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306話
しおりを挟むどうやら叔父様の手は思った以上にと深く切ってしまったみたいで、オロオロと傷口を押さえているものの、いまだに血が止まる気配がありませんわ。
うーん.....こう思ってしまうのは悪い事かもしれませんが、そのまま貧血になって倒れてしまえばいいのに。
そうしたら、その間に叔父様が運んできた荷物を全て家の外に置いて、叔父様のことは違うお屋敷に......ということが出来るんですけどね。
なんて思いながら、チラッと荷物を運んでいた男性達に視線を向けると、どうやら私たちの話を聞いて色々と思うことがあったみたいで
「おい、今の言葉を聞いたか?」
「ということは、俺たちってこれを運んでもいいのか?もしかしたら訴えられる可能性もあるぞ........」
「いや、でも俺たちは依頼を受けてやっているんだから訴えられても......」
顔色を悪くさせながら、そう言っているのが聞こえてきましたわ。
まぁ、この男性達は依頼されて荷物を運んだだけですしね。
もちろん訴える、なんてことをするつもりはありませんでしたわ。
ただ、私は別のことでこの人たちに怒っていることがありますのよ。
そう思った私は、くるっと体の向きを男性達に変えて、ニッコリと微笑みましたわ。
そして、一歩、また一歩、ゆっくりと男性達に近付くと、私に対して力では勝てることがわかっているのに、顔を真っ青にしてプルプルと震えているのがわかりましたわ。
多分私が完全に怒っている、という感じで近付いているのなら、男性達はここまで怖がっていないんでしょうね。
ニッコリと何を考えているのか全くわからないような笑みを浮かべて近付いているからこそ、恐怖を感じているんでしょう。
まぁ、わざと、ですけどね。
なんて思いながら、男性達の前で立ち止まった私は、笑みはそのままで、わざとらしく頬に手を当てて首を傾げながら
「そういえば、さっきユーリにぶつかって転ばせたこと.....まだ謝罪を貰っていませんわね」
とだけ言って笑みを深くしましたわ。
すると、そんな私が不気味でしかたなかったんでしょうね。
男性達は一瞬
「ひっ!」
と悲鳴をあげたかと思ったら、すぐに私の後ろにいるユーリに向かって
「「も、申し訳ございませんでした!」」
そう言うと地面に膝をついて、深々と頭を下げましたわ。
まぁ、ここまでしっかりと謝罪をしてくれたなら、何も文句はありませんわね。
そう思ってチラッとユーリに視線を向けると、このような状況は慣れていない、ということもあって、男性たちには見えていないにも関わらず何度も何度も頷いて、オロオロとしているのが見えましたわ。
あ、あら?少しやりすぎてしまったかしら?
ユーリにこんな顔をさせるために謝罪をさせたのではなかったんだけど.......。
とりあえず、そろそろ頭を上げてもらおうと思っていると、
「おい!なぜそんな小娘に頭を下げているんだ!そんな暇があったら荷物を運べ!」
今まで自分の血を止めるのに必死だった叔父様でしたが、治まってしまったんでしょう。
男性達が手を止めて私たちに頭を下げている、という光景に顔を真っ赤にしながら叫びましたわ。
あー.....そういえばそうでしたわね。
この男性たちには作業をやめてもらわないといけないので、このまま引き下がるよう言おうかしら?
なんて思っていると、私が男性達に言うよりも先に
「うるせぇ!引っ越すから、とか言われて貴族の依頼は珍しいから引き受けたけど、金は後払いだし指示を出すときの態度も悪いしもう限界だ!」
バッと頭を上げた男性の1人がそう叫ぶと、降ろしている途中だった荷物を一気に床に降ろしましたわ。
いや.....正確には床に落とした、かもしれませんわね。
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