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317話

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さて、無事に先生との話を終えた、と思った私は、改めて先生に謝罪と感謝を告げて教員室を去ろうとすると、その前に先生の方から待ったをかけられてしまいましたわ。

やっぱり休んでいた期間が長い、ということで何か話したいことがあるのか、と思った私は先生の言う通りに立ち止まると、先生は言うか言わないか、悩んでいたみたいですが私が待っていてくれている、ということで意を決したかのように

「カインさんとは一体どんな関係なんでしょう?聞いたところ陛下にも気にかけてもらっているとのことですし......」

と私に質問してきましたわ。

すると先生がそう言った瞬間、教員室にいた先生たちの動きがピタッと止まったのがわかりましたわね。

それと同時に、私がなんて答えるのか気になっているのか聞き耳を立ててなるべく話が聞えるようなところへ、とさりげなく私たちとの距離を近付いてきましたわ。

それはカイン様もエリザベート様も気付いたようで、私と先生の方を見て様子を窺っているのに気付いた私は、先生に話しても良いのか、とカイン様に視線を送ると小さく頷いたのが見えたので

「えーっと.......」

と最初に間を置いてからカイン様と私の関係、そして陛下のこともお話ししました。

そうは言っても深い関係というわけでもないので

「私のお父様と陛下が友人で、カイン様とは幼馴染という関係だ」

ということをお話しただけなんですけどね。

ただ、やっぱり学園の先生の中でも親のいない私のことを蔑んでいる人も数人いますのよね。

なので、ここで私がカイン様達と何かしらの関りがある、と言うことによって今後カイン様たちと話をしていても変な噂が立たないと思いましたし、何より私をバカにしていた先生たちを一泡吹かせたような感じにもなりますもの。

そう思って当てはまる先生たちの方にチラッと視線を送ると、まさかの事実に顔色を悪く驚いた顔をして固まっていましたわ。

全く......そんな顔をするくらいなら、どのような生徒に対しても平等にしておけばよかった、という感じですわよね。

心の中で小さくため息をつく私に、先生は驚いた顔を一瞬したものの

「そうだったんですね。カインさんがセリスティアさんのことを話しに来たのも納得しましたよ」

そう言った先生はずっと抱えていた疑問が晴れて喜んでいるようにも見えましたわ。

うーん......こう言ってしまうのは失礼ですが、やっぱり先生は変わっていますわよね。

まぁ、変に気を遣われるのも嫌ですしいいんですが、なんだか複雑な心境ですわ。

そんなことを思いながら、今度こそ教員室を後にしようと

「では失礼しますわ」

と言って先生に背を向けましたわ。

そんな私の背中に

「課題は本当に急がなくていいですからね」

と声をかけてくれた先生の優しさに嬉しく思いながら、教員室の端の方で待っていたカイン様達に合流しましたわ。

私に視線を送っている先生が数人いましたが、気付いていない、ということにしておきましょう。

まぁ、今更になって媚を売ってくるようであれば何かしらの対処は必要かもしれませんが、あと2ヶ月ほどで卒業することを考えたら気にする必要もありませんわよね。
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