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64話
しおりを挟む私の答えに陛下がどのような反応をするのか、少し怯えながら様子を窺っていると、私が考えていることを察したんでしょう。
陛下は私の顔をジッと見つめたかと思ったら、すぐにニッと笑ってきましたわ。
そして
「なんだ?もしかして、今のを断ったから、と約束をなかったことにされると思ったか?」
と言ってきた陛下の顔は私の反応を見て面白がっているようで、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべていましたわ。
うーん.....この様子を見ると気分を害しているわけではなさそうですわね。
なので、きっと約束を断られる、という心配はないと思いますが.....ここから、やっぱりダメだ、となる可能性もありますわ。
期待しすぎない方が......。
なんて思っていると
「一度約束したことは破らんよ。それに、今のは提案しただけだからな。断られることは想定内だ」
陛下はそう言うと、優しく微笑んでくれたので安心しましたわ。
やっぱり本人の口から直接、約束を守る、と聞かないと安心できませんもの。
ただ、やっぱり断ってしまったことについては少し申し訳なく思えてくるので複雑な心境といいますか.......。
とりあえず、ニコニコとしている陛下に
「そ、それは良かったですわ.......」
とだけ言いましたが、どんな顔をするのが正解なのか、わかりませんでしたわ。
するとそんな私の考えが顔に出てしまっていたんでしょう。
ニコニコしていた陛下の顔が曇ったかと思ったら
「まぁ、最初から無理だとは思っていた提案だ。そんな申し訳なさそうな顔をされるとこっちまで申し訳なくなってしまう」
と言われてしまいました。
確かに断ったほうの私が申し訳なさそうにしていたら陛下の方もどんな顔をしていいのかわかりませんわよね。
謎の罪悪感のせいで、陛下たちのことを考えられていませんでしたわ。
心の中で陛下に謝罪をして、なるべく私の表情が曇らないように、と自分でも気を付けながら改めて椅子に座り直しましたわ。
すると、私が気持ちを切り替えたことを確認した陛下は
「とりあえず、アリスティア嬢がこれから竜を育てる、ということはわかった。何かあったらすぐに相談してくれ」
と言って話を締めましたわね。
いやぁ......緊張しましたわ。
何を言われるか想定していたものの、やっぱり自分よりも立場が上の人を相手にお断りするのはどんな話であっても落ち着きませんわね。
まぁ、とりあえずコシューミアを私が育てる、ということに同意はしてもらえましたし後はお父様達に説明をして部屋を増やしてもらえばどうにかなるでしょう。
なんて思いながらコシューミアの頭を撫でていると、今まで様子を窺っていたリーファイ様が遠慮気味に手を上げてこう言いましたの。
「僕から1つお願いがあるんだけどいいかな?」
お願い、ですか。
さっき、陛下の提案を断った、ということもあって変に気を張ってしまいますが一体なんでしょう?
リーファイ様のことなので、変なことは言わない、と確信していますが.....。
緊張しながら、遠慮気味に手を上げたリーファイ様に
「なんでしょうか?」
と尋ねると、
「月に3回.....いや、月に1回でもいいから竜の様子を見せに来てくれないかな?」
と言ってきましたの。
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