57 / 88
56話
しおりを挟むヌミア山から出発して30分。
特に何も問題なくグレズリューン王国へと戻った私たちは、とりあえずコシューミアのことを話しておかないと、と思っていたんですが......そういえば陛下は仕事があるから、と執務室に行ってしまいましたのよね。
なんて思いながら、到着した応接室の中を見渡していると、リュックの中から
「ぴぃっ」
という可愛い鳴き声が聞こえてきましたわ。
さっき様子を見た時は、気持ちよさそうに眠っていたのでそっとしていましたが、目が覚めたみたいですわね。
せっかくですし、一度外に出してあげた方が......と思ってファスナーに手をかけると、それよりも先に
「鞄に入れたままだと狭いだろ」
と言ってディーヴァンがリュックのファスナーを開けましたわね。
やっぱり、そっけない態度をとっていますが、自分の妹の子供というのは可愛いものなんでしょう。
......あら?ということは、コシューミアにとってディーヴァンは伯父様......ですわよね?
チラッとディーヴァンを見ると、鞄から出てきたばかりのコシューミアが
「ぴぃぴぃっ」
と鳴きながら飛びついてくるのを焦った顔をして受け止めていましたわ。
最初はどうなるか、と思いましたが......これなら仲良くやって行けそうですわね。
そう思いながら2人の様子を眺めていると、コンコン、と応接室の扉をノックする音が聞こえてきましたわ。
きっと私たちが戻った、ということを聞いてリーファイ様が戻って来てくれたんだ、と思って扉を開けに行くと、そこにはリーファイ様ではなくカイロス様が立っていて、その後ろでは
「なんか面白いことがあるような気がしたんだよなぁ」
と言いながらニヤニヤと笑っているガルファーの姿が。
面白そうなこと、といえば確かにそうかもしれませんが........相変わらず人の姿をしたガルファーは意地の悪そうな顔をしていますわね。
まぁ、その顔と同様に性格も少し難があるので、そんなガルファーと契約をしているカイロス様を尊敬してしまいますわ。
なんて思いながら、扉の前でオロオロとしているカイロス様に
「え、えーっと......陛下から手紙を預かってきてくれたんじゃないんですの?」
と苦笑しながら尋ねると
「ごめんね。どうしてもガルファーが応接室に向かう、って騒いでて、こっちも何があるのか.......」
と答えている途中で、ガルファーが
「ちょっと失礼しまーす」
なんて言いながら応接室の中に入ってきたではありませんか。
あぁ、もちろんここは我が家ではありませんし、隣国の王宮ですからね?
入ってくるな、というのは無理なのはわかっていますわよ?
ただ、あまりにもガルファーが流れる様な動きで入ってきた物だから驚いてしまって
「え、えぇ!?」
と大きな声を出してしまいましたわ。
ま、まぁ......面白そうなこと、と言っても中にはディーヴァンとコシューミアがいるくらいですからね。
別に何も問題はないと思っていますが.........。
そう思ったときでしたわ。
16
お気に入りに追加
3,341
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は処刑されないように家出しました。
克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。
サンディランズ公爵家令嬢ルシアは毎夜悪夢にうなされた。婚約者のダニエル王太子に裏切られて処刑される夢。実の兄ディビッドが聖女マルティナを愛するあまり、歓心を買うために自分を処刑する夢。兄の友人である次期左将軍マルティンや次期右将軍ディエゴまでが、聖女マルティナを巡って私を陥れて処刑する。どれほど努力し、どれほど正直に生き、どれほど関係を断とうとしても処刑されるのだ。

