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304話
しおりを挟む当然ですが、叔父様が出て行くことはあっても私がこの家を出て行く、なんてあり得ません。
そもそも叔父様はなんの権限があってそのようなことを言っているんでしょうね。
なんて思いながら、得意げに顎を上げている叔父様に向かって
「今まで上手く隠していたみたいですが、それが叔父様の本性ですのね........元々尊敬も何もしていませんでしたが、改めて幻滅しましたわ」
静かにそう言うと、叔父様が想像していた以上に私が冷静なので、面白くなかったんでしょうね。
「ふんっ!勝手に言っていろ」
そう言うと、叔父様は私に背中を向けてお屋敷の中に戻ろうとしましたわ。
ですが、それとすれ違うように
「お嬢様!」
という声が聞えてきて、何事か、と驚きながらも声のした方向に視線を向けると、そこにはミリアとディア、そしてメイド長の3人が息を切らしながら、私の方に駆け寄ってきているのが見えましたわ。
メイド長は私の姿を確認すると、あからさまにホッとした表情になって
「良かった......帰ってきていたんですね」
と言って乱れた息を必死に整えています。
ミリアとディアだけではなく、メイド長までもそこそこ良い年齢なのに走ってくるなんて......相当焦っていたんでしょうね。
なんて思いながら3人の息が整い終わるのを待っていると、
「急に大量の荷物がお屋敷の中に運ばれてきて.......私たち、一体どうしたらいいのかわからなくて......」
普段は冷静なミリアが動揺しながらそう言いましたわ。
ミリアの横ではディアが同意するように何度も何度も頷いて、必死に中の状況を伝えようとしてくれています。
うーん.....この3人の様子を見ると、メイド長達が止めてもさっきの男性達が次々と荷物を運んできているんでしょうね。
おかげでお屋敷の中ではメイド達が何事か、と大騒ぎ.....というような状況かしら?
そう思いながら、3人に対して優しく微笑んで
「皆も驚いたわよね。私も帰ってきて門の前がこんなことになっているから凄く驚いたわ」
と言うと、私の笑みを見て安心したのか、動揺していた3人もなんとか冷静を取り戻したみたいですわ。
まぁ、安心させたくて微笑みましたが実際は笑えないくらいのことをされているんですけどね。
はぁ......やっぱり陛下に頼んで僻地にでも飛ばしてもらった方が良かったでしょうか?
なんて思っていると、今まで黙って様子を眺めていた叔父様でしたが、何を思ったのか
「おい!お前たちの主人は俺だ!なぜセリスティアの所に行く!?」
顔を真っ赤にして、ミリアたちにそう怒鳴りつけましたが、これには流石のミリアたちもキョトンとした顔をしていますわね。
まぁ、当然のことですわね。
だって、実際はこの家の主人でもなんでもありませんし、そもそもメイドに助けを求められるほど信頼関係を築けているか、と聞かれたら答えは、いいえ、ですもの。
当の本人はわかっていないみたいですが、この家の中で叔父様を尊敬している、という人は1人も居ないんですのよ。
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