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322話
しおりを挟む多分ですが、ここに来るまでの間デール様は園庭にいたほとんどの生徒たちからの視線を感じたでしょうね。
だって、ここは他の生徒たちが使うところと少し離れたところにありますし、カイン様たち以外の人が使うことがありませんもの。
誰が見てもカイン様に用事があって来た、としか思えませんのよね。
なんて思いながら、空いている椅子に座るようデール様を促すと、なんと
「失礼します」
としっかりと言ってから椅子に腰を掛けたではありませんか。
私の知っているデール様はどこに行ったのか、というくらい礼儀正しくなっていますし、気のせいかもしれませんが表情が柔らかくなったようにも見えます。
やっぱりデール様は今までの自分の行動や発言を悔いて変わった、ということなんでしょうか?
そう思いながら、チラッとカイン様に視線を送ると私の方を見て小さく頷いたのが見えたので
「それで、お話というのは一体なんですの?」
と私の方から話を切り出しましたわ。
するとデール様は
「あぁ、まずは俺の勝手な都合で婚約破棄をしたこと......ちゃんと謝罪させて欲しい」
と言うと今座ったばかりだというのに椅子から立ち上がって地面に座り込みましたわ。
これには驚いて
「な、なんですの!?」
と声をあげてしまいましたわ。
当然ですが会話を見守る予定だったカイン様達も驚いた顔をしてデール様を見ていますし.....。
エリザベート様なんて、これでもか、というほど大きく目を見開いてデール様のことを見ていますわ。
その顔がなんだか面白くて普段だったら絶対に笑ってしまいますが、今はそんな状況でも空気でもないので、ただただ無言でデール様の言葉を待っていると
「本当にすまなかった.......言い訳だと言われてしまうだろうが、どうしても、結婚してあの2人がいる、と思うと結婚したいと思えなくなって.......」
そう言って、デール様は地面に両手を付けて深々と頭を下げましたわ。
流石にここまでしっかりと謝罪をされるなんて想定外ですし、あのデール様が私に対して頭を下げている、ということ自体が信じられない私は
「あ、頭をあげてください」
と言って、デール様が頭を上げたのを確認した後に
「確かに言い訳ですわね。それに、私はあの2人のことをデール様にはお話していたはずですし」
苦笑しながらそう言うと、デール様は本当に申し訳なさそうな顔で
「本当にすまない.......」
と謝罪をしてきました。
今、謝罪をされている、というのはわかっていますが......やっぱりデール様がこうやって頭を下げている事実がいまだに信じられませんわ。
ですが、実際に私の目の前では私にしっかりと謝罪をしているデール様がいるのは事実ですし.......表情を見ても誰かに言わされている、とかではなさそうです。
なので、眉を下げて不安そうな顔をしているデール様に
「別にそれに関しては終わったことですしもういいですわ。私もあの2人を放置したのは悪かったですし」
そう言うと、泣きそうな笑みを浮かべましたわ。
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