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338話 アーリアside
しおりを挟む顔色を悪くさせて応接室の中に入っていったメイドに続いてお母様、私の順で中に入ると、2週間前に来た役人が優雅に椅子に座ってお茶を飲んでいる姿が見えたわ。
お金の用意は全くできていないし、お母様もこの状態だし、どうにかして役人を説得できればいいんだけど.......お母様のことだから、役人に頭を下げる、なんてことはしないわよね。
チラッと隣にいるお母様を見ると、自分のせいでこんなことになっているというのに、反省どころか暇そうに欠伸をして役人の正面にドカッと座ったわ。
そんなお母様を見て、当然冷や汗が出そうになったけど......やっぱり私がどうにかして説得するしかない、ということね。
そう思いながら自分に気合を入れて、お母様の隣に座ると役人は早速と言わんばかりに
「お金の用意は出来たんですか?」
と話を始めたわ。
それに対して、どう答えるのか、と思ってお母様に視線を向けると、役人と話すことはない、とでも言っているかのように髪の毛を指に巻き付けて遊んでいるのが見えて咄嗟に
「え、えーっと.......それは...その.........」
どうにか答えようとしたけど、いい言葉が浮かばず、モゴモゴとしてしまったわ。
そんな私を見た役人は
「聞かなくてもその反応を見ればわかりますね。約束通り爵位と土地は国に返還してもらいます」
前と同じように淡々とした口調でそう言ってきたから、これには
「ま、待ってください!」
と椅子から立ち上がって役人を説得しようとしたけど、私が何かを言う前に
「ふんっ!勝手に言わせておけばいいのよ!国に返還だなんて出来るわけがないんだから」
そう言うお母様は、なぜか自信満々で役人を睨みつけていたわ。
正直、お母様の言葉が本当ならどれだけありがたいか......。
でも本当ではないからこそ、役人はわざわざここに来ているんだ、とはわかっているけど、役人に対して何を言えば良いのかもわからず、黙り込んでいると、その間にも
「まぁ、元々この家のことに関してはあまりいい噂がありませんしね。立地はいいので有効に使わせてもらいますよ」
役人はそう言うと、話しは終わった、と言わんばかりに私たちの言葉を待たずに応接室を後にしたわ。
これは絶対にマズい状況よね。
すぐに出て行け、とは言われなかったから良かったけど、それもいつまでなのか.......。
そう思った私は、役人の後を追いかける様に部屋を出ようとしたんだけど、そんな私に対してお母様は
「放っておけばいいのよ」
と言って応接室を出るのを止めたわ。
どうしてこんなにも危機感が無いのか......。
こんな状況になっているのに楽観視しているお母様に苛立って
「なぜ喧嘩を売るようなことを言ったのよ!本当に返還を要求されたらどうす.........」
と言ったけど、私の言葉を遮るように、お母様は
「だーかーらー」
と声を張り上げた。
これには流石に驚いてお母様の顔を見ると、濃い化粧がされた汚い顔を歪めながらこう言ってきたの。
「何度も言わせないで。この土地も爵位もは国の中でも数少ない50年以上も我が家のものなのよ。今更返せだなんてありえない」
そして、お母様は呆然としている私に
「もう話は終わったんでしょう?私は忙しいのよ!」
吐き捨てる様にそう言うと、応接室を後にしたわ。
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