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298話
しおりを挟むさて、私の婚約の話と隣国での話はこれで終わり、ですわよね。
他に話すことはないですし、本当に全て話し終えた、という感じですわ。
それは陛下の方も察してくれたみたいで、机の上に置いてあったお茶を淹れ直すようメイドに指示を出した後に、ふぅ....と深く息を吐いて
「それで、領地の方は大丈夫だったか?こっちで難しい書類関係はすべて請け負ったんだが.....」
と話題を変えてきましたわね。
まぁ、隣国での話を終えたら次はどのような話題になるか、なんて大体想像はついていましたが、昨日の叔父様の件もあってドキッとしてしまいましたわ。
陛下達にはそれを気付かれないよう
「えぇ、領地のことは、大丈夫でしたわ。本当にありがとうございました」
ニッコリと微笑みながらそう言いましたが........私の言い方がまずかったですわね。
「領地のこと、は?」
陛下はニコニコと微笑んでいますが、ピクッと眉毛が動いたのがわかりましたわ。
そりゃあ、当然ですわよね。
だって、この言い方ですと領地のことは何も問題がないけど、他に問題が起こりました、と言っているようなものですし。
当然、叔父様の件は全て片付いてから陛下に報告をするつもりだったので、ここでバレてしまう訳にもいかない、と思った私は
「あ.......え、えーっと.......す、少し言い間違えましたわね」
なんとかこの状況を打破しようと、微笑んだままそう言いましたが、あまりにも不自然だったので誤魔化しきれるわけがありませんわよね。
私が必死に誤魔化そうとしているのにも関わらず、陛下は
「一体何があったんだ?」
と容赦なく質問してきましたわ。
そんな陛下に対して、私は
「いえ、本当に何もありませんでしたわよ?」
流石にこれ以上陛下に迷惑をかけるわけにはいかない、と思ってなんとか誤魔化そうとしますが、追い打ちをかける様に
「儂らには言えないことなのか?」
と言ってきた陛下の表情は、わざとらしく落ち込んでいるのがわかりますわ。
私の隣では
「私たちはセリスティア様の力になりたいんですの。教えてくださいませ」
と言ったエリザベート様の目は捨てられた子犬のような目をしていて、これはまずい、と思った私は咄嗟に視線を逸らしてしまいましたわ。
だって、2人からこんな目で見られると、言わないわけにもいかないじゃありませんか。
ですが、この件に関してはしっかりと自分でケリをつけたいですし.....。
あぁ、もちろんずっと黙っている、という訳ではありませんのよ?
ただ、全てが片付いてから陛下達には報告をしたい、と思っているだけですわ。
それなのに、陛下とエリザベート様の2人から、何とも言えない圧をかけられて.......ど、どうにか逃げ出したいところですが、不可能ですわよね。
そう思った私は、斜め前に座るカイン様に必死に視線と念を送りましたわ。
この2人をどうにかしてください、と。
もちろん、それが通じるほど親しい仲ではないので、期待は出来ませんが、察しの良いカイン様です。
なんとかわかってくださいませ。
そう願いを込めて、言葉を発することなくカイン様のことをジッと見つめましたわ。
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