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339話 アーリアside

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お母様が応接室から出て行った後、取り残された私はただただ呆然と応接室の扉を見つめたわ。

なんというか......まさかお母様がこれほどまでにバカだったとは.......。

いや、いくらバカでも役人が出てきてあんなことを言っていたのよ?

流石にマズいと思って行動を改めるのが普通なんじゃないの?

自分の母親ながら、何を考えているのか全く理解が出来ない、と思ったのと同時に、さっきのお母様の言葉、そして行動を思い出して沸々と腹の底から何かがこみ上げてきたわ。

何よ......何よ、何よ!

やっぱりお母様は自分のことしか考えていない、ということがハッキリとわかったわ。

こんなのと一緒にいるよりだったら、まだお父様について行って平民になっていた方がマシだったんじゃない!?

そう思いながら、どこにこの苛立ちをぶつけたらいいかわからない私は、とりあえず部屋に戻るために椅子から立ち上がると

「お、お嬢様.........」

とメイドが遠慮気味に話しかけてきたわ。

でも、今の私にとってはそんなメイドの態度にもなんだか腹が立って

「なによ!」

怒鳴りつける様にそう言うとヒッという短い悲鳴の後に

「そ、その......だ、旦那様の名前を名乗る、旦那様らしき人がいらっしゃって........」

と私に言ってきたわ。

これには

「はぁ!?」

と返事をしたけど、もし本当ならどれだけ嬉しいか。

いや......嬉しいの?

だって、お父様は私になんの相談もなしにお母様を押し付けるかのように逃げたのよ?

そもそも、メイドが旦那様らしき人と言っている時点でお父様ではないんじゃないの?

平民の誰かが私たちをからかう為にお父様だと名乗っていたずらをしに来たとか.......。

そう思った私は

「お父様が帰ってくるなんてあるわけがないじゃない!さっさと追い返しなさい!」

と言ったけど、メイドは

「で、ですが.....お嬢様と話をするまで帰らないと........」

私が怒っているせいか、ビクビクと怯えながらそう言ってきた。

ったく......何が、話をするまで帰れない、よ。

平民からするとそんなに私が暇そうに見えるってこと!?

本当に腹が立つわ......。

そっちがその気なら、受けて立とうじゃないの。

そう思った私は、苛立つ気持ちを隠すことなく、門へと急いだわ。



門に向かう途中

「だから、通すことは出来ない!」

という門番の声が聞えてきて、思わず立ち止まって会話に耳を傾けたわ。

だって、もし来ているのが本当にお父様だったら普通は声でわかるものね。

あー....でも気が弱いお父様のことだから、あんなに強く言われたら帰ってしまうかしら?

なんて思いながら会話を聞いていると

「なぜだ!お前らは主人の顔も忘れたのか!」

という怒鳴り声が聞こえてきた。

こんなのお父様じゃないわ。

だって、お父様は自分のことを主人だ、なんて言わないし、何よりここまで傲慢な態度をとらないもの。

やっぱり平民が私をからかう為に来たのね.......。

そう思った私は、門番と男の会話を聞くのをやめ、再び門へと歩みを進めたわ。
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