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55話 フレグリッドside
しおりを挟むこれほどまでに分かりやすい嘘をつかれるなんて、随分と俺をバカにしているんだな。
まぁ、ブブタス公爵はそういう奴だ、というのはわかっていたが.......やっぱり腹が立ってしまうものだ。
なんて思いながら、淡々とアリスティアの凄さについて話をするブブタス公爵に
「それは、たまたまだったかもしれないし......」
と言うと、俺はこの国の王子だというのに
「まぁ、実際の戦いを見ていないので信じられませんよね。ですが、事実です」
そう言って大きくため息をついたではないか。
流石にこれは見逃せないし、無礼にも程があるだろう。
やっぱりこんなのが父上の右腕だなんてありえない話だったんだ。
俺からブブタス公爵を解雇にするようにお願いして...........なんて思っていると、何を言っても俺がアリスティアを認めることはない、と判断したんだろう。
ブブタス公爵はどこからかスッと紙を取り出して机の上に置いた。
そして、俺に背中を向けたかと思うと
「女ごとき、などと言うのであればその問題集と説いて、王宮の兵士10人と同時に手合わせをしてみてください。アリスティア様は余裕でこなしていましたよ」
そう言って、俺の部屋を後にした。
はぁ......ため息をつきたいのはこっちだというのに.......。
ブブタス公爵がいなくなった部屋は、いつも何も変わりがないはずなのに一気に静かになったような気がした。
まぁ、人と話をすること自体が久しぶりだったからだろうな。
なんて思いながら少し癪ではあったがブブタス公爵が置いて行った紙を手に取った。
「はぁ......王宮の兵士10人と同時に手合わせなんて無理に決まっているだろ。腕が2本しかないのに出来るわけがない」
なんて1人で呟きながら紙を見た俺は、思わず目を大きく見開いてしまった。
だって、ブブタス公爵が置いて行った紙には、てっきり竜のことが書かれているんだと思っていたのに、全く違うことが書かれていたからな。
そりゃあ、驚くに決まっているだろう。
ブブタスが置いて行った紙には、一枚目にフージュリン辺境伯とアリスティアの功績が書かれていて、表面だけでは足りず裏面までしっかりと文字が書かれていた。
そして2枚目、3枚目は問題集のようなものになっているが、そこに書かれているのは学園で習うような、基礎的な問題などではなく、俺が見たこともないような問題ばかりで、挙句の果てに数式なんかも書かれていた。
他にも色々と書かれているが......これの何が竜騎士に関係あるんだ........?
いや、もしかして、竜騎士などは全く関係なくて俺にこの問題を解かせるためにわざと竜騎士の名前を出してきた?
.........それは考えすぎだな。
きっとこの問題のどこかに、竜と関係している何かがあるのかもしれない。
それに、もしこの問題を解くことが出来たら、俺も竜騎士に慣れるってことだしな。
そう思った俺は、もう何か月も使っていないペンにインクを付けた。
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