どうやら我が家は国に必要ないということで、勝手に独立させてもらいますわ~婚約破棄から始める国づくり~

榎夜

文字の大きさ
上 下
12 / 88

11話

しおりを挟む
そして次の日。

目が覚めた私は、思いっきり部屋のカーテンを開けて、外にいるディーヴァンの姿を確認しましたわ。

昨日はあの後、1時間ほどディーヴァンの背中に乗って夜の空を楽しみましたが、今日からまた面倒な話し合いが始まりますのよね。

はぁ.....ということはディーヴァンと話をする暇がなさそうですし、今日は稽古もお休みということになるんでしょうか?

そう思いながら、クローゼットの隣にある棚から剣を手に取りましたわ。

女なのに剣?と思うかもしれませんが、我が家は私が戦闘向き、お兄様が宰相向きと気付いてからそれぞれの得意分野を伸ばすことに決めましたのよね。

とはいえ、剣術が苦手なお兄様でも、王都に出てしまえばそこそこの腕前ですわよ?

ただ、辺境のような戦いの多い場所では気付いたら実力が上がっていきますのよね。

なんて思いながら、上から下へ剣を下ろしたときでしたわ。

コンコンを控えめなノックの後に

「お嬢様、旦那様達が既にお待ちですよ」

とメイドが部屋の中に入ってきましたが、それとほぼ同時に私が剣を下ろしてしまったので、本当に危ない状況になるところでしたわ。

この剣は切れ味もいいので、ヘタしたら首が切れてしまう可能性だってあります。

ですが、メイドはもう慣れてしまっているのか

「あ、タイミングが悪かったですね」

というだけで、驚くどころか怖がることもなくクローゼットの中から私のドレスを用意していますわね。

はぁ.....ここに来た当時は悲鳴を上げていたのに、慣れって怖いものですわね。

なんて思いながら、さっき振り下ろした剣を鞘の中に納めて

「あら、本当?ということは、やっぱり稽古は不参加ということかしら?」

と首を傾げましたわ。

すると

「そうですね........食事をしながら昨日の話の続きだ、とのことなので、そのまま話し合いになるかと」

無表情で淡々と言うメイドに

「やっぱりそうよねぇ.....」

と言いますが、全く反応がないので、少し寂しくなってきますわね。

まぁ、普段から私の専属メイドとしてよくやってくれているのはわかっているので、文句はありませんが....もう少し表情が豊かになって欲しいなぁ.....なんて希望はありますわよ。

そう思っている間にもメイドは私にドレスを着せて、メイクまで完璧に終わらせていますわ。

といっても、メイクに関しては得に何も付けていないので、リップだけなんですけどね。

淡々と髪の毛を編み込んでいくメイドに

「昨日も剣を振っていないから体が鈍ってしまいそうで怖いわ」

と言って苦笑すると

「ですが、お嬢様は辺境で男に勝るほどの腕前ではありませんか。そう簡単には落ちませんよ」

普通に聞くと嬉しい言葉ですが、感情がわからないのでどう反応していいのかわからず

「それは女だし、領主の娘だからって手加減をしている可能性だってあるじゃない。まぁ、そんなことをされたら速攻で半殺しだけど.......」

そう言うと、私の言葉に

「それがわかっていて手加減する人はもういませんよ」

メイドはそう言って苦笑したのが鏡越しに見えて、少し嬉しくなりましたわ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?

ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。 一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした

水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」 子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。 彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。 彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。 こんなこと、許されることではない。 そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。 完全に、シルビアの味方なのだ。 しかも……。 「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」 私はお父様から追放を宣言された。 必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。 「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」 お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。 その目は、娘を見る目ではなかった。 「惨めね、お姉さま……」 シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。 そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。 途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。 一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

幼い頃に魔境に捨てたくせに、今更戻れと言われて戻るはずがないでしょ!

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 ニルラル公爵の令嬢カチュアは、僅か3才の時に大魔境に捨てられた。ニルラル公爵を誑かした悪女、ビエンナの仕業だった。普通なら獣に喰われて死にはずなのだが、カチュアは大陸一の強国ミルバル皇国の次期聖女で、聖獣に護られ生きていた。一方の皇国では、次期聖女を見つけることができず、当代の聖女も役目の負担で病み衰え、次期聖女発見に皇国の存亡がかかっていた。

婚約者の態度が悪いので婚約破棄を申し出たら、えらいことになりました

神村 月子
恋愛
 貴族令嬢アリスの婚約者は、毒舌家のラウル。  彼と会うたびに、冷たい言葉を投げつけられるし、自分よりも妹のソフィといるほうが楽しそうな様子を見て、アリスはとうとう心が折れてしまう。  「それならば、自分と妹が婚約者を変わればいいのよ」と思い付いたところから、えらいことになってしまうお話です。  登場人物たちの不可解な言動の裏に何があるのか、謎解き感覚でお付き合いください。   ※当作品は、「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています

悪役令嬢は処刑されないように家出しました。

克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。 サンディランズ公爵家令嬢ルシアは毎夜悪夢にうなされた。婚約者のダニエル王太子に裏切られて処刑される夢。実の兄ディビッドが聖女マルティナを愛するあまり、歓心を買うために自分を処刑する夢。兄の友人である次期左将軍マルティンや次期右将軍ディエゴまでが、聖女マルティナを巡って私を陥れて処刑する。どれほど努力し、どれほど正直に生き、どれほど関係を断とうとしても処刑されるのだ。

処理中です...