十分我慢しました。もう好きに生きていいですよね。
りまり
恋愛
三人兄弟にの末っ子に生まれた私は何かと年子の姉と比べられた。
やれ、姉の方が美人で気立てもいいだとか
勉強ばかりでかわいげがないだとか、本当にうんざりです。
ここは辺境伯領に隣接する男爵家でいつ魔物に襲われるかわからないので男女ともに剣術は必需品で当たり前のように習ったのね姉は野蛮だと習わなかった。
蝶よ花よ育てられた姉と仕来りにのっとりきちんと習った私でもすべて姉が優先だ。
そんな生活もううんざりです
今回好機が訪れた兄に変わり討伐隊に参加した時に辺境伯に気に入られ、辺境伯で働くことを赦された。
これを機に私はあの家族の元を去るつもりです。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

婚約破棄で見限られたもの
志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。
すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥
よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

見知らぬ子息に婚約破棄してくれと言われ、腹の立つ言葉を投げつけられましたが、どうやら必要ない我慢をしてしまうようです
珠宮さくら
恋愛
両親のいいとこ取りをした出来の良い兄を持ったジェンシーナ・ペデルセン。そんな兄に似ずとも、母親の家系に似ていれば、それだけでもだいぶ恵まれたことになったのだが、残念ながらジェンシーナは似ることができなかった。
だからといって家族は、それでジェンシーナを蔑ろにすることはなかったが、比べたがる人はどこにでもいるようだ。
それだけでなく、ジェンシーナは何気に厄介な人間に巻き込まれてしまうが、我慢する必要もないことに気づくのが、いつも遅いようで……。

無実の罪で聖女を追放した、王太子と国民のその後
柚木ゆず
恋愛
※6月30日本編完結いたしました。7月1日より番外編を投稿させていただきます。
聖女の祈りによって1000年以上豊作が続き、豊穣の国と呼ばれているザネラスエアル。そんなザネラスエアルは突如不作に襲われ、王太子グスターヴや国民たちは現聖女ビアンカが祈りを怠けたせいだと憤慨します。
ビアンカは否定したものの訴えが聞き入れられることはなく、聖女の資格剥奪と国外への追放が決定。彼女はまるで見世物のように大勢の前で連行され、国民から沢山の暴言と石をぶつけられながら、隣国に追放されてしまいました。
そうしてその後ザネラスエアルでは新たな聖女が誕生し、グスターヴや国民たちは『これで豊作が戻ってくる!』と喜んでいました。
ですが、これからやって来るのはそういったものではなく――
加護を疑われ婚約破棄された後、帝国皇子の契約妃になって隣国を豊かに立て直しました
黎
ファンタジー
幼い頃、神獣ヴァレンの加護を期待され、ロザリアは王家に買い取られて王子の婚約者となった。しかし、侍女を取り上げられ、将来の王妃だからと都合よく仕事を押し付けられ、一方で、公爵令嬢があたかも王子の婚約者であるかのように振る舞う。そんな風に冷遇されながらも、ロザリアはヴァレンと共にたくましく生き続けてきた。
そんな中、王子がロザリアに「君との婚約では神獣の加護を感じたことがない。公爵令嬢が加護を持つと判明したし、彼女と結婚する」と婚約破棄をつきつける。
家も職も金も失ったロザリアは、偶然出会った帝国皇子ラウレンツに雇われることになる。元皇妃の暴政で荒廃した帝国を立て直そうとする彼の契約妃となったロザリアは、ヴァレンの力と自身の知恵と経験を駆使し、帝国を豊かに復興させていき、帝国とラウレンツの心に希望を灯す存在となっていく。
*短編に続きをとのお声をたくさんいただき、始めることになりました。引き続きよろしくお願いします。

【完結】わたしは大事な人の側に行きます〜この国が不幸になりますように〜
彩華(あやはな)
恋愛
一つの密約を交わし聖女になったわたし。
わたしは婚約者である王太子殿下に婚約破棄された。
王太子はわたしの大事な人をー。
わたしは、大事な人の側にいきます。
そして、この国不幸になる事を祈ります。
*わたし、王太子殿下、ある方の視点になっています。敢えて表記しておりません。
*ダークな内容になっておりますので、ご注意ください。
ハピエンではありません。ですが、救済はいれました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる