋に入ってくる様子は一切ない。

まぁ、別に入って来なくても何も問題はないけどな。

ただ、俺に顔も見せずに用件だけ伝えて行くのは少しおかしいのではないか、と思っただけだ。

メイドの対応に、思わずため息をついていると、メイドは何を思ったのか

「執務室に来るように、とのことです」

とだけ言って、逃げる様にその場を後にした。

はぁ......部屋で待機する前は普通に接してくれていたのに、あのパーティーだけでここまで生活が変わるとはな。

それにしても、執務室に来るように、ということは、そろそろ父上も俺のことを許したということなのか?

もしそうだとしたら、やっと窮屈な生活から解放される!

そう思った俺は、上機嫌に部屋を後にした。


執務室に到着すると、なぜか扉の前でメイドが待機をしていて、俺の姿を見るなり

「殿下、陛下が辺境伯たちとの会話を扉の外で聞くように、とのことです」

淡々とした口調でそう言ってきたが、俺と話があるわけでもなく話を聞くように?

しかも辺境伯たちとの会話、って........なぜ俺が?

そう思った俺は確認をするように

「父上が、か?」

そう尋ねると、メイドは静かに頷いてゆっくりとほんの少しだけ、執務室の扉を開けた。

つまり、中には入らないでバレないように聞け、ということか。

はぁ......てっきり父上と話をするものだと思っていたが、仕方がない。

なんて思いながら、メイドに促されるがまま扉に耳を近づけた。

すると、執務室の中から

「儂らもこの国から手を引こうと思ってな」

という父上より年齢が上であろう男の声が聞こえて来たな。

きっと辺境伯の声なんだろうが........どんな人なのかわからない、ということ本当に話を聞いても良いのか、と考えてしまうが父上が指示を出したんだからな。

俺は知らないぞ。

そう思いながら、深く息を吐いた後に改めて耳に意識を集中させた。

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