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299話
しおりを挟むカイン様を見つめること数秒。
やっとのことで私の視線に気付いたみたいなんですが、なぜ見られているかわからない、という様子で首を傾げていますわね。
まさか、ここで急に察しが悪くなるとは思ってもいなかった私は、焦りといいますか.....初めてカイン様に対して苛立ちを感じましたが、その間にもカイン様はキョトンとした顔で私のことを見ていますわね。
う、うーん.......この状況と視線でわからないのであれば、口で言うまでわかりませんわよね。
ただ、そのようなことをしてしまうとエリザベート様や陛下の気分を害してしまう可能性がありますし......。
なんとか察してくれないか、とカイン様に視線を送り続けていると、流石のエリザベート様も気付いたんでしょう。
急にハッとしたような顔をしたかと思ったら、なぜか不機嫌そうに頬を膨らませましたわ。
ただ、そんなエリザベート様の姿があまりにも可愛らしかったので、思わず
「え!?」
と声を出してしまいましたわよ。
だって、貴族の令嬢がそのような顔をするなんて.....凄く珍しいことですし、なんだか心を許してもらった、という感じがして嬉しいですわ。
まぁ、エリザベート様の方はそんな私の思っていることなど伝わっているわけもなく、頬を膨らませたまま
「2人で仲良さそうに見つめ合って、何をしていますの?」
と聞いてきましたわね。
あー.......もしかしたら、私とカイン様が2人で仲良く目で会話をしている....なんてありもしない勘違いをしてしまったんでしょうか?
まぁ、確かに2人で見つめ合っているのを見ると怪しむのも仕方がないのかもしれませんが、当然私とカイン様はエリザベート様が疑うような関係ではありませんし、いくら必死に私が視線を送っても、その糸に気付くことすらありませんでしたわ。
ただ、素直に陛下とエリザベート様を諫めるよう、視線を送っていた、なんて言うと、2人とも悲しんでしまうでしょうし.....ヘタしたら、無礼者、と言われてしまう可能性もあります。
なので、カイン様と見つめ合っていた理由をなんといえば納得してもらえるか、と悩んだ私は、いい言葉が見つからなくて
「え、えーっと.....これは、ですわね」
と言葉を詰まらせてしまいましたわ。
よく考えて見ると、私のこの反応は逆効果ですわよね。
カイン様との関係を怪しまれて咄嗟に言い訳を考えているようにしか......って、言い訳を考えているのは合っていますけどね?
なんて思いながら、カイン様に視線を送っていた理由を考えていると、今まで首を傾げて黙っていたカイン様が急に
「俺の方もなんで見られているのか不思議に思っていたんだが.......」
そう言って不思議そうな顔をしているではありませんか。
その言葉を聞いた私は、反射的にこう言ってしまいましたわ。
「もうっ!察しが悪いですわ!エリザベート様と陛下の追及を止めて欲しい、と視線を送っていましたのよ!」
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